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やたいフード事件2

 ツマとニッパーはさっそく花火大会の会場になる海辺へと来ていた。

 辺りはうす暗くなっており、もうそろそろ夜を迎えそうな感じだった。七月だというのに蒸し暑く、おまけに田舎であるのにどこから来たのか人が沢山いた。


 周りでは屋台が並び、かなりにぎわっているが海側とは反対側の山側は不気味なくらい静かだった。

 その山の麓には神社があり、とてつもなく当たるおみくじを引かせる運命神がいるらしい。


 「賑わってるね。そういえばニッパー君、七夕に関係する彦星の天若彦神あめのわかひこのかみの話を知っているかね?」

 ツマはどこかイギリス辺りにいそうな探偵のモノマネをしながらニッパーに尋ねた。


 「ああ、プレイボーイな神さんってやつっすね?イケメンだったとか。」

 「そうだったっけ?」

 ツマは自分が聞いておいて実はよく知らなかった。


 「まあ、いいっす。ネットの情報によると今年からちらし寿司の屋台が出るらしいっすよ。どこっすかねー……。ちょっと拝借して……って……いででで。」

 ニッパーの邪な考えにツマはニッパーの頬をちょっとつねった。


 「ニッパー君。私達は人間に見えないがそれは盗むのと同じだ。」

 「わ、わかってるっすよ……。」

 ツマに怒られニッパーはしゅんと肩を落とした。


 とりあえず、屋台を見て回ろうとニッパーが突然言い出したのでツマも一緒について歩いた。やきそば、りんご飴、わたあめ、チョコバナナ、かき氷、ウナギのかば焼き……色々な屋台がある中でちらし寿司販売をやっている屋台を見つけた。


 「お、ここっすね。」

 「……でもなんだか様子がおかしい。」

 ツマが目を細めたのでニッパーも様子を窺った。


 確かに様子がおかしかった。男の店員さんがしきりに沢山置いてある大きな保冷バックを開けている。そのたびに何回も何回も「嘘だ。」と叫んでいた。


 「どうしたんっすかね……。」

 ニッパーが興味本位に店員さんが眺めている保冷バックをそっと盗み見た。


 「どうした?ニッパー君。」

 「ツマっちゃん、保冷バックの中身が何もないっす!」

 「なんだって!」

 ツマもニッパーにならい確認してみる。


 確かに何もない。

 ツマ達が確認できたのは沢山ある中で二つのバックだけだったが中身は空っぽだった。


 「空っぽ……あの店員さんは別の所で作ったちらし寿司をパックに入れて冷蔵して販売していたようだ……。先程までちょこちょことちらし寿司のパックを持って歩いている人間を見た。こんなにたくさんある保冷バックの中身がすぐになくなるとは考えられない。ちらし寿司はそんなに長時間置いておけないだろうからこの店は夜からの出店にしたのだと予測する。するとまだ一時間も経っていない。これはおかしい。事件だ!」


 ツマは突然に目を光らせると勢いよくニッパーを仰いだ。


 「うわぁっ!びっくりした……。いきなり振り向かないでくれっすよ……。まあ、確かに奇妙っすよね……。」

 ニッパーが驚きつつ目線を外すと屋台の先で沢山の食べ物を抱えた小さい女の子が鼻歌を歌いながら歩いているのが見えた。


 「つ、ツマっちゃん……。」

 ニッパーは静かにツマを呼んだ。


 「なに?」

 ツマがニッパーの見ている方向に視線を移すと目を見開いて驚いた。


 「あの子……。」

 「この近くの小さい神社にいる稲荷神っすね。」


 沢山の食べ物を持ってスキップしている赤い着物と赤い巾着みたいな帽子をかぶった幼女は腕に乗せるようにちらし寿司のパックを三つも持っていた。手にはわたあめややきそば、りんご飴、そしてチョコバナナが握られている。ついでにいうと頭にはかき氷が乗っていた。


 「あいつが犯神か!人間に見えないのにあんなに食べ物持って!絶対に買ってない。盗んだんだ!ニッパー君、今日は捕物だ!」


 「おうよ!」

 なんだか突然、時代小説の捕り物のようになってしまったツマとニッパーはニッパーが手から出現させた霊的十手を装備し、同心として稲荷神に襲い掛かった。


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