2 ウィスプ
逃げる!逃げる!枝や葉っぱを避けながら。ネズミは、完全に振り切っただろう。
さすがに疲れた。
とはいえ息切れや身体の痛みなんかはないけど、疲れたような気がするだけだ。
意外に速く移動出来た、結構進んだはずだけど、まだ相変わらず森の中だ。
もう大丈夫だろうと、気を取り直したところ、チョロチョロ音がする。
まわりを気にしながら音のする方へ近づいて行ってみると、岩の隙間から水が流れていた。
水たまりに近づいて行くと、ほんのり光っている丸っぽい姿が水面に映っていた。
うん。予想通り、オーブって言うか、ぼんやりした火の玉だよな。
だけど、火の玉って何?
輝く魂か、 さすがに参考になりそうな知識は思いつかないな。
落ち着いたら、試してみたいことがある。
ステータスは見られるのか?
やっぱり気になる。
『ステータス、ステータス』‥‥
『ステータスオープン』
はい、何もおこりません。恥ずかしさだけが残りました。
ちょっとくらい何かあってもいいんじゃないかなぁ。
とりあえず、気を取り直して
俺は、ウィルオ-ウィスプ ってことにしよう。
ほか知らないし、火の玉よりはいいよね。
ウィスプって、妖精だっけ?精霊かな?
妖怪や妖魔は嫌だなぁ、精霊がいいな、
よし、精霊ってことにしとこう。
そう言えば少しずつ暗くなってきてるな、
日が暮れてきたのかな?
夜は、どうするかな、この身体の良いところは、暑い、寒いや身体の汚れも気にならないところだな、
『ん?痛い!? 痛だだだっ』
なんだ!?虫、蚊、細かい虫が突っ込んでくる!イテテテ!?なんで虫が?俺が光ってるからか?
イテッ!来るな!ぐわっ!まとわりつくな!
身体中に細かい虫どもが次々よってくる!
来るな!死ね!死ね!消えろ!
どうする!どうする?燃えろ!燃えろ!
バチバチいいながら虫が燃えだす。
これは、魔法か?俺、魔法使ってる?これなら、なんとかなるか?
バチバチ燃やしてたら、いきなり凄く疲れてきた。ヤバい魔力が減ってきたか?
どうする!どうなる!ぐわっ!
このままじゃ不味い!
『ドレイン』 『吸収』
虫どもが、パラパラと灰になって消えていく、なんとなく身体の中が温かくなってくる。
成功か!
『ドレイン ドレイン』 『ドレイン』
近づいてきた虫が、パラパラと灰なって消えていく。成功して良かった。
少しずつ余裕が出てきたと思ったら、カナブンやモ○ラのような極彩色の蛾が飛んできた!避ける、避ける、で、『ドレイン』
よし、効いてる、効いてる!クソッ来るな!
てか、虫、デカ過ぎ、これじゃ蟲の魔物だ!? なんで、こんなに集まって来る?
俺の身体が、魔力の塊で、光ってるからか?
まぁ、考えるのは後でいいか、ん?重い羽音が響いて来る?黒いかたまり、
『うわぁ!ゴキ○リ!?』
黒い弾丸が迫って来る!
『いや-!ふざけんな!』
嫌だ!嫌だが、燃えろ!『ドレイン』とにかく来るな!死ね!消えろ!
気がつくと襲撃は終わっていた。いつの間にか明るくなっている。
途中から、ほとんど記憶がない。周りには、かなりの数の蟲が散らばっている。まだピクピク動いている蟲もいる。ここは、まず
止めを刺して行く。
純粋な興味だが、蟲でも魔物なら魔石があるのかな?魔力を集中してみると蟲の中に反応があった。
身体を伸ばして、関節部の薄いところを刺し貫いて魔石を吸収した。オゥ! 美味しい、もちろん味覚はないけど、美味しく感じる?美味しく感じるのは魔力なのだろう。
認めたくないけど、ゴ○ブリが、ちょっと美味しい。ほかの蟲もどんどん吸収していく、なんか嬉しい。
かなり吸収して、一息ついたら、ちょっと試したいことを思いついた。
蟲の中に生きている羽のある蟻が数匹いる、その中で、一回り大きな蟻の頭に、身体を伸ばして魔力を少しずつ流してみた、なに考えているんだ?‥‥この蟻は、巢を出たばかりの新しい女王蟻のようだ、ほかはオス蟻みたいだな。
こいつをテイム出来たら、隠れ家を作れるな、また蟲に襲われるのは嫌だ!
でも、テイムってどうするんだ? 魅了か服従か、うまく言うことを聞かせるようにするか、
弱った女王蟻に魔力を流しながら、俺が味方で言うことを聞くように暗示をかける。
うまく出来るかな?
女王蟻が起きだした、『起きたか』
ギギッ 『おまえは、俺に負けたな。だが、俺は、おまえと仲間を助けよう』
ギッ 『代わりに俺の言うことを聞け』
ギギッ 『わかったか、それじゃ夜までに俺が隠れられる丈夫な穴を掘れ』
ギッ 『ほかの蟲に見つからないように、あとは好きにしろ』
ギギッ わかったようだ。
ほかの蟻にも魔力を流していく。
起きだした蟻は、女王蟻を先頭に去っていく。
魔力を流した蟻は、なんとなくわかるから夜までに合流しよう。
もう、蟲に襲われるのは避けたい。