チェリーおにぎり事件2
ツマとニッパーはさっそく花見現場へとやってきた。
「さくやんによるとこの河川敷の桜並木での事件との事で……。近くにある神社の神のせいに花見客はしていたと。ここにいる神は『誤解だあ!』と半泣き状態とか。」
ツマの説明にニッパーは首を傾げた。
「んー……。いいんじゃないっすか?人間さんは神に持って行かれたと思ってお供え物だと思えばとか、ご利益がありそうとか言っているんじゃないっすか?」
ニッパーは辺りに舞う桜の花びらを眺めながら続けた。
「それではだめだ。容疑者の容疑を晴らしてあげないと。正義のために。」
「やりたいだけっすよね……。」
ニッパーのつぶやきを無視したツマはさっそく事件の起こった場所へ歩き始めた。のどかな日和と満開の桜が気分を上げる。
ツマは違う方向に気分が上がっていた。
しばらく歩いて目的の現場までやってきた。今は事件当時にいた花見客はいない。別の花見客だと思われる一団が静かに桜を観賞しながらお酒を飲んでいた。
年齢層は高い。
「おお……なんか風流っすね~。俳句大会なんて開いているっすよ。」
年配の方々はそれぞれ桜の俳句を詠み合っている所だった。
「ふーん。」
ツマは興味なさそうに俳句を聞いていた。
「あ、それよりもこの辺は屋台がないっすね?だいたい花見場所には屋台が並ぶものっすけど。」
「それは簡単だよ。ニッパー君。今日は平日だ。子供がいないから屋台がないんだ。そういえば……さくやんが言うには持って行かれたのは屋台で買ったおにぎり……とか。」
ニッパーに軽く答えたツマはしばらく考えた後、再び口を開いた。
「あ、そういう事か。」
「どういうことっすか?」
ニッパーは首を傾げ、先を促した。
「つまり、屋台があった日の犯行という事だから休日の犯行だ。」
「あ、まあ……そうっすね。じゃあ、いたずらっこの子供が人のおにぎりをこっそり食べたとかそういう内容になりそうっすね。」
ニッパーは大きく伸びをしながら川沿いに咲く桜に目を輝かせていた。事件にはあまり興味はなさそうだ。
「いや……最近の子供は意外にしっかりしている。子供の犯行ではないかもしれない。」
「と、すると?」
「まあ、聞いてみよう。」
きょとんとしているニッパーを横目で見ながらツマは近くにある桜の木に手を置いた。




