【カスミside】
†light†きぼう†
もうっ!
どうしてそう自分を卑下するのかしら。
私が言いたいのは、そういうことじゃないのに。
シンデレラは、女の子の憧れのお姫サマ。
――でも……
「0時を過ぎたら、誰ひとり見向きもしない。灰被りに戻っちゃう」
私の言葉に、レージの表情が醜く歪む。
きっと、自分と重ねてるんだろうってことは、容易に想像出来た。
レージは2年前まで路傍で弾き歌いをしていた。
それこそ、シンデレラみたいに誰ひとり見向きもしない、無名の“自称”ミュージシャンだった。
ある日、突然スカウトされてメジャーデビューを果たす。
初のシングルがオリコン1位を3週に渡って独占。
“奇跡のシンデレラボーイ”
当時発売された週刊誌の見出しだ。
「魔法が解けて、この様だ」
静寂の中、彼の声が震える。
違う。
私はそんな事が言いたいんじゃない。
レージと目線を合わせるように、彼と向かい合った。
彼の両腕にそっと手を添えて、彼の顔を見上げる。
「レージ」
焦点の合わない視線がさ迷った。
「レージ」
もう一度静かに呼べば、やっと私の目を見てくれた。
あ、驚いてる。
何だか目を見開いているレージが可愛く見えて、私は思わず抱き着いた。
耳に伝わる鼓動が、温もりが、彼が確かにここに“居る”事を私に告げる。
「一度は確かに貧乏になっちゃうけど、シンデレラはちゃんと幸せを掴めたの」
シンデレラを迎えに来たのは王子サマ。
じゃあ、レージを迎えに来たのは。
「それが私。私はあなたがまた輝きを取り戻す為にここにいる」
諦めないで欲しい。
大好きな、アナタだから……
立ち上がって欲しい。
私のたった一人の大切な……
「ねえ、何で“あした”を“明るい日”って書くか知ってる?」
私の出した謎々に、レージは首を傾げる。
「今日を頑張って、明るい日を……幸せを掴む為よ」
起こることに“奇跡”はない。
全ては“軌跡”が……
――歩んで来た道が、示してくれる。
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