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1Play 降臨

「一体……ボクはどうなったんだろ?まるでゲームの世界だ。ここ」


もう独り言でしかない。そんな事は分かっている。


ゲームの世界なんて信じられなかったけど…ボクが選ばれた勇者だったら良いな――――――――とか。


この世界なら、ボクは強かったりして―――――――――とか。


考えるようになった。突然物陰から、ゲームの世界っぽいから魔物とか、モンスターとでも言えばいいのか――――それらしい物体が飛び出した。


夢?ゲーム?とか本気で思ったけど、ゲームと違ったのは、このモンスターが可愛らしい物でなくて気色悪い事。


気にせずボクはゲームなら得意だとか、強いのかもとか……色々と安易な考えで、モンスターに向かって走った。


衝撃。顎から脳に向かって何かわからない電流に似た物が、走りぬいた。


「痛い、痛い、痛い!!!」


ゲーム?勇者?夢?何を考えていたんだ?


血が出てるし、今まで味わった事が無い―――――ゲームなんかじゃ無い。現実だ。信じられないし、信じたくも無いけど、認めざるを得ない。


「ありえないよ!!何なんだよぉ!!ボクが何をしたっていうんだ!!!!!」


現実逃避――――――ボクはまた、この方法で逃げようとしたが、逃げ道は無い。


今はただ、あのモンスターなんかじゃなく怪物から、走って逃げるのみだった。


ゲームなら、ここで何か起きろよ。誰かが助けにくるとか、色々展開があるだろ?


そうだ。この石が戦う武器に変形するとか無いかな?


ボクは石を握り締めた。何も反応が無い。振ったり念じてみたり、試みた。しかし、反応は無い。


ボクが一方的に思った期待だが、期待外れもいいとこだった。


どうしよう?どうしよう?追ってくる。


運動能力なんて無いし、ましてや喧嘩もした事が無い。こんなボク何ができる?夢なら覚めてくれ。


痛い。


悲痛の叫びは誰にも届かない。


ダメだ―――――限界だ。体力なんてすぐに切れてしまった。


諦める――――――ボクにとっては日常茶飯事。成績、友達、将来。色々な物を諦めてきた。


だけど、さすがに今は違う。痛い、何より死に関わるかもしれない。死んでもいいとか思ったこともあるけど、恐怖心で、死にたくないという気持ちが、表に出た。覚悟なんて少しも出来ていなかった。


今、何故か死に対面している。不思議なゲームの世界に来て―――――――。


助けて――――――――――――。


目の前に人が5人くらい立った。


やっぱりゲームだ……しっかりと助けが来るじゃないか。


良く見ると、人ではなくモンスター?でもゲームのそういう種族なのかも。


だが倒れているボクに刃を向けてきた。


え?なんでだよ?おかしいだろ。そこは。


もう、逃げるしかない。限界を越えてた気がする。ランナーズ・ハイだっけ?それかも?


ボクは何とか振りきる事が出来た。


ホントに死ぬかと思った。


今は暗い洞窟の中でうずくまり、ボーっとしている。


ゲームの世界に似てるけど、そうではない、似て非なる全くの別物。


とりあえず死なないために、ボクは生きる事を誓った。


何故だかは分からないけど、お腹も空かないし、眠くもならない。


「誰か居るのか!?」


洞窟の奥から、人の声がした。やっと、ゲームらしい展開か?それともまた、裏切られるのか?


ボクは恐る恐る、声の方へ近づいた。出てきたのは、人間だった。とても、気の優しそうで温和な顔をした男の人だった。しかも金髪に青い目…外人だ。何故日本語をしゃべれるのか?しかし、ボクにはもう、どうでも良い事だった。


ボクはこの人から、この世界の現状を聞いて驚愕した。


もしゲームの世界なら、平和に暮らす人間達がいてこっそり暮らすモンスター。そこに魔王などが現れて勇者が闘うとかだろう。


だがここは、平和に暮らすのはモンスター、こっそり暮らすのが人間。だと言うのだ。


人間はモンスターに狩られるのみ、だから逃げ回るしかない。


ボクは、なんて世界に来てしまったんだ?ゲームの世界なんかじゃないここは。


「・・・・・・・・・・・!!!!」


外から何かが叫ぶ声がした。モンスターの奇声である。もっとも人間には聞き取れないだけだが。


「見つかったか………新しく来たとか、よく分からん事を言っていたがここはそういう世界。肝に銘じておけ」


男はボクに向かってそう呟いた。もう逃げ道はなかった。


「そう言えば名前言ってないし、聞いてなかったな。俺はマッシュだ」


「ボクは、僕名前は…―――――」


マッシュの顔が弾け飛んだ。鮮血を帯びて鉄が折れるような音と共に。


「うわぁっぁ!!!」


腰が引けたそして目の前には、今日見た人の姿をした怪物がいた。


ヤラレル―――――――本能はそう、感じ取った。


石が共鳴のような、ガラスの擦れる音を出した。ボクの体――――どうしたんだ?体が熱くなって…何故か、今アイツらモンスターの言葉が分かった。


「怪物だ!!人間の特殊変化だ!!」


ボクの体は僕の意思とは関係無しに動いた。


殴った。初めて物を殴った。その一発はモンスターが粉々に噴き飛ぶほどの、威力だった。


モンスターは逃げた。魔王が降臨したと言う叫びと共に―――――――。


ボクはこの世界を救う勇者じゃない、この世界を滅ぼす魔王だった。そう、石の力で魔王と化したボクは何故ここに来たのか理解した。


前の世界で閉じ込めた感情を、全て表に出し、何も諦めなくていい、全て思いのまま理性のかけらも無く、行動すれば良い事を。

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