表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7day's nightmare  作者: 梨藍
―Monday― †何処に居ても†
3/23

【●▲■side】

† origin †ゲンテン†

今日は、大好きな彼の生ライブがあったの。

勿論、私は最前列でたっぷり彼の歌を堪能したわ。


そして、ライブが終わると同時に私は彼の元へと駆け出した。


――その時まで気付かなかったの


まさか……


同じ局の別スタジオに、彼から全てを奪い去ったネメシスまで生ライブをしてるなんて……


きっと、彼を完膚無きまでに徹底的にこのセカイから消し去る為のワナ。


相手の所属するライバル事務所のやりそうな卑怯な手口。


そして、簡単な策に嵌まったのが、マスメディアと馬鹿で薄情な名ばかりのファン。


でも私は知ってる。


私だけは判ってるの。


だから傍に居てあげたい。


強い衝動に駆られるまま、私は彼の控室へと急ぐ。


でも、そこに彼の姿はなくて……


息付く間もなく、私はまた走り出した。


――きっと、あそこだわ


そう、彼の好きな場所。


彼が一人になりたい時、必ず行く所。


屋上だ。


私は迷わず階段を駆け上がる。


そして耳を劈くような悲痛な叫びに思わず身を潜めて。


こっそり伺い見た。



あぁああぁああぁぁあぁぁぁあああぁ!!!!!



彼の叫びは、まるで奈落の底の様に昏く果てない階下へと反響する。


踊り場の壁に打ち付ける拳には血が滲んでいて……


「もうっ……もう止めて……」


そう言って駆け寄ろうとした私の腕を、誰かが掴んだ。いきなりのことに驚きながらも、私は平静を保って振り返る。


そこに立っていたのは、見ず知らずの少年。


「あんたに何が出来るのさ?」


その小馬鹿にしたような言い様に、私はカッとなって言い返した。


「あの人の苦しみを判っている私だからこそ出来るの」


そう、私にしか彼は救えない。

こんな子供に何が判るっていうのよ。


私はそんな思いを込めて、少年を睨み付けた。



――沈黙……



少年は薄く嗤う。


「出来るなら、やってみなよ。猶予は余りないけど」


そんな挑発と黒い羽根を一枚残して少年は去って行った。

私は、もう居ない少年へ挑むように呟く。


「私が必ず守ってみせる」



※※※※※※



同時刻。

某局本社ビル付近――……


スーツ姿の怪しい男が二人、中の様子を伺い見ていた。


「クソだりいな」


男は面倒臭そうに、そんな愚痴と溜息を乗せて紫煙を吐き出した。


「そんな事言わない」


そう諌める相棒を軽く睨み付ける。


「ヤツが絡んでると見て、間違いねえんだろ?」


そして確認するように言ってから、煙草を噛む様に咥えた。その言葉を肯定するように一つ頷いてから、彼はビルへと視線を移す。


「しっぽ……中々出さないね」


そんな相棒の視線に促されるように、男もビルへと目を向けた。

更に上を見上げれば、暗雲が立ち込めていて。


それはまるで、悲劇を呵責しているように見えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ