その悪女は、・・・・・・・
一人、トボトボと、魔法学園の、門に向かって歩いている。
友達は、いない。
そこら辺の、町娘にも負ける最弱のスペック。
あまりに、身分が、低すぎて、異例の存在。
能力も、スライムにすら勝てない状態。
作業ゲーの、経験値は、ここでリセットされてる。
ああ、なんかモブたちの嫌味が聞こえてくる。
「なんで、あんな子が、学園に」
「私の、学年に、よりにもよって、あんな庶民とも言えないよう者が居るなんて」
ボソボソ聞こえる。有象無象な、ヒソヒソ声。
シナリオ通りなんだけどね。
学園の門を、くぐり抜けると、自分の場違いさに、気がつく。
白亜の宮殿のような、校舎。
チリ、一つ落ちてない歩道。
良く手入れされた、庭木たち。
周り全てが、自分より格上て、何だかやだな。
プレッシャー。
でも、しっかりと、おのぼりさんしてみる。
あちらこちらを、キョロキョロと、せわしなく見回す。
すると、何かに、ぶつかって、後ろに、尻餅をつく。
何もないはずの、道ばたに、いったい何が、有ったのかと、見上げれば、一人の男が立っていた。
ああ、そうだった。
最初の攻略対象に、ここで会うんだった。
「何だ、おまえは」
偉そうに、私を見下ろす。公爵家子息が、立っていた。
バール・セティ。
貴族至上主義の、駄目男だ。
私は、立ち上がり、埃を、払い。
「お初にお目にかかります。私は、・・・・・・・・」
しまった、原作者が、まだ、私の名前を、考えてない。
「えーと、わたしは」
原作者、考え中。
「私は、イリム・セルファーと申します」
「ああ、あの庶民の、生徒か」
慇懃無礼に、見下してくる態度。
これが、このゲームのレベルなのである。
乙女ゲームに、あるまじき、無礼ぶり。
でも、私は、庶民と言うよりも、農奴に近いんだけどね。
御貴族様には、それすら解らないのでしょうね。
「はい、そうで、ございます」
「おまえなどに、用はない。さっさと去れ」
「はい、解りました」
はい、これでお終いと言う所に。
「あなた何してますの、バール様に、話しかけるなど、無礼にも、ほどがありますわ」
悪役令嬢の、ご登場だ。
この娘は、バール様には、何も言えないくせに、私には、ぐちぐちと、嫌味を言ってくる。
バール本人の前では、恥ずかしくて、縮こまってしまう。
要するに根性が、無いのだ。
去り際の仕草を、整えて、彼女の正面に立つ。
そして、
乙女ですらも、頬を、赤らめるほどの、今後、二度と無い、最高の、笑顔で、微笑む。
リナ・エバンス伯爵令嬢が、その笑顔に、見とれた瞬間に、イリムが、令嬢の、背に、回り込む。
「ええーぃ」
伯爵令嬢様の、背中を、思い切り突き飛ばす。
「きゃっ」
可愛い悲鳴を上げて、バール様の胸の中に倒れ込む。
それを、しっかりと、受け止める、バール様。
おお、さすがにやるね。
「おまえ、何をしている」
ご令息の、罵倒の後に。
私は、小走りに駆け出す。
そして、一言。
「バーカ」
そう捨て台詞を残して、走り去る。
走りながら、クスクスと笑う。
その姿に、呆然と見送る二人だった。




