九話
そして試験当日。
その試験直前の早朝、オウマは正解率八割を初めて越えた。妹自作の予想入試問題であったが、合格圏内にギリギリ滑り込んだ。ユウヤは教えた副次効果か、何度やっても満点を取るように仕上がっていた。
試験会場は、在校中学校の会議室だった。そこでインターネット回線を利用したオンライン通信で、入学考査は行われた。
紙資源節約のため、問題は表示装置に映し出され、回答は電子筆記装置で記述が求められた。
試験科目は国数英社理の五教科で一科目五十分。国語、数学、英語が午前。昼食を挟んで午後より社会、理科が実施された。
第壱学園の入学テストを受けたのは、兄妹の二人だけだった。ここ北方から首都は遠いため、入学希望の前例も皆無だった。当然ユウヤが受験するとの噂が広まるや否や、進路変更希望者は後を立たなかったが、入学願書は既に締め切られていたので、その希望は叶わなかった。
試験の合否は、即日の夕方に届けられた。
結果は合格。その電子合否連絡を受け取るや否や、ユウヤはオウマに折り重なるように、眠りに落ちた。
妹は、ここ一週間程殆ど(ほとん)ど寝ていなかった。合格に辿り着くための強行軍を、ヤングパワーで押し切っていたのだ。先週時点でオウマの正解率は六割五分。足らずを引き上げるため、寝食より勉強を優先した。顔を洗う暇も、歯を磨く時間も惜しんだ。風呂に入った記憶も無かった。
兄は試験が終わって自宅に戻るや否や、リビングの床に崩れていた。玄関、玄関から廊下、廊下から居間へと辿り着くので最後の力を使い果たし、泥のように眠っていた。ここ一週間ほど一睡もしていなかったからだ。
妹は自分が掛けてやった兄への毛布に、一緒に沈み込んだ。最後の力を振り絞り、兄に頬擦りするように、くっ付いて幸せそうに眠りに就いた。
三日後漸く兄妹は、目を覚ました。
その一週間後、三姉妹の計らいで盛大な送別会が行われた。二百人を越える太陽の会のメンバー一人一人に、ユウヤは感謝を込めて、頬擦り有りの特別抱擁を行った。会場の地面が、蕩け落ちた二百三十一名で埋め尽くされた。
その横でオウマはアイドルとの新婚生活in首都を、悪友に熱心に語っていた。




