第二話
オウマは一気に加速器を踏み込んだ。動力発生装置が唸りを上げ、車を急発進させる。空転した車輪外輪が道路のアスファルトを削り、噛み合うと同時、車体が猛速度で初速する。
目標は御殿の正面の門。お屋敷は高い塀に四方を囲まれている。車が突っ込めるのは、真正面だけだった。
三千立方センチメートル(CC)を超える排気量が、三トンを超える車体を秒速三十二メートルにまで瞬時に加速する。正門までは十秒とかからない。車が地対地推進誘導弾と化す。
座席安全装置装着、操縦輪は十時十分握り完了。背筋を伸ばし、座席に、お尻、腰、背中、肩、首、後頭部を預け、衝撃に備える。
幸い、車の運転には心得があった。
小学校高学年時にオウマは、国家三大田舎の一つに住んでいた。堤防で遊んでいた時に、おいちゃんと知り合った。おいちゃんが、車の運転方法を教えてくれた。
おいちゃんは、近所の板金工場の修理工だった。仕事柄か手先が器用で、板金には廃車も持ち込まれていたので、そこから手組で自家製全地形対応車を作成。無許可で堤防を走らせていた。
何を思ったか、堤防で野球をしていると、そこに混ぜてくれと言ってきた。おいちゃんは野球も上手だった。腕が良いので早目に仕事が終わるので、いつも三時ぐらいからは暇だとのことだった。そこから仲良くなるのに時間はかからなかった。バギーも乗せてくれたし、そこで運転も教えてくれた。大らかな田舎だった。
車ミサイルの加速は、さらに増していく。秒速五十メートルを超え、急加速の加重にオウマの背中が座席に、べったり押し付けられる。




