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魔王を倒して、家に帰るまでが遠足【完結】  作者: ATARA
1章 魔王を倒して、家に帰るまでが遠足
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1-2 魔王を倒して、家に帰るまでが遠足

あなたならどうするだろうか?




勇者になれたあなたは、無事魔王を倒すことができました。


ところが次の日、目を覚ますと、あなたは魔王になっていました。


次の3択からひとつを選んでください。



1.魔王になってみる


2.勇者として生きる


3.新しい案を提案する(期限は1週間以内)




1.魔王になってみる


人間界のことに詳しいあなたなら、的確な指示ができるでしょう。


人間界を征服することも夢ではないかもしれません。


ただし、人類史に稀代の悪魔として、後世まで語り継がれるでしょう。




2.勇者として生きる


生きて魔界からは出られないでしょう。


ただし、人間界では、魔王を倒した勇者として、


母国に銅像が立てられ、英雄として、後世まで語り継がれるでしょう。




3.新しい案を提案する


提案がうまくいけば、新しい世界が築けるかもしれません。


ただし、提案がうまくいかない場合には、おそらく命はないでしょう。




(あなたはどれを選択しましたか?)






魔王城 魔王特別寝室



間違いなく、今後の俺の人生を決める大決断!!


そう簡単には決められるものではなかった。


新しい方針を考えてみるのだが、失敗したときのことを考えると臆病になってしまい…


じゃあ 魔王にでもなってみるかとも思ったりもするのだが、やはり気が進まない…


いっそのこと 勇者として死するかとも思うが、死の恐怖で決断できない…


結局堂々巡りをし、結論がでないでいた。


らちがあかないので、思い切ってフィーデに相談してみようと思った。





魔王城 執務室



コン!コン!コン!



フィーデがいる執務室をノックした。



「魔王様 御用でしょうか?」



フィーデが仕事を中断して、快く部屋に迎え入れてくれた。



「例の今後の魔界の方針なんだが…」



「お決まりになりましたか」


「それではすぐ招集の準備を」



「いや…まだ決まってないんだ」


「決められないというのが、正しいかもしれない…」



「そうでしたか…」


「ではどういったご要件で??」



「フィーデ… いや魔族側の意見を少し聞きたいと思って」



「なるほど そうでしたか」


「それならご心配なさらず」


「いかなるご決断でも、我々魔族一同はついていく覚悟がございます」


「歴代の魔王様も、独断で判断されてきました」


「相談はもちろんされることもありましたが」


「重要な決断では、だいたいお一人で決められておりました」


「時には結果がうまくいかないこともありますが、我々は魔王についていくと忠誠を誓った者達」


「うまくいかなくても、なにも気にしません」


「なので どういったご決断をされようと」


「基本的には…ついていく覚悟ではあります」




最後が少し気になった…


『基本的には…ついていく覚悟ではあります』


おそらく決断の場で、魔王に相応しいかどうか値踏みされるのだろう…




「そ そ そうか…」


「俺は魔王だもんな…魔王が決めないとな…」



「魔王様 期日も迫っておりますが、ご決断お待ちしております」



悪意のない目を見つめると、魂が取り込まれそうで、あまり目を見ることができない。



「そうだ フィーデ」


「これから散歩でもしないか?」



「ご命令とあれば」



「いやいや 命令ではない」


「もしよかったらっていうぐらいだ」



「これは人間界でいう『デート』というやつでしょうか!」



フィーデが目を輝かせ、こちらをジロジロと見てくる…



「デートってやつには、ならないのかもしれないな」



俺は『デート』という単語を久しぶりに聞いた気がして、顔が真っ赤になってきた。



「急いで支度しますので、少々お待ちを!」




雑談をしながら、魔界のことをいろいろ聞こうとおもっていたのだが…


急に!なんかデートっぽい雰囲気になってしまった…


まあいいか 2人で話すことには変わりないし


おそらくデートの意味も分かってないだろう。




「お待たせしました」


「どうですか?魔王様…」



ドレスアップしたフィーデが、部屋から出てきた。



「いいと思う!すごくいいと思う!」



「あ ありがとうございます…」



自分から見せてきたわりには、少し照れているようだった。


普段は仕事モードって感じで、他人を寄せ付けないようなオーラを発しているが


今はオフって感じで、ただの普通の年頃の女性が、そこにいるようだった。



「それでは魔王様、城下町のレストランでも行きましょう」


「お城でも、もちろん美味しい料理を食べられますが、たまにはいいですよね?」



「そうだな、いかにも高級レストランみたいなところ以外で頼む」



いよいよデートっぽくなりすぎて、嬉しいような


『でもデートに誘ったんじゃないんだよな』という複雑な気持ちになった。






魔界 城下町 レストラン『イブリース』



人間界でいうところの居酒屋??ファミレス??みたいな店で、ご飯を食べることになった。



「わたしもたまにコッソリ、こういったところで飲んでるんですよw」



「意外だな~w」


「普段のフィーデを演じるのも疲れますから、ストレス発散ですねw」




俺はフィーデのことはなにも知らなかったので


お酒を酌み交わしながら、フィーデにいろいろと質問した。




そしていろいろ分かってきた。


フィーデは俺よりも300歳以上の年上であること

(嘘か本当か分からないが、魔族の中ではかなり若いほうだと言っていた)


魔族名家の出で、歴代の魔王に仕えていること

(そのため、小さい時より英才教育を受けてきたこと)


得意な魔法と弱点は言えないこと

(弱点は特に身を危険に晒すことになるので、当たり前だが言えないとのこと)


未婚で彼氏はいないこと

(魔王側近の者は、魔王の許可が必要で、いろいろと面倒だと愚痴を言っていた)



フィーデから俺への質問に対しても、俺は嘘偽りなく答えていた。



両親は産まれた時よりいないこと

(育ての親、じっちゃんとばっちゃんに育てられたこと)


これまでの戦いのこと

(どこの部隊所属で、どこの戦場で戦っていたかとか)


未婚で彼女はいないこと

(人間には興味はないはずだが、俺がフィーデに聞いたからだろう)




ここ数日、魔界で暮らしてきただけでも


魔界の印象が驚くほど変わったのは、事実だった。


魔族の情報も、人間界でかなり補正されて、アウトプットされている。


もちろん悪い意味でだ。


『醜悪な悪魔共を滅ぼせ』



魔界でも、人間界のイメージを悪くアウトプットするように、意図的に行っているのだろう。


『野蛮な人間共を滅ぼせ』



お互い様といえばお互い様だが…


実際こうして話してみると、相手を知ることで


いい意味で印象が変わった。




そうこう話しているうちに


あっと言う間に時間は過ぎていって、店も閉店の時間になった。


帰る間際に、店のお客さんに、フィーデが店にいることがバレて


ちょっとした騒ぎになったので、逃げるようにして、店をそそくさと出た。



「ちょっと魔王様、城へ帰るまでに寄り道しませんか?」



「あぁ、全然構わないが」






魔王城 郊外にある丘



城から少し離れた小高い崖の上に着いた。


城下が一望でき、見晴らしもいい。


今夜は月も満月で、周りも明るい。


風が吹いて、すこし肌寒いが、それもまた良かった。



「ここは私のお気に入りの場所なんです」


「小さい頃、先生に怒られて城から逃げ出し、よくここで1人で泣いてましたw」



「俺も似たようなことあるぞw」


「じっちゃんに怒られて家出したっけなぁw」


「俺の場合には、近所にあるデカイ木の上だったw」



「だれでも、そういうのってあるんですねw」



「なあ フィーデ」


「俺が言うのも…あれなんだが…」


「先代の魔王はどうだったんだ?」


「素晴らしい魔王だったんだろ??」



「力に取り憑かれたように、争いを好む王でした」


「自らの力を誇示するための戦い、弱いものをふるい落とすための戦い」


「戦いと力こそが、生き甲斐の方でした」


「武闘派の側近達は慕っていましたが、私はちょっと苦手な方でした…」



「そうか…そうだったのか」



「あっ 苦手だったってことは、ほとんど誰も知りませんから、秘密にしてくださいね」


「表向きはそういった雰囲気は出してませんから…」



「分かったよ」


「もしかして酔ったら言っちゃうかもしれないがw」



フィーデを見ると、笑っている。


その姿は


月明かりに照らされて、女神がこの世にいるのかと錯覚するようだった。






そして次の日


決断の期日を迎えた。。。

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