とうぜんのことですが、・・・・
私は、悪びれもせずに、ニコニコしながら、平然と座っていた。
公爵家の、子息を、罵倒したので、当然、呼び出された。
教師は、三人。
私の前に並んで立っている。
取り囲まれないだけ、ましな状態である。
「君が、貴族に対して、著しい非礼を、働いたとの、報告が、届いている。間違いないかね」
その教師の、眉間には、毎年送り込まれて来る傍若無人、無知蒙昧な、新入生たちによって、深くえぐり込む様に、ついたシワが、刻まれていた。
「まあ、私が、何か失礼な事を、いたしてしまったのでしょうか。私は、庶民の、生まれですので、気づかず、そのような事を、しでかしてしまったのなら、大変、申し訳なく思います」
如何にも、しおらしく、けなげに見えるように、平然と言ってのけた。
素直な謝罪を、耳にして、教師たちは、態度を、軟化させた。
「ふむ、君には、覚えが無いと言う事かね」
「いいえ、私が、思い及ばず、その様な印象を、招いてしまったのらな、深く謝罪をしたいと、願います」
「成程。だが、君の言う通り、思い及ばずに、悪意を招いたのなら。君にも、反省すべき点はある。以後、自重し、自らの、向上に、勤めたまへ」
「はい、そう願い、向上いたします」
「では、帰りたまえ、以後、重々、自重したまえ」
「はい」
頭を下げて、退出しようとする。
「待て、その者の処分を、その程度で、すますなど。許せん」
奥の扉から、バール・セティ様が、登場した。
チクったの、あんたかい。
「バール殿。ここには、入ってこないように、申し上げたはずですか」
もうすっかり諦めたような、単調な、もの言いで、もう一人の、教師が、たしなめる。
「だが、この結論には、納得がいかん」
教師が深いため息をつく。
でも、私は、言葉を、紡ぎ始めた。
「バール様。あなた様の、お心を、乱してしまい、申し訳ありません。ですが、下賤な、わたくしでは、どのように、お心に、触るような事をしたのかが、解りません。もし許されるのであれば、その事をお教え頂けないでしょか。」
ふっ。
言ってやったわ。
さあ、返してきなさい。
どんな言葉であっても、叩き潰して差し上げますわ。
「それは、・・・・・・・。うるさい、お前が悪いんだ」
は?
何言ってるんですか、この人は。
頭の中で、思考が一巡する。
ああ、こう言う人だったな。
この人にとって、貴族とは、彼の父上の様に畏怖される存在でなければ、成らないのだ。
恐れ、敬われる。
それを、この様な、小娘に、あのような事を、言われたのだ。
本人にとっては、恥辱に値する大事件なのだ。
うわ、めんどくさ。
「それに、証人も、何人もいる。罪状は、明らかだ」
それを、聞いて、私の脳髄が、ピクと、反応する。
素早く言葉が紡がれる。
「バール様、民の声を聴き、それを反映しようと言うのですね、素晴らしいですわ」
心からの賛辞を、バール様に送った。
だが、バール様は、奇妙なものを見るように、私を見て言った。
「民の声を聴く。何を言っている。私が言うのだから、私が正しい。民の声など、聴く必要はない」
一瞬、何を言ってるか、解らなかったが、想像以上に、この人ダメだわ。
そして、その時に、血管を浮き立たせて、怒れる三人目の教師がいた。
沈黙の中の、決意と信念に、火が付いた。
「バール殿、こちらに、来てください」
「何の事だ。早くこいつを、処分しろ」
「公爵に、連なるものが、安易に、声を荒げてはいけません」
三人に、囲まれて、隣の部屋に連れて行かれるバール様。
「君も、もう行きなさい。そして、為すべきものを、成しなさい」
そういわれて。
「はい」
そう答えた。




