【レージside】
† quiet †ヘイオン†
……あれ?
何でだっ……何で思い出せないんだっ!?
月曜日は――……
そうだ、雨が降ってた。
前が見えないくらい土砂降りだったのを覚えている。
アメガ ヤケニ ミミニ ヒビク
「雨が降っていて……」
マルデ ミヲ ツラヌクヨウナ
「俺は……そうだ、濡れたんだ……」
ツメタク スルドイ アメ
「そして、それから……あれ?それから俺は……?」
カキケサレタノハ
■■■■■
イタイ痛いイタイイタイいたい痛いいたいイタイいたいいたいイタイ痛いイタイイタイいたい痛いいたいイタイいたいいたいイタイ痛いイタイイタイいたい痛いいたいイタイいたいいたい――……
鈍器で殴られたような
針で貫かれたような
言い知れない激痛
頭が割れそうだ
誰かどうにかしてくれっ
――フワッ……
甘い香りが俺を包む。
啄むようなキス。
あれ程、俺を責め立てていた激痛は、いつの間にか治まっていて。
「カス……ミ……」
名を呼べば、カスミは優しく微笑んでいて。
無我夢中で掻き抱いた。
温かい。
カスミの頭越しに、俺の嗜好を網羅した朝食が見える。
「何でお前、こんな朝飯……」
俺の言葉を違う意味で解釈してしまったらしいカスミが、申し訳なさそうに言う。
「ごめんなさい、勝手に……レージが喜ぶと思って」
誰も知らない――
……友人ですら知らないだろう、俺の嗜好。
「迷惑だった?」
か細い声で、カスミが伺う。
素直に礼の一つも言えれば良いんだろうけど、生憎、俺の根性は修復が不可能な程、曲がりに曲がってしまっている。
「誰も、迷惑だとか言ってない。食うぞ」
そんな俺の素っ気ない返事に、カスミは嬉しそうに頷いた。
「冷めちゃったわね。温め直すわ」
言ってから、カスミの身体が離れる。
放し難い温もりは、だが確かにそこにあって。
でも、やはりそれを口にするのは憚られて……
俺は、本心を隠すように、そっと拳を握り締めた。