悪役令嬢も、大変です
時は朝。
雀が鳴き。
晴れやかな日差しが、差し込む。
そして、悪役令嬢と言う、いつもの朝。
「あなた、バール様に、失礼な事を、したと言うのは、本当なの」
昨日の事を、さっそく聞きつけてきたらしい。
リナ・エバンスお嬢様。
「えっ、何の事でしょうか。昨日は、先生の、方達に、叱咤激励を、頂いただけで、御座いますわよ」
昨日の内容は、まとめると、成すべきを、為せとのことに成るのだから、間違ってはいない。
「嘘を、おっしゃいなさい。あなたのせいで、バール様が、叱責されたのは、明白なのですのよ」
まあ、そう成るのは、当然の結果なのでしょうね。
「ふーん。そうなので、ございますか」
「とぼけないで、あなたには、貴族への、敬意が、根本的に足りないのですわ。庶民なら、然るべき、敬意を、払うのが、義務だと言う事が、解っておりますの」
貴族への義務なんて、全く払う気は無いのだけど。
これが、この世界の普通なのでしょうね。
「そうなので御座いますか、わたくし、庶民の、生出なので、無作法が有ったのでしょうか」
しらじらしとは、私も思ってますけど。
「庶民ゆえの不作法ですって。あなたのやった事は、その範疇を、とっくに超えていますわ。自覚なさい」
そうなのでしょうね。
でも、まあ、良いのでは無いのでしょうか。
実害ないし。
「何ですの。その一欠片ほどの、反省の無い態度は」
ええ、まあ、その通りですけど。
「ええ、そうなのでしょうか。それは、誠に、申し訳ありませんと、私が、申し上げれば、よろしいのでしょうか」
長めの台詞の、間に、一、二、三歩と、歩みを進める。
この位置は、中々よろしくない位置なので、少しばかりの修正をして、ご令嬢の、周りを、四分の一回転ほどした。
そして、斜に構えて、微笑む。微笑む。
「あなたは、いったいなんですの」
ご令嬢らしい、エレガントな物言いで、少し怒気を、はらませる。
予想通りの、展開に、少し愉快になる。
「リナ・エバンス様」
ご機嫌な声音で、問いかけるように、話す私。
「なんですの。あなたは」
ご令嬢の、一言の、瞬間。
私は、一歩踏み出す。
そして、額が、触れる寸前まで、顔を、近づける。
驚いたご令嬢が、一歩下がる。
「何を、なさいますの」
同じ手に、二度も引っかかるなんて、あなたが、悪いんですよ。
私は、躊躇無く、ご令嬢の肩を、突き飛ばした。
その先に居たのは、私に文句を言いに来た、バール・セティー公爵子息が、居たのだ。
「きゃーーっ」
可愛い悲鳴は、その背を受け止めた、柔らかな物に、受け止められて止まった。
「おまえ、何をやっている」
一度ならず、二度までも、凶行に及んだ、私を、バール様は、非難する。
自分を、受け止めた、何かを、振り返り、リナ様は、それを、理解した。
「バール様」
密やかな声で、そうつぶやくと、体温の上昇を、感じ。その顔を真っ赤に染めた。
その後に、こう告げた。
「ごめんなさい」
何が、ごめんなさいなのか、いまいち、解らないが、その後に、逃げるために、駆け出そうとした。
だが、逃がすものかよ。
私は、素早くご令嬢の、足を引っかけて盛大に転ばせた。
「きゃっー」
またもや、可愛らしい悲鳴を、上げて、盛大に、転ぼうとしたリナ・エバンス嬢の、片腕を、バール様が、捕まえた。
右手で、左手を、捕まえて、引き寄せたので、リナ様は、半回転して、バール様と、見つめ合うことに。
だが、勢いは、止まらずに、二人とも転んでしまい、その結果、バール様は、リナ様を、押し倒したような、格好に成ってしまった。
その様子を、見た女子三人組が、口元を抑えて、悲鳴を、上げそうになる。
そのレディー達に、私は、ウインクをしながら、口元に人差し指を、あてがって、沈黙を、誘い出した。
幸いなことに、レディー達は、私に気づいてくれた。
その瞬間、周りの全ての人間たちが、空気を読んで、沈黙を維持した。
「すまない、リナ。大丈夫か」
本当に、すまなそうに、バール様は、問いかけた。
「はい。大丈夫です。バール様」
顔を真っ赤にして、リナ様が、答える。
「立てるか」
「はい」
バール様は、リナ様の、手を取り、上体を、立ち上げる。
手を引かれて、ちょこんと、座り込んだ、姿は。
まるで、一輪の花の様に、愛らしく、可愛かった。
バール様は、立ち上がり。
身なりを、整えると、バール様は、手を差し伸べて、一言。
「怪我が、無くて良かった」
「はい、だいじょうぶです」
リナ様は、バール様の、手を取り。
鮮やかに、立ち上がった。
「本当に、怪我がなくて良かった」
私が見たことのない、最高の笑顔で、バール様が、微笑む。
そして、私が見た事が無いほどに、体温を上昇させて、真っ赤なお顔で、リナ様が、お答になった。
「ありがとうございます。バール様、その、あの、えーっと、すみませんでした。わたくしは、わたくしは、・・・・・・」
その時に限界が、来たのだろう。
真っ赤になった、顔を、手の平で、覆い隠して、逃走した。
ポカンとする、バール様。
お嬢様、セリフを、全部言えてないぞ。
そして、三人のレディー達が、感極まって、黄色い悲鳴を上げる。
それを、聞いて、バール様は、はじめて、現実に、引き戻されて、その頬を染めて、その場を立ち去った。
ふっ。
これで私は、御咎め無しですね




