4-1 魔王を倒して、家に帰るまでが遠足
「勇者よ!友よ!気をつけて!」
「勇者様…帰りをお待ちしております」
エルガド国を出るにあたって
エルガドの妹マリーが同行してこようとしたが…
なんとか、理由をつけて断った…
次の国は『港街マーフォグ』
優秀な技術者や学者が集まる国。
おそらく人間界で一番技術が発展している国である。
最先端の商品や技術は、だいたいマーフォグ発であることが多い。
港街マーフォグまでは、エルガド国からそれほど遠くない。
5日ほどの行程だ。
出発してほどなくして、海が見えてきたと思ったら、マーフォグの城門が見えてきた。
ちょうど俺たちが、マーフォグの城門をくぐったあたりで事件が発生した。
港街マーフォグ 城門
ドカーーン!
ドカーーン!!
ドカーーン!!!
街のいたるところから爆発音が聞こえてきた。
「どうなってんだ これは!?」
それが祝砲ではないことはすぐに分かった。
遠くから悲鳴のような叫び声と
敵襲を知らせる鐘が、街全体に鳴っていた。
ハンゾウがすぐさま返答した。
「ハッ この鐘の鳴らし方は、街に何者かが侵入してきたものと思われます!」
ゴブ爺が少し考えながら発言した。
「偶然にも魔王様が、街に入られたタイミングじゃな」
「おそらく…魔王様を狙っている可能性も否定できません」
「魔王様ご用心を」
フィーデがすぐさま警戒態勢に入った。
メンバーそれぞれも警戒態勢に入る。
息を切らした衛兵がやってくる。
「ハァハァ 勇者様 ちょうどいいところに」
「魔物に街が襲撃されております!どうか 助太刀をお願いします」
「もちろんだ ハンゾウは街の東へ」
「ロプスとゴブ爺は西へ」
「フィーデとマーニャは北へ」
「エオスは街の怪我した人を頼む」
「俺は王を護衛するため、城へ向かう!」
「魔王様1人では危険では!?」
「うむ、これは囮かもしれませんですじゃ」
「なぁに これでも生き残ってきた勇者よ!これぐらいなんてことはないw」
「いや…しかし…」
「ほんとにやばかったら…すぐ逃げるから」
「では…各地を制圧したら、すぐに城へ向かいますので、無茶をなさらぬように」
城からは、すでに火の手が上がっていた。
港街マーフォグ 西地点
担当 ロプス、ゴブ爺
「なんじゃ あの巨大な生物は??」
「おれも見たことない生物」
「上半身と下半身が、まるで別々の生き物のようじゃな」
「上半身がミノタウロス??」
「下半身が獣系の魔獣か?巨大な馬か??」
「ふたつの生き物を合体!!」
「まさかな…」
「こっち気付いたようじゃ、こっちに突進してくるぞ」
「ロプス、ちとあいつの動きを止めるれるかの?」
「楽勝」
「余裕のよっちゃん」
「全く…どこでそんな変な人間語覚えたんだ」
「エルガドの鍛冶屋の人間に教えてもらった」
「いいだろー」
「きたぞ!」
得体のしれない魔獣が、ロプスとゴブ爺の殺気に気付いて、二人めがけて突進してきた。
応戦するかのように、ロプスが魔獣めがけて突進した。
インパクト!
バスゥーン!!
肉と肉がぶつかり合う音が響いた!
魔獣の動きはピタリと止まった。
「うむ 上出来じゃ」
ゴブ爺が、魔獣の足元を素早く駆け抜けた。
ドスーン!!
魔獣がその場に崩れ落ちた。
ロプスが魔獣の動きを止め、ゴブ爺が魔獣の足首を切っていた。
「ふぅ こんなもんじゃろ」
「とりあえず、こいつは動けまい」
「他の場所は大丈夫かのぉ」
「ロプスよ、魔王様と合流じゃ」
「余裕のよっちゃん」
「意味間違えておるぞ…」
港街マーフォグ 東地点
担当 ハンゾウ
「ハンゾウ様 10数体ほどの魔物が暴れ回っているもようです」
「街や人に被害がでないよう、すぐさま対処せよ」
「ハッ!」
数百メートル先に暴れ回っているような群衆がいた。
「うーむ あれだなー」
「なんとも奇妙な見た目」
「あれは人間か魔獣か??」
「頭と胴は人間…腕と脚は別の魔獣のもの…」
「だれかが作ったおもちゃなのか…」
「キャー!!」
子連れの女性が魔物に襲われていた。
シュパッ
刀のようなものが空にきらめくと
魔物の四肢が一瞬で切断されていた。
「大丈夫ですか?」
「た 助かりました、あ あ ありがとうございます」
「おじさん ありがとう!」
「もしかして…あ あなたも魔物…」
「この場は危ない、すぐに避難を!」
街のその女性とその子供は、ハンゾウに深々とお礼をして
足早にその場から逃げるように走り去っていった。
「ハンゾウ様 この場は鎮圧できました」
「幸いそれほど、人や建物には被害が出ていないかと」
「ただし 捕縛した魔物に誰に指示されたか聞いても…」
「人間語も魔族語も話せないもよう…」
「情報はいっさい分かりませんでした…」
「得体のしれない魔物…」
「引き続き調査し、可能な限り情報を集めよ!」
「承知!」
「オレは魔王様の元に向かう」
マーフォグ 北地点
担当 フィーデ、マーニャ
「マーニャ、街の上空を飛んでいる魔物を見たことある?」
「ズームイン!」
マーニャは、呪文を唱え、空を見上げた
「見たことないのラ、新種の魔物??」
「見たところ、ツギハギされて、作られた魔物みたいなのラ」
「不完全みたい」
「個体としては、それほど強くなさそうなのラ」
「でもそれなりに数が多いわね」
「ピカッとやって、ギュッとして、ファイアーでいいのラ!!」
「マーニャ…私だから理解できるけど…」
「普通の人は今の説明で理解できないわ」
「フラッシュの魔法で気絶させて、グラビティの魔法で集めて、炎の魔法で焼き尽くすのね」
「なのラ!」
「じゃ、フィーデはグラビティ担当で!」
「分かったわ」
マーニャとフィーデが詠唱を始める。
「◯◯◯◯◯(魔族語)」
空の一部が切り抜かれたように、魔物が飛んでいる空全体が眩しい光に包まれた。
飛んでいた魔物が気絶し、空から落ちてくる。
続いてフィーデが詠唱した。
「◯◯◯◯◯(魔族語)」
空の一部分の空間が歪み、歪んだ地点を中心に物体が引き寄せられていく。
みるみる魔物の肉団子状態が完成した。
「◯◯◯!◯◯◯◯◯◯!(魔族語)」
地面に落ちた肉団子状態の魔物が、炎に包まれる。
一瞬で魔物が蒸発し、地面には燃えた後と炭が残っていた。
「第二波があっちの空から来るみたいね」
「さっさと同じ手法で片付けるのラ!」
「さっさと片付けて、早く魔王様の下へ行きましょう!」