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第2話 森の妖精

 町を出る前にまずオレは紡ちゃんに向き合った。


「武器とかどうしようか」

「うーん。あった方がいいんだろうけど……」


 使えるか自信がないと彼女が言う。俺だってそうだ。

 そもそも子供が使える武器ってあるのか。せいぜいナイフくらいしか想像がつかない。鎧なんて重くて切れないだろうし、魔法のお守りみたいなのがあるかどうか。

 支給された、どう見ても菓子にしか見えない通貨も無駄には使えない。命を天秤に乗せた買い物ってこんなに不安で怖い物なんだな。


「薬とかのほうがいいのかな。でもこの世界の回復手段ってどんなだろう」


 治癒魔法みたいなのはあるんだろうか。薬もゲームに近い感じ?

 わからないことだらけだ。お店の人に聞いて理解できる範疇だといいんだけど……。


「あれ? そういえば言葉通じてたよね」

「言われてみれば。王様やお城の人と普通に話せてた」

「召喚による補正みたいな感じかな。何はともかく助かる」

「うん」


 ここで立ち止まってても仕方ない。オレは決意し紡ちゃんに言う。


「とにかくお店に行って話を聞いてみよう」

「そのほうがいいね。わたしも知りたい」


 さて、次の問題はお店がどこにあるかだ。

 人に聞くのが手っ取り早いけど人気がないんだよな。

 原因は世界の危機だと思う。でも冒険する者にはなんとも不親切な状況に感じる。

 慌てず町の中を歩き、人の姿か商店を探す。しかし言葉は通じても文字までは読めない。これは困った。ますますこの世界の人の仲間の獲得が最優先だと痛感させられる。


「やっぱり読めないね。どうしよう」

「こうなったら手当たり次第だ。それっぽい店に入ってみよう」

「は、はい」


 すぐ隣から緊張した声が聞こえた。

 外観と看板の有無を注視し、雰囲気から推理して入ってみる。

 カランッと鈴の音が鳴る扉を開いて入店すると雑多な物が並んでいた。雑貨屋だろうか。


「いらっしゃいませ」

「あの、すみません。ここは雑貨屋ですか?」

「看板を見なかったのかい。ん、君達の服変わってるね」

「えーっとオレ達遠くから来て文字が読めなくて」

「ああ。そういえば近々召喚の儀式をするとかって話を聞いたなぁ」


 意外にも情報が入っていた様子で、店主のおじさんが説明してくれる。

 子供達に協力するよう指示されていたのかもしれない。おじさんは親切にこちらの疑問について教えてくれた。もちろん全部がわかった訳じゃないけど店の品々の用途が知れて安心する。

 生憎、この店の商品は今すぐ必要になる物ではなさそうだ。でも薬屋の場所は教えて貰った。店を出て早速向かうことにする。


「親切な人でよかったね」

「うん。店の場所もわかったし行ってみよう」


 たまには勢い任せも役に立つな。前だったら躊躇していただろうけど。

 教わった通りに道を進み、言われた位置に店はちゃんとあった。中に入って確認すると間違いなく薬屋で安堵する。奥に店主らしいお爺さんが据わっていた。

 オレは緊張しながら話を聞く。広告紙を呼んでいたお爺さんは最初堅物そうで怖かった。けど、話しかけてみれば表情を崩して優しく教えてくれる。


「じゃあ薬より治癒魔法のほうが即効性が高いんだ」

「万能ではないけどね。軽い傷なら一瞬だよ」

「その治癒魔法ってわたし達にも使えるんですか?」


 王様から力を授かたんだけど、とつけ加えて説明した。

 お爺さんは顎髭を撫でながら難しい顔で応える。


「さあ、月の元素を操れるなら使える筈さ。なんなら占って貰うといい」

「占えばわかるの?」

「ああ。儂らは皆、子供の頃に占って貰ってるから」

「ならどこに行けば占って貰えますか」

「東門から町を出てまっすぐ進んだ所に精霊使いの森がある。そこの妖精族がやってくれるよ」

「妖精さんがいるんだ。会ってみないな」


 紡ちゃんは嬉しそうに頬を染めて呟いた。

 確かにこの手のファンタジーでは定番と言っていい存在だ。個人的にはドラゴンを見てみたいけど、確実に危険なので止めておこう。


「だけど町の外は闇の浸食が進んでるから注意するんだよ」

「はい。教えてくれてありがとうございました」

「別に構わんさ。それよりちゃんとメモは取ったかね? ここ文字が読めないんじゃあ、今渡した分しか売ってやれんですまんね」

「こっちこそ助かりました。紙とペンまで貰っちゃって」

「それにカバンも……」

「いいんだよ。気をつけて行きなさい」

「はい!」


 丁寧に頭を下げて薬屋を後にする。今度は東の門に向けて歩き出す。

 お爺さんは本当に親切だった。古いけどカバンまでくれて、薬代も少し負けても得たのだ。道中でお爺さんや入手した情報について話す。

 途中、道順の中にあった武器屋に立ち寄る。


 やっぱり子供用の武器は少なく、現状だとナイフしか買えなかった。他に買えなくもなかったけど、一度に支給金を使い切るのは避けたかったのだ。

 紡ちゃんは武器としてのナイフを持つのは怖いみたいで、購入したそれを今はオレが装備している。

 彼女のほうは軽くて丈夫だという杖を貰った。というのも在庫処分品で殆どタダに近かったからだ。初心者特典みたいな品物までおまけしてくれる。


 この町は東西南北に門があるらしい。

 教えて貰った道順で門前まで行き、門番の人に方角を確認してから外に出る。

 まっすぐ道を進んで行く。一歩町を出ると、辺りから恐ろしい気配が立ち込める。所々黒く変色したものが散見された。

 恐怖で震える身体を寄り添って堪えながら歩く。やがて前方に森が見えてきた。


「ここが精霊使いの森」

「奥が暗くてよく見えない」

「で、でも行かなきゃ。妖精に会えるといいけど」

「うん」


 せーので合わせた訳じゃないけど、一緒に森の中に足を踏み入れる。

 暗い森の中を慎重に行く。空が暗いせいか更に暗く感じた。別に夜って訳じゃないみたいだ。門番の人に聞いたら、降り注いでいた紋章の石の光が消えたせいだという。


 時間がわからないと困るので門番の人から時計を貰っている。

 もともと各門で配布される物らしい。数字も当然読めないのだが、幸いにして配列は同じなので大丈夫。今は正午を過ぎたくらいか。


「夕方になるまでに辿りつけるといいな」

「魔物、来ませんように……」

「大丈夫だよ。オレがついてるし逃げたっていいんだから」

「う、うん」


 情けないかもしれないけど、オレ達は勇者になれる器じゃない。

 第一に子供が勝てる相手なのかも不明だ。もしも大人が苦戦するレベルだったら……。


 怖い想像をして慌てて考えるのを止める。

 紡ちゃんが一緒なんだからオレまで不安そうにしちゃダメだ。

 から元気でも、やせ我慢でもなんでもいいから強気でいよう。声が震えるのを全力で堪えながら足を進める。ゆっくり離れ離れにならないように。


「まだつかないのかな。結構歩いたと思うけど」


 特に理由もなく呟く。隣で頷く気配がした。

 妖精族が住んでいる辺りってそんなに遠いのか。子供を連れてくるような場所なのに?

 それともとっくに通り過ぎているんだろうか。方向を間違えた可能性もある。どうしよう。引き返すべきか、このまま進んでいいのかわからないぞ。


「戻った方がいいの、かな?」

「どうだろう。オレにもわかんないよ」


 それ以前に誰もいないのはどういうことなんだ。

 静か過ぎて不気味過ぎる。こっちは肝試しに来たんじゃないのに……。


「いやぁぁぁっ! 誰か、誰か!!」


 静まり返った森の中に人のものらしき声が響く。


「フラグが立った……じゃなくて、行ってみよう」

「でも大丈夫なのかな」

「いざとなったら逃げればいいよ。お願い」

「わかった。行く」


 危ないことはしたくないが行かないと始まらない。

 そんな気がして、いや助ける声が聞こえれば向かうのは当然だ。

 自分達に何ができるか自信はないけど、見捨てられるほど冷めていない。2人で走って悲鳴の聞こえた方向に急行する。

 茂みを突っ切った先に複数の動く影を見つけた。


「グルルルッ」

「こんなにいるなんて。あっ、そこの人達……って子供!?」


 わっ、わっとこちらを見るや慌てた様子で手を振り乱す。

 隙に見えたのか獣っぽい影が飛びつく。危ないとオレは叫び、瞬時に察した少年が軽やかに突進を躱した。なんか凄いって思う。

 一瞬だったけど、ダボっと大きそうな上着の裾が翻って尾みたいのが見える。


 避ける時に素早く口を動かし、伸びてきた蔦で魔物の足を引っかけ転ばせた。そのまま蔦で1匹拘束する。もしかしてアレが魔法?

 少年はひらひらと軽やかに後退りオレ達の近くまで来た。でも微妙に距離がある。


「ねえ君達、一応聞くけど戦える?」

「えっ、あ初陣です」

「わたしも。こ、怖い」

「でも頑張るよ。紡ちゃんは後ろに――」

「わたしも……一緒に戦う」


 震えながら武器を構えて前を見据えた。

 正直怖い。今すぐ逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。

 でもこの先襲われることを考えると、戦えるようになったほうがいいと思う。


(けど具体的にどうすればいいんだ?)


 適当に振り回せばいいのか。いや、さすがに危ないよな。

 だからといって格闘技はおろか、剣道もやったことがない。スポーツで鍛えた運動神経でどこまでやれるだろうか。混乱しながらもオレは勢いよく駆け出した。

 突撃する時に声を出す。なんとなく、そのほうが動ける気がしたんだ。


「やああぁぁっ」

「――ッ」

「うわっ」

「危ない!」


 勇んでナイフを突き出したが避けられる。

 獣の俊敏性を目の当たりにし、迫る爪の餌食になると身体が強張った。

 メキメキメキッと音が聞こえる。思わず目をつぶっていたらしい。恐る恐る変えて見ると、襲い掛かろうとしていた数匹の魔物を植物が止めていた。紡ちゃんも必死に杖で攻撃している。


 それなりに痛いらしく、殺気だって吠える声に彼女は肩を震わし涙を滲ませた。

 オレは守るように前に移動してナイフを突き刺す。刃に血が滴り魔物は力尽きると消えた。ポタリと雫が刃から落ちる。震える手が握力を失いかけ、ナイフを落としそうになり我に返った。

 慌てて力を入れ直して落とさずに済む。呼吸を乱すオレ達に構わず残りの敵が暴れている。でも植物が邪魔していた。


「大丈夫?」

「あ……」

「馨君」


 言葉に詰まるオレと、か細い声で呼ぶ紡ちゃん。

 少年はこっちをみて何かを察したらしい。ちょっとごめんね、と一言入れてカバンの中からある物を取り出した。武器屋のおじさんがおまけしてくれた玉だ。複数個入りの袋。


 少年はその中から1個取り出して敵のほうに投げた。地面にぶつかった途端破裂音とともに煙が噴き出す。強烈な匂いだ。

 訳がわからず、むせるオレ達の手を引っ張って彼は駆け出した。



      ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦



 森の入り口近くまで戻ってくる。さすがにもう走れない。

 2人揃って告げるとようやく少年は足を止め手を離した。これを返すねと言い、ポケットに入れていた袋をカバンに戻す。

 俯いて息を整えるオレ達を彼は静かに待つ。時々周囲を警戒している風だった。


「ごめん。全然助けにならなかった」


 呼吸が安定してからオレは言う。少年は首を振った。


「そんなことないよ。逃げられたのは君達のおかげ」

「そっか。へへっ」

「でも、あの玉を持ってるの何で知ってたの?」

「だって君達初陣だって言ってたじゃない。武器持ってるし、町から来たんでしょ? なら武器屋のおじさんが渡してる筈だって」

「推理したってこと? けどもし持ってなかったら……」


 こっちの言葉に彼は首を振る。


「絶対渡してる筈だよ。魔物が出るようになってからは特に」

「スゲェー」

「凄くない。これでも町には何度も行ったことあるんだから」

「あの玉はなんだったのかな」

「アレは緊急回避用の香煙弾(こうえんだん)さ。魔物が嫌う成分が含まれてる」


 強烈な匂いがするから鼻が利く奴も後を追えない、と説明された。

 なるほど。そういえば、魔物に襲われて困った時に使えと言われた気がする。すっかり忘れてたよ。ついでに「君は持ってなかったの」と聞くと、少し前に使い切ってしまったらしい。


 苦笑交じりに言われ、改めて少年の姿に意識が向いた。

 第一印象からまさしくファンタジーだ。典型的な日本人顔の自分達とは明らかに違う。茶髪黒目のオレや、黒髪に焦げ茶目の紡ちゃんとは違い、彼の髪は青葉みたいな色で瞳は空のような薄い青。肌は褐色だった。

 服装は全体的にダボっとしている。裾の長い上着に大きな三角帽を被っていた。なんか昔のアニメに似たような恰好のキャラがいた気がするな。


「そうだ、名前。初めまして。わたし、望月(もちづき)紡と言います」

「オレは結城(ゆうき)馨。カオルが名前な」

「ああ、ごめんなさい。紡が名前です」

「ご丁寧にどうも。僕はターヴィス」


 ターヴィスはふわっと帽子をとって礼をする。

 その頭には猫のものによく似た耳が生えていた。おお、本物の獣人って奴か。


「獣耳……じゃあ、尻尾が見えたのは見間違いじゃなかったのか」

「もちろんあるよ。ほら」


 今度はひらっと裾を上げて尾を見せてくれる。

 こちらは狐か狼っぽい。ふさふさとしてボリュームがあった。


「なんで隠してるんだ。耳とか聞こえ辛くない?」

「全然。それにまあ、場合によっちゃ必要だからさ」

「あ、なんかごめん。いろいろ事情があるんだね」

「平気ヘイキ。気にしてないよ~」

「でも君、オレ達と同じくらいだよね。ちょっと年上かな?」

「歳? 僕は10歳だけど君達は――」


 ターヴィスがこっちをじっと見つめる。

 どのくらいだろうと想像しているのかな。向こうが答えてくれたしこっちも答えよう。


「オレ9歳」

「わたしは8歳です」

「なら僕がちょっとだけお兄さんだね」

「それで話し戻すけど、この世界の子供って今皆眠ってるんでしょ。大変だったんじゃ……」

「うん。だから一人でどうしようって思ってたんだ」


 じゃあ、彼の友達は皆眠っちゃっているのか。寂しいだろうな。

 明るく言っているけど、森の中、魔物の群れに1人で立ち向かっていたくらいだ。相当大変なことになっているんだろうと実感する。彼のこれまでを想像すると危機感が増した。

 自己紹介を済ませ、割と穏やかに話をしていたがふと思い出す。あっと声を上げたオレに2人が驚く。


「忘れてた。オレ達妖精に会わないといけないんだった!」

「あ、でも……」


 再び森のほうへ視線を向ける。まだ魔物がいるかもしれない。

 なにより時間がない。時計を見るともう夕方になりかけていた。今から入るんじゃ危な過ぎる。それに妖精のいる場所までたどり着くかどうか。


「君達、妖精に用があったんだ」

「うん。占って貰いたくて」

「なるほどね。でも行かなくて正解だったと思うよ」

「どうして?」


 聞き捨てならない言葉を聞き問い返す。

 すると彼は急に焦り出し、言い辛そうに小さく言う。


「今は、皆動ける状態じゃないから……」

「それってまさか」

「違う! 全滅とかそういうんじゃないの。本当に」


 慌てて弁解するような発言をしてくる。

 それが逆に不穏で仕方ない。確かに悪い想像をしてしまったけども……。

 雰囲気からして詮索しないほうがよさそうだ。話したくはないみたいだし、今の自分達には紋章の石を探すほうが重大だ。アレもコレもとやれるほどの余裕はない。


「でも困ったな。占って貰わないと元素の相性がわからないし」

「どんな力が使えるのかわからないって不安だもんね」

「うん」


 2人して先行きの不安に気落ちする。

 そんな調子でいるとターヴィスが割って入るように口を開く。


「心配しないで。占いなら僕がやってあげるからさ」

「え?」


 顔を上げ、声を揃えて言った。驚くというよりは呆気にと垂れた感じ。

 今、目の前の少年は何と言ったのか。占えると言ったんだよな。でも占いは妖精がしてくれるものだって聞いた。でも彼の容姿はどう見ても妖精とはほど遠い。服以外は。


「もしかして疑ってる?」

「だって占いは妖精が……ひょっとして妖精以外にできるものなのか」

「ううん。元素の相性占いは妖精の特権だよ」

「だったら」


 彼は違うという風に首を振った。


「じゃなくて、僕は妖精なのさ。正確には獣妖精だけど」

「ええっ!?」


 これまた随分と大きな妖精がいたものだ。

 あ、いやでも物語によってはいるか。だけど獣妖精って――。

 随分と都合のいい展開に疑いたくなるが、ここは運がよかったと強引に納得することにした。紡ちゃんを見れば彼女も驚いている様子だ。

 思考が落ち着いてくるともう1つ思い浮かんだことがある。占いとは別の案件で。


「でさ、条件って訳じゃないけどお願いがあるんだ」

「実はオレも。その前に紡ちゃん、ちょっと耳貸して」

「なに?」


 オレは内緒話をするみたく耳打ちした。小声でそっと。


「あのさ、悪いヤツじゃなさそうだし仲間にできないかな?」

「うん。わたしも思ってた。歳も近いし……」

「だよね。大人の人よりは接しやすいかも」


 どうかな、と問いかけると彼女は頷く。

 賛同を得られてほっと安堵しつつターヴィスに向き直る。律儀に待っていてくれた彼に意を決して切り出す。


「条件はもちろん聞くけど、できたらオレ達の仲間になって欲しい」

「あーソレこっちの台詞。一人で困ってのは僕のほう。だからお願い、仲間になって!」

「じゃあ条件って」

「先越されちゃったけどね」

「なーんだ。もちろん構わないよ、ね?」

「うん。よろしくお願いします」

「こちらこそ」


 嬉しそうに笑みを浮かべる彼につられてオレ達も笑う。

 こうして異世界の住人である少年が旅の仲間に加わった。こんな幸運、本当にファンタジーみたいだ。まるで主人公になったみたいな展開続きにひっそりと心が躍る。


 話はまとまったとターヴィスが入口の樹木に手を当てて念じた。

 不思議に思いながら静かに待っていると、上から大きなリュックが降ってくる。それを彼がキャッチした。パラパラと木の葉が舞う。

 どうやら彼の持ち物みたいだ。けれど……。


「なんで上から。木に引っかかってたの?」

「でもこの辺にあるのはおかしくないかな」

「そっか。じゃあ、やっぱりなんで……」

「へへ、驚いてる。まあお願いして持ってきて貰ったんだよ」

「そういえば植物を操ってたよね。こんなこともできるんだ」


 なかなか器用なものだ。そして彼の荷物の中身は日用品が詰まっていた。

 テントみたいな植物も作れるみたいでとても準備がいい。宿に泊まるお金の心配をしていたからこれは助かる。いつ必要になるかわからないし、残っているお金は節約しておきたかった。

 なのでオレ達は森を出たすぐの所で野営をすることにする。教えて貰いながら準備を進めた。

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