【レージside】
†missing†ソウシツ†
「何……で……」
喉がやけに渇く。
上手く声が絞り出せない。
警鐘を鳴らすように、心臓が脈打つ音が、妙に身体に響く。
「……っ……」
フラッシュバックするように記憶の断片が、俺の網膜を支配する。
『何だよ、お前!』
怒鳴る自分の視野の先に居るのはカスミ。
『もうっ……もう止めて……』
必死に俺の腕に縋り付く。
――そうだ……やり場のない憤りを俺は持て余していて……
俺は、渦巻く感情のまま、壁に拳を力の限り叩き付けたんだ。
『離せよっ……何だよお前!ファンの顔なんていちいち覚えてられっかよ!』
俺は憎悪を剥き出しに、見知らぬオンナを睨み付ける。
――イヤダ……
『私は、あなたの苦しみを判ってる』
――ヤメロ……
――見たくないっ
この先は、思い出したくないんだ。
これ以上、見せないでくれ……
『判ったような口、利くんじゃねえよ』
縋り付くオンナを、俺は力の限りで突き飛ばした。
オンナの痩躯がフワリと宙を舞い。
奈落の底のように昏く果てない階下へ呑み込まれていって――……
――ドンッ!
次の瞬間、耳に届いたのは何かが強かに打ち付けられる、鈍い衝撃音。
紅イ 紅イ
華ガ 咲ク
命ヲ 糧ニ
華ガ 咲ク