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ジェロード王がガゼボから去った後、私とエドワードはそのまま座って景色を眺めていた。

エドワードが立ち上がらないため私も何となくその場にいたが、彼はテーブルに肘をついてだらしなく座っている。

それでも絵になるのは美形だからか王子様だからか。

隣に座る私は景色を見るふりをしてエドワードの姿をじっと見ていた。


良く私と遊んでくれていた時は私が4歳彼は10歳だっただろうか。

あの頃から、綺麗なお兄さんだなと思っていたが彼は今30歳になっても綺麗なお兄さんのままだ。


エドワードは周りを見渡した。

ロスペール王が去った後、監視役の侍女と兵士が居なくなっているのを確認しエドワードが口を開いた。


「ねぇ、マリエル。僕の髪の色は金色で青い瞳でしょ」

「はぁ、そうですね」


私は愛しても居ない人と結婚させられ、今後の未来について夢も希望もないと絶望的な気分になっている時にエドワードの髪の色の話をされて私は適当に相槌を打つ。

確かに彼の髪の毛は金色だ。


「これは父と母もどちらも金髪だから当たり前だと思っていたんだけれど、妹のエルシャが生まれた時に白に近い銀髪に紫色の瞳で凄い驚いたんだ。そしてなんて美しいんだろうと思ったね」


「はぁ、そうですか」


また妹大好きな話かと、適当に相槌を打つ。


「エルシャの髪と瞳は遠い先祖の血が突然出たってことで僕も両親もすごい驚いてね、もっと驚いたのはエルシャと同じ年の子で同じ髪の色と瞳をした遠い親戚が居ると知った時だよね。母と父がぜひ二人を合わせたいと言ってこの城にマリエルが来たんだよね」


「そうだったの?」


どうしてエルシャとエドワードと会うことになったのかまでは知らなかったので驚きだ。

エドワードは懐かしそうに庭を見て薄っすらと笑っている。


「マリエルを見た時は妹と同じ髪の色と瞳でとても綺麗だと思ったよ」


どうせ、エルシャの方が綺麗だったのだろうと思うが私は頷く。

エドワードは隣に座る私の瞳を覗き込んできた。


「よく見ると、妹とは全く違う色をしているよね。そんなマリエルが可愛くてね。マリエルも昔は僕にすごく懐いてくれていたと思うんだけど」


「幼かったから」


そう言いつつ、エドワードは本当に優しく私に接してくれた。

綺麗なお兄さんに優しくされたら、それは懐くのは仕方ないと思う。

4歳だったにもかかわらず、大好きになった。


エドワードは私に手を伸ばし腕を掴むと引っ張った。

強く引っ張られ私の体がエドワードに倒れ込んでしまう。

そのまま力強く抱き込まれた。


「昔、僕の膝の上に乗ってこうやって良く話したよね」


エドワードの暖かい胸の中は昔と同じように落ち着く。

あの頃はエドワードが大好きで、いつか結婚すると思っていた気がする。

あの頃は?


違う、私は今も彼と結婚したいのだ。


懐かしい彼の胸の中で昔と同じ想いになる。


「昔は、僕と結婚してくれるって言ってくれてとても嬉しかったよ」


「昔だもの」


今も私はエドワードと結婚したい。

会わなければ思い出さなかった遠い思い出。

それでも、24歳になる今まで気になる人の一人もできなかったのは、エドワードを忘れられなかったから。


王子となど結婚できるはずがないじゃないと自分に言い聞かせて封印していた思いが膨れ上がり、優しくされると辛くなる。

エルシャの代わりに私に優しくしてくれるの?

憐れんでいるの?


涙が出そうになり、エドワードの胸に顔を埋めた。

エドワードが私の首筋に顔をうずめた。


「昔に戻れたらいいのに・・・」


エドワードの呟きに私は頷いた。


しばらく抱き合って、エドワードは私を放した。


「さ、そろそろ戻ろうか」


昔のようにエドワードは私の脇に手を入れて立ち上がらせると、来た時のように私をエスコートして歩き出した。




城の廊下をエドワードにエスコートされながら歩いていると、上機嫌なロスペール王が前から歩いてきた。


「おぉ、お前たち。良くやってくれたな。ルドル国王がエルシャとの結婚に了承し早く式を挙げたいと言ってくださったぞ」


「そのようですね」


エドワードも珍しく微笑んで、ロスペールに頷いた。


「一月後、ここで式を行う。ルドル国王は質素で構わないということだからドレスだけでも用意してやろうありがたく思え。エルシャ」


偉そうに言うロスペールに私は頭を下げた。


「叔父上、ドレスは僕がプレゼントしてもいいですか?妹のように可愛いがっていたエルに最後のプレゼントを贈りたいのです」


エドワードの言葉にロスペールは鼻で笑った。


「そうだな、私も忙しい。エルシャに付ける従者と侍女やら選ばないといけないからな」


そう言って忙しいいと呟きながら去って行った。


「叔父上は、ルドル国に自分の部下を送り込むのに忙しいらしい」


微笑みながら言うエドワードだったが目はロスペールを睨みつけていた。




エドワードに部屋まで送ってもらい、一人になりベッドの上に座る。


封印していたエドワードへの想いを認識しため息を付く。


会おうと思えばいつでも会うことはできた。

それでも会わなかったのは、恋だと認識するのが怖かったから。


この国の王になる人を好きになっても実るはずがない恋ならば忘れた方がいい。

関わらない方がいいと思い過ごしていたのに。


20年ぶりに会っても、恋心は変わらず昔より愛しく思う。



「ドレスなんていらない・・・」


愛しい人から貰ったドレスで、愛しても居ない男と結婚するなんて辛すぎる。

両親の安否すらわからない。

ここから逃げ出すこともできない。


あふれ出る涙を乱暴にぬぐってベッドへと潜った。







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