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少女探偵ごっこをする

‐前回のあらすじ‐

アルバイトを始め朝輝とも仲良くなってきた和葉。

そんな彼女は何故朝輝が学校へ行かないのか理由を聞く。

その理由はなんと朝輝が暴力事件を起こして特別謹慎を受けてるという理由だったのだ。

この話が本当の事なのかどうか調べる為和葉は地域の人間に聞き込みをし始めたのだった。

 調べだしてみると思いの外簡単にそれらしき情報を得る事が出来た。

やはりこういう時頼るべきは噂好きのおばさま方だ。

自炊生活の私はこの一ヶ月程ですっかり商店街おばさまと仲良くなっていた。

そして、そこから得た情報を纏めると

「どうやら本当にとんでもない事件起こしてるみたいねあの子。」

 上級生を含む十五名に重軽傷を負わせ尚且つ体育館の壁を一部破壊。

「これが去年の丁度今頃に起こした事・・・」

 正直何人もの人から同じような事を聞いたのだがそれでもまだ納得と言うか信じることが出来なかった。

「だって、あの体型よ?どう考えたって無理でしょっ!?」

 と部屋で大きな声で叫ぶ程には私の頭はこんがらがっていた。

「こうなったら、直接よちょ・く・せ・つ!!」

 半ば無理やり結論と言うか解決策を編み出し私は眠りについた。



 そして、その日はやってきた。

「で、今日はどんな話を聞かしてくれるのかな?」

 いつもの様に私の話を、これまたいつもの様に大きな態度で聞こうとする朝輝君。

「本当、家庭教師なんて大嘘よねこのアルバイト。」

 とため息をつくフリをしながら私は言葉を返す。

「そんなの今更じゃない?お姉さんは僕の話し相手として雇われたんだから。」

 そう、本当に今更なのだが私はこの一ヶ月勉強など一秒たりとも教えていない。

ひたすらこの朝輝君と話しているだけなのだ。

「お母様が僕がコミュニケーション能力を欠かしてしまうと恐れた結果がこのアルバイトさ。その点でいえばお姉さんの事は本当にドンマイと思ってるよ。」

 とまぁ口ではそんな事を言っているが内心は私がこのバイトを少しも辞めたいと思っていない。

それどころか良いバイトだなと思ってる事も見抜いてるのだろう。

それは置いといてここからが本番に移ろうではないか。

「じゃあ一つ朝輝君に質問が有るのだけど良いかしら?」

 と遠回りに質問しても意味のないというか見透かされてしまう事が分かり切っている私は単刀直入に聞いてみる事にした。

「珍しい会話の切り出し方だね。それで?一体僕に何の質問だい?」

 思った通り少し珍しいそうにそして興味を持って言葉を返してきた。

「一年前この近所の中学校で暴力事件があったのは知ってるかしら?」

  出来るだけ動揺が悟られないよう声を抑えて聞いてみる。

「ん?」

 少し眉が吊り上がる。

それに少し怯える私。

我ながら気弱だと思うが仕方ない。

この子が稀に出す怖いオーラは本当に私を怯えさせる。

 (ああ・・・怖いよぉ・・・)

「へぇ、前回から今までの間にそんな事調べてたんだ。それで?それが僕が知ってるって言ったらどうするんだい?」

 余裕の笑みでそう返す。

怖い顔なのだろうが元々の綺麗な顔が影響してさほど怖くないどころか寧ろカッコいいとすら思えてしまう。

「いえ、どうもしないわ。ただこの事件を知ってるって聞きたかっただけ。」

 と、私は数秒前の決意を捨てる決意をし話を切ろうとした・・・だが、

「全く、中途半端に止めるなら初めから直球で聞けばいいのに。」

 意外にも朝輝君がこの話題を続けだした。

と言うか私としては割と直球勝負に出たつもりだったのだが彼には回りくどく聞こえたようだ。

「お姉さんのそういうところがダメなんだよ。」

 やれやれとポーズを決めながら彼はそう言う。

「なっ!?」

「まぁそれは置いといて、その事件の話題だけどねまさかお姉さんが持ってくるとは思ってなかったよ。それを僕が起こしたって考えに至るほど行動力を持ってるって思ってなかった。そこは謝っておくよごめん。」

「う、うん?」

 何だろう・・・結構勢いよく喋るから勢いにのまれた感じになったがもしかして今謝られたのか?

この人見下し毒舌ガキンチョが?

「何か失礼な事を考えてる気がするけどまぁいいや。それで事件の話だけどお姉さんの考え通りそれは僕の起こした事件だよ。」

 さらっと認められて私の思考回路が追い付かない。

「えっ!?認めちゃうの?」

 なのでこんなマヌケな言葉しか返せないのである。

「何だよその聞き返しは・・・」

 よってこの様に呆れられるのである。

改めて言うが私は大学生で彼は中学生である。

この確認をすればするほど情けなくなるのだが、もう既に慣れてしまってるのでどうでもよくなっている。

「取り敢えずその事件は僕が起こしたしそのせいで月に一回しか学校に行けないのさ。どう?この答えで満足したかい?」

「いえいえ、いくら私がバカでもそんなのでは満足しませんよ。何故それを起こしてしまったのかそれが聞きたいのです。」

 この朝輝という少年から話を聞き出したければバカになるべし。

それが私の一ヶ月で学んだ教訓だこうしてバカを見せればこの少年は・・・

「いや、その話は遠慮しとくよ。」

 話して・・・あれ?

「そう、なの・・・」

 言ってくれなかった?これは珍しい。

どうやら本当に話したくない内容だそうだ。

これは悪いことをしてしまったという罪悪感が私を襲う。

「ご、ごめんね。辛い事聞いちゃって。」

 だから私は誤ったのだが・・・

「んー?辛い?何の事だい?」

 彼は何も辛そうではなかった。

「ああ、僕がその話をするのが辛くて話さないと思って謝ったの?」

「う、うん。傷つけちゃったかなと思って。」

 と、私が申し訳なさそうに言った途端

「あっはっはっは!!」 

 と、とんでもない高らかな笑い声が朝輝君から聞こえた。

「なっなによ!?」

 明らかにバカにした笑い声に思わず喧嘩腰の応答になる。

「いやぁゴメン。まだお姉さんが僕に対してそんな事で傷つく人間だと思っていたのが面白くてさ。」

 全く悪びれる様子無く言葉だけの謝罪をする朝輝君。

「べ、別に良いですよ。それじゃ何で話したくないの?」

 こうなってくると何故彼がこの話をしたくないのかが余計に解らなくなってくる。

彼の性格的にこの手の話題を自慢することはあっても隠すことは考えにくいからだ。

「そうだね・・・理由とするなら”誰も信じてくれない”からだよ。」

「えっ!?」

 そりゃ確かに彼の体格からしてこの話は信じがたいものがあるが・・・

普段の彼、龍堂朝輝ならば私の信じれないポイントを一つ一つ丁寧に、丁寧過ぎるほどに粉々に潰して話をするはずだ。

「まぁ、確かに君の体格を見るとにわかには信じがたいけど・・・」

 なので私は自ら餌を仕掛け話を引き出そうとしてみた。

「体格の事じゃないさ。そこは対して大きな問題じゃない。」

 するとあっさり切り捨てられた。

「えっ?体格の事じゃないの?」

 驚いた、てっきり体格面の話だとばかり思っていた私はこれ以上何処に疑われる要素が有るのか解らなくなっていた。

「えっ!?じゃあ一体何処に信じてもらえない部分が有るの?」

 それ故この様な言葉しか返せなかった。

「本当に失礼だよね。もっと思いつくでしょ、性格とか色々。」

 と朝輝君は不満そうだが私からすれば何故性格面で自分は喧嘩なんか出来ない奴と思われていると思っているのか謎である。

「いやいや、君は笑顔で人を蹴り飛ばしそうな性格してるよ。」

 そう言うと彼は不服そうに

「そんな事はしないさ。僕が手を下している時点でその争いにおける僕は負けてるんだ。僕の争いとは僕が手を汚さずに勝つ事なんだよ。」

 等と怖い事を言っているが彼ならばやりかねないので何とも否定の言葉が言えない。

それは置いといて私は聞く。

「で、結局何が理由なの?」

「さあ、なんだろうね。」

 とまぁこんな感じで問答を繰り返した結果、私の勤務終了時間となった。

私としては気になるから真相を聞くまで帰りたくなかったのが本音だが、幾ら仲良くなろうとも雇われている者と雇っている者である。

こんな事でクビにはなりたく無かったので大人しく帰る事にした。

「本日もお疲れ様。」

 いつも通り奥様の笑顔に見送られて帰路に就く。

「気になるわ・・・とても気になる。」

 頭から離れないのは勿論”信じてもらえない理由”とやらだ。

さっきは冗談っぽく流したが性格面において恐らく彼の凶悪性を知らないの両親ぐらいだろう。

学校ならば隠している意味も無いからだ。

それにそもそも私に話すという点において性格面での凶悪性はばれているのだから話す話さない以前の問題だ。

「じゃあ、何で話さないのかしら・・・?」

 こうなってくるともうオカルト的な内容しか考えが無くなってくる辺り自らの発想力がいかに低いか思い知らされる。

「超能力使いってわけでも無いでしょうし・・・」

 あの野郎なら真顔で超能力持ってるよ、とか言ってきそうで怖いが流石に無いだろう。

「あー気になる!気になるっ!!」

 こんな感じでブツブツ言いながら私は部屋へと帰ったのだった。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

感想、レビュー等お待ちしております。

また次回も読んで頂けることを願いながら後書きとさせて頂きます。

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