カフェ事件1
今回は推理系で攻めます笑。
あんまり推理になっていませんが、頑張ります。
古めかしい洋館の中は図書館だった。本が沢山置いてあるこの図書館は人間用ではない。
ここは神々が利用する図書館だ。ちなみに世界の神々は他にある神々の図書館を使うようでここは日本の神々しか利用者はいない。
その怪しい図書館の椅子に少女が座っていた。少女は表情なく辺りを見回して一つ頷いた。
「ニッパー……暇。」
緑色のウェーブのかかった髪を揺らしながら少女は静かにつぶやく。
「暇っすよねー。」
少女の隣に座っているのは同じ年齢くらいの少女。ニッパーと呼ばれた少女は縦棒を引っ張ったような変わった目をしており、長く濃い茶髪に赤い魔女帽子、下は着物を着ているだいぶん変な格好をした少女であった。
「ミステリー小説もう飽きた。そろそろ自分で解決したい。」
緑色の髪の少女はどこかつまらなそうな顔で持っていた本を目の前の机に置いた。机にはかなりの量の本が積み重なっており、よく見るとどれも推理小説であった。
「ツマっちゃん、自分で解決したいなら、ほらあれっすよ!自分で事件を起こせば……。」
こげ茶髪の奇妙な少女ニッパーはいたずらっぽく笑いながら緑の少女、ツマツヒメ神ツマを仰いだ。
「……やだ。私は解決したい。名探偵になりたい。」
ツマは表情なく静かにつぶやいた。彼女はあまり表情が顔に出ないタイプのようだ。不機嫌そうに見えるが今は精いっぱいのアツい顔をしているつもりである。
「じゃあ、この『武器の神で炎を操れる』あたし、天之娘影神ニッパーがドカーンと暴れて……。」
「ニッパー、それは犯神があなただってわかる……。誰でもわかる。……ニッパーは私の助手。」
ツマはニッパーの言葉を遮り、少しだけ語気を強めて声を発した。
大して変わっていなかったが。
「助手って……ワトソンくんみたいな……?おう!おもしろそうっすね!じゃあ、事件探しに行くっす!いやっはっ!」
「そうこないと……。」
ニッパーは突然テンションが上がると勢いよく立ち上がった。ツマも情熱的な目で立ち上がったが傍から見ると渋々立ち上がったように見えた。表情をうまく作れないというのは案外誤解を生むのかもしれない。
何やら騒いでいるツマとニッパーを影でこっそり見ている男がいた。
彼は別に変態なのではなく、ただ単純に彼女達を心配しているだけだった。
「……はあ。また何かやろうとしているわね。あの子達。」
彼は見た目は男でも中身は女であった。紫色の着物に星形を模したような帽子を被っており、きれいな青い髪が腰辺りまで伸びている。顔は整った顔立ちをしていてパッと見てかなりのイケメンだった。
彼はただの中身が女性な神なのではなく、この神々の図書館を管理しつつ、館長をやっている神で名を天記神と言った。
「……行くぞ。ニッパーくん。」
「はいっす!名探偵!」
ツマとニッパーは謎のアツい握手を交わし、情熱のこもった目でこの図書館の館長、天記神を見つめる。
「うっ……な、なにかしら~?わたくしはこの図書館にある本の事しか……。」
「何か事件を起こして。私が解決するから。」
戸惑っている天記神をまっすぐ見据え、ツマがビシッと指を差した。
……ああ……推理ものばかり読んでいたから嫌な予感はしたけど……始まったか。
天記神は顔を引きつらせながら頭を抱えた。
ツマは非常に何かに感化されやすい神だった。だいたいいつも一緒に遊んでいるらしいニッパーはツマがおもしろいからと言って悪乗りをする。
そして彼女らのたまり場はいつもなぜかここ、図書館なのであった。
「事件って……わたくしは本の事しか……。」
「なんでもいいっすよ!事件っぽい事でもなんでもいいっすよ!」
ニッパーの子供っぽい笑みに天記神はさらに頭を悩ませ、しばらく考えていたが最近不思議だったことを思いだした。
「ああ、そういえば現世のダージリンコーヒーっていうカフェで人間の男女の揉め事があったってここを利用する神々から聞きましたよ。」
天記神がそう言った刹那、ツマとニッパーが同時に立ち上がり叫んだ。
「それだ!」
そう叫ぶなり二神は天記神を置いて疾風の如く走り去っていった。
「……大丈夫かしら?余計な事しなきゃいいけど。」
天記神は茫然と嵐が過ぎ去った図書館のドアをただ見つめていた。




