表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オウマ  作者: 夏目義弘
3/10

第三話

 車で屋敷に突っ込む。それがオウマの選択だった。

 騒ぎを大きくし、とにかく衆目を集める。ド派手な事故で有れば有るほど、消防、警察が多く出動して来る。野次馬も同様だ。

 考えたのは、そこまでだった。そこまでで十分だ。時間は無いし、方法も少ない。後先あとさきを考えられるだけの余裕は無い。妹が893に拉致監禁されているのだ。正気では何も出来ない。非日常を突破するには、狂気が必要だ。

 幸運なことに、家の車は、機動スポーツ用多目的車であるSUVスポーツ・ユーティリティ・ビーグルだ。車高も高く、FR(フロントエンジン・リアドライブ方式)なので穂先ボンネットも長い。衝撃吸収柵カンガルバーが付いていないので、荒野アウトドア用多目的車であるRVレクリエーショナル・ビーグルほどではないが、それでも椅子かご(セダン)や室内高長大ミニバンよりは、特攻向きだ。


 突撃してくる不審な車に、正門の脇に立っていた門番が気付く。一人が懐から何かを取り出そうとするが、もう一人が制する。台詞と寒さに、白い息が漏れている。

 広域暴力団指定の、噂は本当だったようだ。目撃されたら、銃刀法違反で捕まるのは本人だけだが、使用者責任が組長に、重くし掛かるの。近隣住民から賠償請求訴訟でも起こされたら、大事おおごとになる。その危険性を回避したかったようだ。

 その躊躇の分、反応が遅れる。中に何か連絡を入れるのを、

 パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

と、警音器クラクションを鳴らし続け、けたたましい音量で妨害する。アクセルはずっとベタ踏みだ。自動変速オートマチックのギアが、最高速の六速に変速する。速度計は目盛り最大メーター・マックスの百八十キロメートルを振り切っている。

 ピンカン、ピンカン、ピンカン。

 警告音が鳴り響く。正門まで後二秒。


 門番一人が急いで飛び退く。残った一人、先ほど懐から何かを取り出そうとした一人が、今度こそ拳銃チャカを取り出す。腕を伸ばし肩越しに狙いを定め、銃口を向け発砲する。

 撃鉄が雷管を叩く。薬莢の火薬が発火、爆発。衝撃に薬莢内部から弾頭が押し出される。弾丸が銃身内に刻まれた回転印ライフル・マークで横回転。速度を増す。鉛玉が照門リア・サイトで正確に合わせられた照準に向かい、音速弱で飛来していく。

 特攻車の前方防護硝子フロントガラスの窓が、ひび割れる。射撃はオウマの眉間の位置を正確捉えてはいたが、貫通には至らなかった。

 口径八ミリ、弾量七グラムの弾丸は、時速二百キロメートルで突撃してくる対象を目的とはしていない。その質量エネルギーと風圧に威力を削られ、貫き通せなかったのだ。その威力は、ガラスにヒビを入れただけに留まる。

 だが、効果は絶大だった。

 オウマの視界は奪われた。フロントガラスは安全上、粉々に砕ける設計となっている。事故時に乗員に突き刺さらないようにするためだ。

 そのため一点の衝撃でも、全体的にヒビ割れる。蜘蛛の巣状に亀裂が走り、その白い線が視界を塞ぐ。

 しかし、オウマは怯まない。もとより妨害は想定済みだ。脳内に正門までのイメージを焼き付かせてある。目で見えなくても、脳内残像イメージを辿る。連続攻撃コンビネーションにおいては、目標物を目で追っているのも時間喪失ロスになる。そのために使われる目切り(アイ・カッター)、脳内再生イメージ・プレイヤーの武技を使う。。

 オウマはイメージを再生し、ハンドルを微調整する。視界は真っ白でも問題ない。ヒビなのか雪なのか分からないが、車は真っ直ぐに正門へと向かっている。


 狙撃手が飛び退く。車が登り坂の頂上で跳躍バウンドする。宙に浮かんだ三トンもの巨体が、木造の正門に体当たりする。

 寸前、オウマはさらに身体を座席シートに押しつけ、衝突の瞬間にブレーキを踏み込んだ。全身を固め、特に鞭打ちで動けなくならないように、顎を引いて肩をすくめ、首回りを固める。バンパーが門扉に触れる。ハンドルを放し、両腕を額の前での交差クロスさせ、衝撃に備える。ここからは運任せだ。

 衝突の瞬間、オウマは幸運の女神の名を叫んだ。

 ユウヤ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ