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サマーやすみ事件2

 現世に降り立ったツマとニッパーは真夏の太陽が照る中、大きなドーム状の建物の前にいた。

 蝉が姦しく鳴いている。近くの木を叩いたらなん十匹もの蝉が襲ってくるのではないかというくらいにうるさい。


 「しかし、暑いっすね……」

 うだるような暑さでニッパーは溶ける寸前だった。


 「とりあえず、中に入ろうか。」

 ツマは汗を拭いつつ会場内へと足を踏み入れた。ニッパーも慌てて追いかける。

 会場内は涼しかった。おそらく冷房が入っている。


 「はあー涼しいっすね。もう出たくなくなっちゃうっすよー」

 「お、あっちだ」

 ツマはまた勝手に歩き出した。


 「あー、ちょっと待ってくれっすよ……」

 ニッパーはフラフラとしながらツマに追いつく。


 ツマはある一つのブースの前で立ち止まった。目の前には大きなスクリーンがあり、そこに詰めかけているのは女性ばかりだった。高校生、中学生、そしてニッパーが大好きだったキャリアウーマンだと思われる女性、主婦もいるかもしれない。とにかくあらゆる女性で埋め尽くされていた。一人だけ男性がいた気もするが気にしないでおこう。


 スクリーンの手前にはゲーム機が二台置かれており、スクリーンの上には『ジャパゴゲーム大会』と書かれたプレートが飾ってあった。


 「……うわあ……姉妹作のしかもアクションゲームにこんなに沢山の女性が……」

 よく見るとコミュニティのようなものもできている。


 「ジャパニーズ・ゴッティってゲームみたいっすね。イケメンに描かれた神々と禁断の恋愛ができるゲームみたいっすけど、それをアクションゲームにしてみました的な感じっぽいっすね。そこの看板に書いてあるっす」

 ニッパーが『ジャパゴの魅力!』とタイトルが書かれている説明書きを指差しながらツマに説明した。


 「ふむ。どんなものか見てみたい。まだゲーム大会はやってないの?」

 「時間的に早かったみたいっす」

 「そうか。じゃあ、一回近くのベンチにでも座ってようか」

 ツマはニッパーを連れて会場のロビーにあるベンチに座った。どうやらごった返していた理由はゲーム大会参加エントリー確認を行っていたからのようだ。

 ゲーム大会が始まるまで二神はのんびりしていた。


 五分くらい経過した時、会場内から小学校低学年くらいの少女がしくしくと泣きながら出てきた。どこか悲しげでしきりに会場内を見つめている。


 「ん?ニッパー君、あそこで泣いている女の子がいる」

 「あ、ほんとっすね……。迷子かな?」

 二神が様子を見ようとした刹那、少女は何を思ったか突然ロビーを走り抜けて外へと飛び出して行ってしまった。

 「……なんだ?どうしたんだ?」

 「気になるっすね」

 ツマとニッパーが戸惑っていると人の山から慌てて女性が飛び出してきた。


 「あかねっ!」


 女性はそう叫ぶと少女を追いかけるように外に向かって走っていった。顔つきから必死な感じだった。


 「……。あの人……母親っすか?迷子じゃなかったって事っすか」

 「事件だ。ニッパー君!」

 ツマはニッパーを鋭く見据えると元気よく立ち上がった。


 「と、突然に……また始まったっすね……」

 ニッパーもやれやれと重たい腰を上げた。

 


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