【●●●side】
† origin †ゲンテン†
彼は、一体何に対してなのか
判っていなかった
――否――
ただ単に、認めたくなかった。
『発売から一週間と経たずにミリオンセラーの大ヒット!』
<うるさい>
アメガヤケニミミニヒビク
光の中にある、あの勝者の舞台は、つい先日までは確かに彼のものだった。
『オリコンチャート四週連続第一位』
<何で俺じゃないっ!>
マルデミミヲツラヌクヨウナ
そのグループは突如彼の目の前に立ちはだかった。
『今話題の人気ユニット“ネメシス”に歌って頂きましょう!』
<何であいつらなんだ!>
ツメタクスルドイアメ
“実力は自分が上だ”と高を括っていたのだ。
『“アマルティア”です』
<こんなっ……>
カキケサレタノハ*****
ファンの心が自分から離れていくなど、考えてもいなかった。
一瞬にして彼は
ヒエラルキーの頂から
転落したのだった
ネメシスは、まるで彗星が如く音楽業界に現れた。ビジュアル、曲調、その全てが斬新だと、マスメディアはこぞって彼らを取り上げた。
――勝手に騒いどけ
そんな加熱していく報道合戦を、彼は冷めた目で見ていたのだ。自分の地位は、揺るぎないものだと信じていた。
――盛者必衰――
この言葉と自分は無縁だと信じて疑わなかった。
だが事態は急変する。新曲の発売日がネメシスと重なった。
「実力を思い知れ」
事実上の直接対決。
――だが……
現実を突き付けられたのは彼の方だった。
「ウソ……だろう……?」
それまで王座に君臨していた彼は、一夜にして引きずり下ろされたのだ。彼は、自分の生きている芸能界というセカイの現実を突き付けられて、はじめて知る。
その栄華は砂上の楼閣が如く、脆く不確かなものだと――……
『お前は消耗品だ』
誰かが嗤いながら囁いた。
そう、それはあたかも賞味期限の切れた嗜好品のように、セカイの端に棄てられたのだ。
周りからは一人、また一人と段々去って行った。
自分こそがハダカの王様だったのだと……
壇上で躍らされるカラクリ人形――……その様は正にピエロそのものだったのだと、はじめて知る。
――ワアァ!!!
沸き立つ観客の声は、だがしかし、彼に向けられたものではなく。
あぁああぁああぁぁあぁぁぁあああぁ!!!!!
渦巻く感情のまま、壁に自らの拳を叩き付けた。
ウルサイ煩いうるさい五月蝿い煩いうるさいウルサイ五月蝿いウルサイ煩いうるさいうるさいウルサイ五月蝿いウルサイ煩いうるさい五月蝿い煩いうるさいウルサイ五月蝿いウルサイ煩いうるさいうるさいウルサイ五月蝿いウルサイ煩いうるさい五月蝿い煩いうるさいウルサイ五月蝿いウルサイ煩いうるさいうるさいウルサイ五月蝿いウルサイ煩いうるさい五月蝿い煩いうるさいウルサイ五月蝿いウルサイ煩いうるさいうるさいウルサイ五月蝿い……………
うるさい!!!
どこまで逃げても追って来る。
――く ろ い か げ――
ヘドロにも似た黒い影は搦め捕り、決して彼を離さない。
獣の咆哮にも似た慟哭は、全く意味を成さない音の羅列。
何度も打ち付けた拳からは、人の証である赤色の液体が滴り落ちる。
そんな彼を、そっと見守る影が一つ。




