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スーパー・ジャイアンツ  作者: 荒馬宗海
14/17

sg14

今週から基本土曜日に投稿させて頂きます。

日曜日の場合もありますが。


こんな夜中に果たして読んでくれる人なんているんでしょうか?


とりあえずどうぞ。

 ちょうど十年前、やはりバックドロップはジャイアント・パパをとらえた。この必殺技の凄まじい殺傷力こそが、不敗の巨人を失神KO寸前まで追い込み、療養に八年を要するダメージを与えてしてしまったのである。

 十年前の大事件は、チョンボにとって、二重の意味で負い目となった。一つは、言うまでもなく、ジャイアントに甚大なダメージを与えてしまったという罪悪感。もう一つは、人民から、ジャイアントの闘う姿を見る機会を奪ってしまったという申し訳なさであった。

 あれから十年を経て、再びバックリドロップが火を噴いてしまったのである。

我に返った時には既に後の祭りだった。

 足元に、あの奇跡のタフガイが転がっていた。しかも、微動だにせずに。受けた技の威力を如実に反映してやることによって、対戦相手のさらなる実力を引き出してやるというという意図が、そこには欠片も存在していないことが明白であった。

 チョンボは凍りついた。

(な、なんてことを・・・、なんてことをしてしまったんだ・・・・・・)

 目の前が真っ暗になった。

(・・・取り返しのつかないことをしてしまった・・・・・・)

 自責の念に駆られないではいられなかった。

(俺が今こうしてここにいるのは、みんなジャイアント様のお陰なのに・・・、なのに俺は・・・、俺は・・・・・・)

 プロレスのいろはを恐れ多くも手取り足取り懇切丁寧に教えてくれた、誰よりも大きく心やさしい巨人ジャイアント・パパ。若き日の記憶が走馬灯のようにチョンボの脳裏を過ぎる。自然と涙が込み上げてきた。

(海外修行に出してくれたのも、タッグパートナーに選んでくれたのも、みんなジャイアント様じゃないか)

 チョンボの大恩人は相変わらずピクリとも動かない。

普通の老人なら即死していたに違いなかった。極限まで鍛えぬかれているが故に、死んでいるはずのダメージを真正面から受け止めきって、死なず生きているのだ。

チョンボはただ立ち尽くすばかりだった。フォールしてスリーカウントを奪う気などに到底なれなかった。だが、このままでは、ノックアウトで自動的に勝利者になってしまう。前人未到の連勝記録が途絶え、伝説にピリオドがうたれてしまう。あのジャイアント・パパに勝ってしまおうとしている。沈まぬはずの太陽が、今まさに地平線の彼方に没しようとしている。

(俺なんかがジャイアント様に勝っていいはずがないんだ。たかが俺ごときが・・・、俺ごときが、ジャイアント様の跡を継げるわけがないじゃないか。これから先、お前はゼニニッポンプロレスの屋台骨を支えていけるのか? ジャイアント様のように半世紀以上もリングに立ち続けられるのか? お前はあれ程までに強いのか? あんなにも人気があるのか? あんなにも偉大なのか? ・・・なんにもないじゃないか。俺がジャイアント様に勝っているのなんて、今の実力だけじゃないか)

だが、今となってはどうしようもない。どうにもなりはしない。

(・・・今のところまだ生きている、それだけがせめてもの救いなのか? 俺が不注意なばっかりに、こんな・・・、こんなことに・・・・・・)

 ケン・ウスイのカウントがどれほど間延びしたものであろうと、巨人が再び立ち上がるとはとても思えなかった。

(嫌だ、こんなのは嫌だ)

うなだれるチョンボ。

「・・・なんてことを・・・・・・」

 さっきまで静まり返っていた客席の人民から歓声がおこっていた。

「今さらなんだというんだ」

力なく顔をあげたチョンボはそこに信じられない光景を見た。

そこには、ぷるぷると震えながら、必死で立ち上がろうとしているジャイアント・パパがいた。

今のジャイアントを支えているもの。それは、史上最強のプライド、内に秘めたる闘争本能などという小さなものではなかった。ただ、この聖人は、無意識ですら、身をもって示そうとしているだけなのだ。人民同志にはいかなる逆境にも耐えて立ち向かう勇気を、後継者には頂点に立つ者としての範を。たとえ、思考力は失われ、瀕死の状態にあったとしても。なぜならば、ここは、みんなのリングなのだから。それこそが、ジャイアント自らが提唱した「陽気で愉快なプロレス」なのだから。



いかがでしょうか?

御意見・ご感想等お待ちしております。

多少でも読んでいただける人に楽しんでいただけるものにしたいですし、なにより作者が喜びます。


それではまた来週。

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