【レージside】
†reunion†サイカイ†
「あぁ~……頭イテ……」
グラグラする。完璧に二日酔いの症状だ。
時計を見る。丁度12時を回ったくらい。
人通りはほとんどない。
昨日から気心知れた奴らの集まる所に入り浸っていた。
余り柄が良いとは言えない連中だ。事務所にも、付き合いは控えるように言われている。
――でも……
「今更……」
思わず、自嘲の笑みが毀れ落ちた。
そう、今更だ。
今の俺に何の価値がある?
一度堕ちれば、後はただひたすら堕ちて行くだけ。
闇に足を掬われれば、浮上することはもう叶わない。
取り留めなくどうしようもない考えばかりが脳裏を過ぎる。
約30分くらい歩くと、マンションが視界に入った。二日振りの我が家だが、何の感慨も沸かない。
車なら5分の距離だ。地下の車庫には、自慢のS30型フェアレディZが眠っている。
「乗って行けば良かった」
後悔しても、もう遅い。呑み明かすと決めて家を出たから、タクシーで出掛けた。
――けど今更飲酒運転が何だ。
何が怖いっていうんだ。いっその事、車を走らせてそのまま逝ってしまった方が楽だったんじゃないだろうか。
――どうせ俺は……
そこまで心の中で言い掛かって、俺は違和感を覚えて視線を上げる。
「何で……」
灯いている筈のない部屋が、ほんのり明るい。
そこは、俺の部屋だ。
セキュリティだけは自信があるとか抜かしやがったから、ここに決めたのに……
空き巣にこうも簡単に入られるなんて、欠陥だらけなのにも程がある。
――とにかく……
「ケーサツを……」
そう思い、ケータイを取り出して――……
ヤ メ ナ ヨ
思い止まった。
とにかく確認するのが先だ。
もしかしたら消し忘れただけかもしれない。
玄関フロアに備え付けられたタッチパネルに部屋番号と暗証番号を入力する。
――ピ――……
無機質な電子音が響くと、エレベーターが開いた。
急いで部屋の前まで来て、そして安堵の溜息を漏らす。
部屋の鍵はかかっていた。
誰かが侵入した形跡もない。
「驚かせやがって」
思わず舌打ち混じりに悪態を吐き出した。
ドアを開ける。
せっかくほろ酔い気分で気持ち良かったのに、すっかり酔いも醒めてしまった。
「呑み直すか」
「お帰りなさい。レージ」
その、全く予期していなかった声に、俺はブーツを脱ぎかけたまま硬直したのだった。