sg17
最終回です。
連載開始からこれまで、間隔が空いているので、また、最初から読み直して頂けると、より楽しんでいただけると思います。短めの話ですし、難しい言葉を使っているわけでもないですし、あくまでもお笑いなので、サラッと読んでいただけると思います。
プロレス、格闘技に興味をもっている方であれば尚更に。全く知らなくても問題はないです。
☆5つの評価を頂いているので、多分、読者の方にとっても面白いんじゃないんでしょうか。
ゼニニッポンプロレス最高幹部専用ボックスシートに二つの影があった。
小柄な男が言った。
「どうやら、“踏絵”は踏めなかったようですね」
「やれるとしたら、彼しかいなかったろうがな」
眼鏡の男が言葉を続けた。
「昔から、最も近いところから見ているが故に、可能な限り我々の創り上げた“神”のイメージと虚飾を排して現実を見ることが出来る男。過去の絶対的な実力を知り、比べ様もなく衰えた現在を知り、今ならば、相対的に打倒し得る力量をもつことがわかる唯一の者。実質、現在のゼニニッポンナンバーワンの実力者、もう一人の超人、チョンボ・ヅルダ。だが、彼も倒すことは出来なかった。我々の予想通りに」
「これで誰もジャイアントを倒せる人はいない。そういうことですね。少々、“踏絵”の方が傷んでしまいましたが」
「まったく予測が出来なかったわけはないさ。だから、予めリングマットを十分に弾力のあるものに替えておいたのだ。十年前の失敗を教訓にな。あれは、興行面以上に我々の計画に影響を与えたからな」
「それでも、少々傷みすぎたのではないですか?」
「かもしれないが、あのくらいなら大丈夫だろう」
「でも、それなりに得るものはありましたね」
「ああ。人民の神に対する信仰心をこれまでにも増して明確なかたちで窺うことが出来たし、なによりも今日は、ヅルダが我々の考えていた程度には賢明な男だということが立証出来た。忠実なことは分かっていたがな」
「それにしても」
小柄な男が言った。
「喜劇を演じる祭り上げられた神と、それを観て涙する愚かな人民。この絵は末期的な悲劇そのものではありませんか?」
「だれも悲劇とは思っていないさ。喜劇を喜劇として観ることに出来る者が、気紛れにでも、そんなことを考えない限りはな」
眼鏡には眼下の人民の熱狂が映し出されていた。
「下を見るがいい。この国の人民は支配され服従することに喜びを感じているのだ。崇め奉る存在が不可欠なのだよ。我々は皇帝に替わるに相応しい新しい神を人民に示してやった」
「まあ、神を信じる者にとってはそれがなんであろうと神に違いはないのでしょうが。不摂生の隠しようもない髭面の俗物よりは、我々の“意思”が介入せずとも、額ずきたくなるような威厳とカリスマに満ちた超人の方が、ずっと神には相応しいですからね」
小男は冗談ぽく言った。
「我々は高級官僚であるとともに、いわば高位の聖職者なのだ。すべての権力が集中するのは必然であり、導いてやっている者に対する当然の報酬だ」
眼鏡の男は小柄な男の方を振り向いた。
「神は遥か天上にいて、ただ下界を見下ろしておればよろしい。葉巻に混ぜた薬物と、哀れな愚民のために自らがすすんで負ったダメージにまみれ、リングの上で踊っていればよい。地上の権力は人間に与えておけばよいのだ。神を仕立て上げ、神の存在を知らしめた、神の最も近くに仕える者にな」
男達の口元に笑みが浮かんだ。
ゼニニッポンプロレス。本来はただの一プロスポーツ団体。だが、国営であるはずの全マスコミを、それどころかあらゆるものを統べ、人民に絶大の影響力をもつ存在。焼け野原から屹立した公とも私ともつかぬ超巨大企業。この国を支配する巨人。
よろこんでいただけましたでしょうか?
最後までつきあって下さいましてありがとうございます。
実は続編の構想も御座います。拙作『悲鳴』にちょろっと書いてあります。興味がある方はそちらも眼を通してやって下さい。できましては、他の投稿作品にも眼を通していただけると嬉しいです。欲を言わせ頂ければ、是非とも感想なども書いて頂ければ。励みになりますし、今後に役に立ちます。
では、また別の作品でお目にかかることを楽しみにしております。
追伸 ねえ、知ってた? 『スーパージャイアンツ』って、今のところ三部まで構想があるんだって。こんなパンイチのオッサンしか出てこない、男臭いのまだ続けかねないんだよ。かと言ってBLだって枯れ専だって手ださねえよ。こんなの。作者バカじゃねえの? こんなのにどうやってかわいい美少女登場させんだよ。ハーレムつくんだよ。喜び組か? そんなの共感されねぇって。せめて異世界に転生させろよな。




