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少女激昂する

‐前回のあらすじ‐

過去の暴力事件を調べ始めた和葉だが肝心の朝輝からは真相を話して貰えなかった。

彼女の疑問は深まるばかりである。


 そんなある日私が友人達と遊んだ帰り道の事だった。

「あー楽しかった。偶にはこうしてリフレッシュしなくちゃねっ!」

 その日は同じゼミの友人でちょっとしたショッピングに行っていた。

 私自身は何も買わなかったがそれでも友人同士で休日を過ごすというのは良いものである。

「さあて、明日からもがんばるぞー。」

 気分晴れやかに帰り道を歩いていた時、ドガッ!!と何かがぶつかる様な鈍い音が聞こえた。

「えっ!?」

 思わず声を上げる。それは周りを歩いていた人も同じのようで・・

「な、何の音?」

「殴られた音じゃないか?」

 等といった声が聞こえる。

 (殴られた音・・・?)

 私が生まれてこの方、本気で殴られたことも無ければ殴ったこともない人間なので、

 殴られた時どんな音がするのか分からないのだが周りの話を聞く限りでは人が人を殴っている様だ。

 (怖い怖い。早く帰ろっと。)

 私は急ぎ足でその場を離れた。



「って事があったのよ。」

 時と場面は移り私はいつも通り名目上は家庭教師のアルバイトをしていた。

「へぇー街中でねぇ。」

 本日のお話は先日の暴力事件?の話である。

 情報量は少ないが思いの外食いついてきた。

「しかし、意外に見れないものなんだね。」

「えっ?何が?」

「犯人と言うか当事者の顔だよ。」

「そうね。まぁ周りの人も驚いていたけど見に行こうとはしなかったし。何より皆巻き込まれたく無いと思うんじゃない。」

 実際それが普通だとは思う。

 下手に覗きに行って巻き込まれ殴られでもしたらやってられない。

「それが普通だよね。しかしそう考えたら殴られてる人はどうなったのかな?」

 と少し意地の悪い顔になって朝輝君はそう言った

「多分加害者が気が済むまで殴られただろうね。なんせ誰も助けに来てくれないんだから。」

 人が向き合わないようにしていた痛い点を容赦なく突いてくる。

「それは確かにそうだけど・・・」

 そしてそれに何も言い返せれない自分を凄く惨めに思う。

「ああ、ゴメンゴメン。別にお姉さんを攻めてる訳じゃ無いんだよ。僕だってそうするし恐らく多くの人はそうするだろうね。誰も助けに行かなかったのが良い証拠だ。」

「何が言いたいの?」

「お姉さんが助けに行かなかった事を少し後悔してそうだったから教えといたんだよ。人を助けに行って自らが損をするのはバカのする事だってね。」

 そう言って彼は私を慰めたのだろう。彼的には。

「う、うん?」

 まぁ私的には何を言ってるんだろう状態だったが。

「そう言う事だから元気出してよ、ね?」

 この一言に不覚にもやられてしまったのでその前のやり取りなどどうでもよくなってしまった。




「でも、よく考えたら私を追い詰めたのもアイツじゃん。」

 その次の日は珍しく講座も無くバイトも無く遊ぶ約束も無い完全にフリーの一日だった。

 こういう時私は近況の報告を両親にすることにしていた。

 そして現在の大学生活、アルバイトなど一通り説明した結果母から出た言葉が

「アンタ、未成年に手を出すんじゃないよ。」

 だったことに対して怒りを抱いてないかと言えば嘘になる、と言うより怒りしかない。

「そりゃね?確かに少しときめいたけども・・・」

 その事実を認めたくなくてベッドの上で頭をガンガン振っている。

 そしてその後言い訳をし思い出しベッドの上で・・・

「アホじゃないだろうか私。」

 かれこれこのループを一時間はしている。

「はぁー・・・あの顔であれはズルいわ・・・」

 ただでさえドキッとさせるような顔をしているのだ・・・

「それで、あのギャップは・・・もう・・・」

  年下相手にそれもたかだか中学生だ。

「何やってんだろうな私。」

 私はそう自分を落ち着かせ二度寝を決め込んだのだった。



「では、今日もよろしくお願いします。」

 この挨拶は、いつもの決まりだ。

 一言挨拶するのは常識だと思うし、何より依頼主と顔を会わせて親交を深めるのは悪くない。

「そろそろこの仕事にも慣れてきましたか?」

「ええ、おかげさまで何とかやっていけそうです。」

 等と他愛ない談笑をしてそろそろ部屋に向かおうかと言う時、

「それで、あの子は何か粗相はしてませんかね?」

 と珍しく婦人が心配そうに聞いてきた。

「ええ、聡明で良い子だと思います。少なくとも私のアルバイト中では粗相等は無いですね。」

 本当の事を言ったのだが何か腑に落ちないのは奴の性格のせいだろう。

「それは、良かった。それでは本日もよろしくお願いしますね。」

 そう言うと、婦人は奥の部屋へと消えていった。

「さあて、頑張りますか。」

 ガラッといつもの様に戸を開けるとそこにはこれまたいつもの様に私に背を向け座ってる朝輝君が居た。

「やあ、こんばんは。」

 そしていつも通りクルリと椅子を回転させてこちらを向く。

「こんばんは、それじゃあ始めましょうか。」

 そして、アルバイトがスタートする。

「それで、今日はどんなお話を聞かせてくれるんだい?」

 さあ、ここからがいつも通りではない。

 (ネタが無いんだよねえ・・・)

 そう、何とかこの一ヶ月ほどは話題を持ってこれていたのだがあくまでも普通の大学生である私にそうそう面白い話のネタなど起こり得ない。

 (芸能人志望じゃないから仕方ないと言えばそうなんだけど・・・)

 こんな内容でも一応報酬を貰っているわけだ、なので出来ませんでは通らない。

 (どうしよう・・・)

 そう悩んでいると

「もしかして何も無いの?」

 と、私が脳内会議を開催していると朝輝君がそう言ってきた。

「いえ、そうじゃ無い事も無いと言いますか・・・」

 とっさに上手に誤魔化せないのが私のトークスキルの稚拙さを証明している。

「あーやっぱりね。そろそろ限界だと思っていたんだよ。」

 分かっていたよと言いたげなリアクションと顔でそう私に言った。

「ここ最近はお姉さんの話ってより僕に話をさせてたしね。ま、一ヶ月なら良く頑張った方じゃない?」

 とんでもない上から目線なのだが彼の方が上なので仕方ない。

「えっと、私クビかな?」

 こうなってくると気になるのは今後の処置だ。私はまず一番気になっていることを聞いてみた。

「さあ?僕としては別にどうでも良いんだけどね。」

 どうやら、その辺りに関しては彼は本当にどうでも良いようだ。

「それにね?クビについてならお姉さんもっと前から母さんに検討されてたよ。」

 唐突にとんでもない爆弾が投げ込まれた。

「はぁっ!?」

 それ故、思わず大きな声が出てしまう。

「ビックリしたなあもう。」

「それはこっちのセリフよっ!何でそんな事になってんの?」

 相手のビックリなぞ知った事か。

 私は何故クビが検討されたのかそれが気になった。

「なんかね、あの娘育ちが悪そうだから僕の教育上よろしく無さそうだわって言ってたよ。父さんは好きにしろスタイルだから何も言ってなかったけど。」

 とんでもない暴言である。

 この朝輝からも暴言は言われるのだがそれはあくまでも私個人レベルでしかも冗談めいた軽い内容である。

 しかし、婦人いやあのババアはあろう事か私の家族を侮辱したのである。

「まあまあ、そう怒らないで?」

「う、うん・・・」

 一応勤務中でもあるし他人の家なので叫ぶのは止めておいた。

 まあストップが無ければ叫んでいただろうが。

「ありがとう、抑えてくれて。」

 それに、教え子にこんな事言われては収めるしかなかった。

「うん、ごめんね取り乱して。」

「いや、僕も驚いたよ。お姉さんでも怒ることあるんだね。」

 少々バカにされてる気もするが確かにここまで怒ったのは久しぶりだ。

「両親は何とか奨学金を使わなくてもいいように頑張ってくれたからね。そんな二人を私は尊敬しているからそれをバカにされるのは本当に許せないのよ。」

 まだ、怒りが醒めていない私はあのオバサンに対する暴言を言おうとしたがそれを朝輝君がこう制した。

「お姉さんが母さんに怒ってるのは分かる。でもそんな母さんでも僕は尊敬しているんだ。だからここで母さんを中傷するのは遠慮してくれると嬉しい。」

「うっ、そうね。ごめんなさい。」

 意外だった、この少年に他人を尊敬するという感情が有るということに私は驚きを隠しきれなかった。

「全く、また失礼な事を考えているね?僕にだって尊敬する人の一人や二人いるさ。」

「あ、あはは。」

 全く心が読まれているのではないかと思うほどこの少年は察しが良い。

 しかし、こうなってくると一体何を尊敬しているのかが気になる。

「母さんはね、僕の言う事を否定しないんだ。だから尊敬してるのさ。」

 本当に察しが良い。少々ゾクッとするほどである。

「と言うと?」

 言う事を聞いてくれるではなく否定しないとはどういう事なのだろうか?

「例えばね?自分の子供が幽霊を見たっていったらどうする?」

 うーむ・・・子供を持ったことが無いから分からない故何とも言えないが恐らく信じるだろう。

 私自身オカルト系の話は一応信じているし。

「信じると思うわ。」

「まあ、そうだろうね。でもそれが十回二十回と続けばどう?」

 ・・・なるほど彼の言いたいことが分かった。

「普通なら信じない上に途中からは頭ごなしに否定するでしょうね。」

 恐らく彼が望んでいるであろう答えを返してみる。

「それが普通なんだろうね。でも母さんは違ったんだ。全部信じてくれた。そして僕を否定しなかった。僕自身ですら自らを否定していたというのに。」

 この真剣な感じ一体何が起きたというのだろう・・・

「一体・・・何があったの?」 

 迷ったが好奇心には勝てず恐る恐る聞いてみる事にした。

「ああ、お姉さんが気にしていた暴力事件の事だよ。」

 ここでそれが出てくるのか、まあ多少そんな予感はしていたが。

「でも、あの事件と自分が信じられなくなるのと何が関係してるの?」

 そう、問題はそこである。

 一体件の暴力事件の真相とは何なのだろうか?

「・・・お姉さんになら良いか。」

 どうやら話してくれるようだ。

「事の発端はね、上級生が当時中学二年生だった僕を呼びつけた事から始まったんだよね。」




最後まで読んで頂きありがとうございました。

感想、レビュー等お待ちしております。

また次回も読んで頂けることを願いながら後書きとさせて頂きます。

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