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お花屋さん ー春ー  作者: ニケ
17/21

サクラ ~心の美しさ~2

目覚ましの音がする。今日はハープの軽やかな調べだ。ベルの伸びやかな音も時々流れてきて心が安らぐ。手を伸ばして目覚ましを止める。心地よい温もりから体を滑らせてゆっくりと起こした。まだ眠い。でも花籠を作りたい。目を擦って背伸びをする。さて顔でも洗おうかと布団から出ようとした時だ。西森の横で何やらもそもそと動いている。気配を感じて横を向いた。



「。。!!??」



速水が寝ている。それだけならいい。熱いのか上半身が裸だ。気持ち良さそうに寝ている速水は珍しく、しげしげと見ていたいが西森にはこの上半身が目に毒だった。程よく筋肉がついていて同じ男なのに薄っぺらい自分とは違う。そうだ。同じ男なのに、なんなんだこの色気は!不意に触れてみたいと思っている自分を叱咤し、慌てて布団を掛けた。痛かったのか速水が唸り寝返りをうつ。心臓がばくばくとうるさく高鳴った。こ、怖い。。!自分が自分でなくなりそうで、目覚めた速水からからかわれそうで西森は布団から飛び出す。洗面所に駆け込み顔を洗って鏡を見れば、真っ赤になっている自身の顔があった。これはまずい。速水に気づかれる。何とか熱を冷まそうと何度も顔を洗った。タオルで拭きながらちゃぶ台へと戻ってくる。寝ている速水をなるべく見ないように写真の祖母に挨拶をして、花籠を作るために作業場へとたどり着く。胸がドキドキとうるさくて西森は息を吐いた。



「あ、あの人は。。今度からちゃんと服を着てもらおう。そうでないなら、ちゃんと敷いた布団の中で寝てほしい。。」



速水はなぜか西森が新しく敷いた布団で眠らず西森の布団の中で優雅に寝ていた。何事もなく当たり前のようで一瞬西森も忘れていたほどだ。そうであるなら、昨日西森が布団を敷いていた時に言ってくれればいいものを。いや、西森と同じ布団で寝ると言われても絶対に承諾しなかっただろうが。



「は、花籠。。作ろう。そして、速水さんが起きる前に旅館へ。。」



今日は心が落ち着かず体も熱い。花籠を作れるだろうかと心配になる。花を摘むときに同じようにすべてに感謝して手を合わせた。心を落ち着かせるために呼吸を何度も行ったが全く効果がない。西森ははぁと大きなため息をついた。もうこうなったら落ち着かせる方が無理だ。この状態のまま花たちと向き合う。花たちが落ち着かない西森を優しく笑っているような不思議な安らぎを感じた。



「出来た。。これを自転車の箱に。。!!」



不意に視線を感じて振り返ると、速水がのんびりと自分を見ている。起きた時と同じ服を着ていないので驚いて手元が震えた。固まっている西森を優しく穏やかに見つめながら微笑んでいる。その温かな目差しはとても心地よいのだが服を着てほしい。西森は居たたまれない気持ちで速水に告げた。



「お、おはようございます。。早いですね。。ふ、服を着てくれませんか?どこを見ていいのか、わからないので」



慎重に言葉を選びながらなるべく大きな声を出すよう心がけた。そうしないと湧き出る恥ずかしさに負けそうだったからだ。速水がぼんやりと西森を見つめる。何も言わないが、何で?と聞いているようでもどかしい。確かにこの頃気温が上がり熱くなって寝苦しいが、服を着てほしい。何ででもです!!強く言い放つと伝わったのか持ってきた荷物からTシャツを取り出して身につけた。ほっとして西森は息を吐く。自転車に花籠を入れるため玄関へと足を進める。扉を開いて空を見るととても澄んだ青空が広がっている。今日もよく晴れそうだ。



外の自転車に花籠を入れて後は旅館へと届けるだけだ。ちゃぶ台に戻ってくると速水が味噌汁を温めている。ご飯もよそおってくれていて、箸も用意していた。台所に立つ速水のそばに寄ると優しく笑っておにぎりを渡してくる。作ってくれたのだろうか。



「いつも貰っているからな。具はおかかだから。冷蔵庫に入ってたの使ったぞ。で、あれが明日の分」



ちゃぶ台に削り節が一袋置いてある。どこから持ってくるのだろう。可笑しくなって西森は笑った。速水と二人でご飯を食べる。いつもは花籠のことばかりで朝御飯は取らない。でもこうして誰かと食べるのはとても心地よいなと西森は思った。静かに食べている速水を見ながらくすぐったい気持ちになる。嬉しくて照れ臭くて。落ち着かないのに、妙に心地よい。ちらりと写真の祖母を見ると変わらない写真なのに、からかわれているようで急に恥ずかしくなった。



「俺も旅館に行くから。もうすぐ出るんだろ?」



何でもないことのように速水が告げた。でも、自転車だと言うと走っていくと穏やかに笑う。そういえば花屋のそばに車がなかったが、どうしたのだろうか。聞いてみると昨日の夜も走ってきたらしい。速水曰く、車では身動きが取れないから。とのことだ。



「。。杉崎くんといい、速水さんといい、何でこうも男らしいんだろう。。俺も運動始めようかなぁ」



今回も急に襲われたことだし、護身術でも身につけた方がいいかもしれない。速水に言うと、向いてないから止めておけと優しい笑顔で言われた。何だが釈然としない。男だから、男らしくいては駄目なのか。



「駄目とかじゃなくて、お前、護身術やりたくないだろ?運動だって無理にすることはないよ。そういうのは、したいやつがすればいいんだ。できないことはできないって素直に認めて助けてもらえ」



わかったか?頭を優しく撫でながら穏やかに西森を見つめてくる。労るような慈しむその目が美しい。悔しかったが大人しく頷いた。速水がこう言うのならその言葉に従おうと思う。ちらりと見上げる西森に速水は優しく穏やかに笑っていた。



旅館への道を自転車をこいで走っていく。隣には速水が走る姿があってなんだか嬉しい。朝日がキラキラと眩しくて隣の速水を照らしている。走る速水

はそれはそれは美しかった。しなやかに軽やかに走って真っ直ぐ前を見つめている。杉崎と花畑に行った時はこんなにドキドキしなかったのにな。我ながらわかりやすいと西森は苦笑した。



旅館に着くと裏口に回り正宗の到着を待つ。写真の亮太郎に挨拶をして今日一日が始まる。笑っている亮太郎を見ていると心が安らかになるのを感じた。ここで正宗と一緒に亮太郎も花籠を見ているのだと思う。今日の出来はどうだろうか。しばらくして正宗がやってきた。



「西森くん。おはよう。昨日はすまなかったのう。。どれどれ。。。ほぉ。。何と言うか。。優しい喜びに満ちておる。ふわふわとした穏やかな喜びじゃ。これは素晴らしいのう」



正宗の穏やかな笑顔がとても嬉しい。速水のことで落ち着かず何とか花籠を作ったが、自分は嬉しかったのだなと改めて実感する。確かに速水が来てくれたことは嬉しかった。正宗が西森を見てゆっくりと口を開く。手が伸びてきて西森の頭を優しく撫でた。



「無事でよかった。。本当は花屋に一人で帰すのはとても心配だったんじゃ。。見回りもしてくれると言うし、何かあったらすぐにここに連絡しなさい。不安になった時でもいいんじゃぞ」



もうお前はここの息子のようなものじゃからな。頭を撫でる温もりがとても優しくて、正宗の言葉がとても温かくて心にじんわりとした優しさが溢れてくる。目尻が熱くなり視界が少しぼやけた。本当にここにいる人たちは優しい。ここにいることができて幸せだ。西森は溢れてくる思いを感じながら頷いた。



裏口から出て自転車を押していると意外な人物が速水と話している。速水の下では雅也が楽しそうにじゃれていてのびのびと遊んでいた。自転車を押したがら戻ってきた西森に気づいた雅也が速水の元から離れて駆け寄ってくる。自転車を止めて抱き上げた。雅也は声を上げて喜んでいる。速水と話していた杉崎が西森に頭を下げた。



「おはようございます。西森さん。花籠の配達、お疲れさまです」



雅也を連れてそばに寄る。おはようと返事をしながら速水を見ると何か考え込んでいるようだ。何かあったのだろうか。杉崎は速水に向かって手を合わせて懇願している。必死にお願いしているのであまりの必死さに可笑しくて西森は笑ってしまった。杉崎が苦笑している。



「もう。。笑うことないじゃないですか。。速水さん、お願いします!!空手部OBとして、後輩を助けてくださいよ!頼みます」



空手部?聞き慣れない言葉が出てきて西森は首を傾げたが、どうしたのかと聞いてみる。杉崎は朝から昼まで旅館の見回りを担当しているのだが、どうしても派出所に行きたいらしい。その間にここが誰も居なくなるので速水に代わりとして自分が戻るまでいてほしいとのことだった。速水に聞いてみると、それは構わないのだが杉崎が派出所に行きたい理由がどうも納得できないらしい。何度も首を傾げて顔をしかめている。杉崎は興奮したように速水に力説していた。



「速水さん!!派出所には天使がいらっしゃるじゃないですか!!俺、もうその人のことばかり頭に過って。。どうしようもないんです。。あれは。。まさに地上に降り立った天使ですよ!!」



あ!天女でも可です!!強く杉崎が主張している。天使。。速水はぼそりと呟き顔をしかめる。眉と眉の間がさらに深くなって真剣に考えているんだなぁと西森は思った。杉崎の力説は続いて、綺麗だの可愛いだの止まらない。このままじゃあ、俺、落ち着いてパトロールできませんよ。。終いには弱々しく下を向いて項垂れてしまった。可哀想に思えて西森は杉崎を励ますように提案する。



「俺も一緒に行こうか?花畑に行くついでについていけば護衛として仕事しているでしょ?それに昨日のことも聞きたいし。これから行ってみようか?」



しょげている杉崎は小さな子犬が落ち込んでいるようで放ってはおけない。西森の提案に杉崎の顔がぱあーっと輝くのが見えた。警官のお兄ちゃんが笑ったー!!雅也が嬉しそうに笑っている。本当ですか!?すがるようにやって来た杉崎に大きく頷いた。弟がいたらこんな感じなのかなと西森はふと思う。速水を見ると、あとでその天使を教えてくれと告げている。何度考えてもわからないらしい。杉崎が速水に勢いよく指を指した。



「速水さん!!俺の天使ですから!!びっくりして腰を抜かさないでくださいよ!!じゃ、西森さん、行きましょう!」



にっこりと笑ってあっという間に西森の自転車を持ってきた。早く早く!と西森を急かせるように自転車に乗せるとさっさと押しながら走っていく。速水さーん!ありがとうございます!遠くで叫びながら西森をさらに急かしている後輩の後ろ姿を雅也とともにのんびりと見送った。



「速水のお兄ちゃん。どうして警官のお兄ちゃんは落ち込んだり喜んだりしているの?天使って何?」



最もな雅也の疑問に、あいつはああいう奴なんだよとだけ答えて雅也を抱き締めた。肩車をせがむ雅也を持ち上げて二人の帰りを待つ。これは時間がかかるかもなぁと旅館へと戻っていった。


後半はそのうちでごさいます~。ではでは(*^^*)

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