sg16
プロレス・コメディです。
今回も含めてあと2話で完結です。
次話ラストにて3人目の巨人が登場します。
プロレス・ブラック・コメディと化して終了します。
「そんな、完璧な手ごたえだったのに・・・」
チョンボは感動のあまり泣き出しそうになった。
「すごい・・・・・・。
やっぱり、すごい・・・・・・」
人民は沸騰する。
チョンボは胸が一杯になった。拭っても、拭っても、止めどなく涙が溢れてきた。
「・・・すごすぎる・・・・・・」
全人民も泣いていた。
ジャイアントは立ち上がった。
滲む視界の向こうから、“あの方”がふらつきながらも、確実に近づいてくる。
ジャイアントはすがるようにして、チョンボを捕まえると、そのままロープに振った。残る力を振り絞り、ジャイアントも逆サイドに跳ぶ。
「いっしょだ」
涙声で呟くチョンボ。
「あの時といっしょだ」
十年前、ジャイアント・パパ対チョンボ・ヅルダ。この時もジャイアント、信じられないことに、必殺のバックドロップを喰らい、瀕死の重傷を負いながらも立ち上がった。そして、勝った。この試合を決めたのが、プロレスの神様の誇る超必殺技だった。
三十二モンニンゲンロケットホウ。ジャイアント・パパ最大の超必殺技。ジャイアント以外のレスラーが撃てば、ただのドロップキックに過ぎないが、彼が放つ場合のみ、その足のサイズの巨大さとカリスマ、その威力故に、このような特別の名称を冠され、超必殺技として認知されているのである。
ジャイアントがこの技を披露したのも十年ぶりのことであった。
チョンボにこの技をかわす理由はない。むしろ、見入られたように三十二モンに引き寄せられてゆく。
全盛期と比べれば、高さにも、角度にも、スピードにも欠ける。だが、それでも、あらゆる強豪レスラーをノックアウトするだけの破壊力はまだ十分に持ち合わせている。
チョンボは見事にこの技を喰らった。感涙にむせびながら、大の字になって倒れる他にはなかった。
マットに着地したジャイアントに、もはや体力は残っていなかった。が、それでも巨人は勝利に向かって邁進する。産卵に臨むウミガメのようにリングを這う。
人民の誰もがジャイアントに声援を送っていた。
やっとの思いで、ジャイアントはチョンボに覆いかぶさった。
レフリーがすぐさまカウントにはいる。
「ワン、ツー、スリー」
ゴングが打ち鳴らされ、歓声とともに、試合は終わった。
レフリーが、元タッグパートナーを助け起こし、その手を高々と掲げた。ケン・ウスイの目にも光るものがあった。
万雷の拍手。いつまでも鳴り止まない。こうして、九回目の師弟対決は決着した。公式記録は二十四分四十五秒、ザ・ウルトラ・スペシャル・グレート・スーパー・ジャイアント・パパが、超必殺技・三十二モンロケットホウからのカタエビガタメによって、チョンボ・ヅルダを降したのである。
勝ち名乗りを受けたジャイアントは、まったく表情を変えないまま、その場に崩れ落ち、そのまま病院に担ぎ込まれた。
ではまた次回。
3人目の巨人・・・。予想通りかもしれませんが。




