序章
この世界にはテンプレという物が存在する。
例えば、名探偵の周りでは人がどんどん死ぬような
例えば、転成した主人公がチートスキルを持っているような
例えば、ラブコメの主人公が大事なときに限って耳が悪いような
例えば、えーと。うん。まあそんなところか。これ以上思いつかん。
でもまあ他にもいろいろある。
そして俺はその大体のテンプレ設定をなぜか持っている。理由は知らん。そんなもん俺が知りたいわ。いや一つ訂正。俺はどこぞのラブコメ主人公みたいに耳が悪くない。多分。おそらく。そうであることを願いたい。……あと俺の周りでポンポン人は死なない。
でも俺の周りは十分テンプレ通りだと思う。
だって妹もいるし、幼なじみもいるし。小学生の頃はデュクシデュクシしてたし。中学生の頃は闇の力に目覚めてたりしたし。もう卒業したけど。
そしてこれはこんなテンプレ通りの人生を送ってきた俺がテンプレ通りの魔王をテンプレ通り倒すまでの物語である。
ではあらためて、俺の名前は天馬 空。普通の高校生だ。
まあさっき言ったとおりほとんどのテンプレ設定を持っているわけだが、そこを除けばただの高校生だ。そして今寝ている俺を起こそうとしてまたがっているのが俺の幼なじみである水瀬 歩美だ。そう。確かに俺はラブコメ主人公のような大事なことだけ聞き逃す耳は持っていない。でもラブコメ主人公のテンプレもちゃんと持っている。例えばこんな風に距離感ゼロの幼なじみとか。
「おっはよー空!」
「あぁ。おはよう」
とまあこんな感じで時々起こしに来る。しかも大体またがっている。いや何でだよ。もっとましな起こし方はないのかよ。まあもうなれたけど。そんでもって今日は始業式。今日から俺は高二だ。ということで今から朝ご飯な訳だが、大抵こういう日には家族から挨拶される。ほとんど全員から。そしてまずは妹から。
「おはようお兄ちゃん。それと歩美さんも、久しぶりですね」
「ああ。おはよう。風花」
「あ!風花ちゃん!久しぶりだね!」
これが俺の妹、天馬 風花。ただの妹。でもすげーかわいい。めちゃくちゃかわいい。本当に俺の妹か疑うくらいかわいい。さて、妹からの挨拶イベントも終わったところで、朝ご飯でも食べますか。
「あ。おはよう空、風花。あと歩美ちゃんも」
「お。やっと起きたか。ありがとう。水瀬さん」
「いえいえ。いつものことですから」
おい。俺だって一人で起きれるぞ。それにお前別に毎日起こしに来てるわけじゃないだろ。てかこいつの家は大丈夫なのか?
「なあ歩美。お前の家は大丈夫なのか?こんなにしょっちゅう俺んち来て」
「ふぇー?ふぁいふぉふふぁおー」
いや飲み込んでから話せよ。まあかろうじて言ってることは分かるけどさ。
おっともうこんな時間か。
「じゃあそろそろ行くか」
「よし。行こっか。行ってきまーす」
いやお前はお邪魔しましただからな?
そんなこんなで俺たちは学校についたのだが、俺たちの学校では二年から三年にかわるときはクラス替えを行わないことになっている。だから俺たちは去年と同じ一組にむかった。とは言え学年は変わるから同じ教室ではない。でも歩美はちゃんと二年の教室に向かった。だから無駄に時間がかかった。って危ね。もう遅刻ギリギリじゃん。
「じゃあまた後でねー!」
「りょーかい」
それだけ言い残すと歩美は自分の友達の所へ走っていってしまった。さてと。俺も仲間たちの所にでも行きますか。
「よぉお前ら。元気だったか?」
「おぉ空!久しぶりだな!」
「久しぶり。空くん」
こいつらは俺の友達の不知火 龍二と、小田切 界人、前者が龍二で後者が界人だ。
こいつらは高校からの友人で、今では昔から友達だったんじゃないかと思うほど仲がいい。そんな感じで、久しぶりに再開した友達とたわいもない会話を繰り広げていると
「お前らー席につけー」
と、担任である御剣 紫苑先生が入ってきた。
こういう場合、ラノベの教師は大きく2つに分かれると思う。(ソースは俺。人生でこの2パターンの教師しか担任になったことがない。ここまで来ると自分のテンプレっぷりに我ながら驚きを隠せない。)
パターン1、髪はショートか後ろで一本結び。身長は小さい。本当はみんなから憧れられるような教師になりたいけど、身長と童顔、性格などからクラスの愛されキャラとなっている。あだ名で呼ばれがち
パターン2、黒髪ロングで腰ぐらいまである髪を結ばすに下ろしている。基本的に敬語を使わず、かっこいい名言を残しがち。人気キャラ投票などで主要キャラを押さえて上位をとるような人。
うちの担任は典型的なパターン2の教師だ。
「それではホームルームを始める。空、号令を」
「いや俺かよ」
「ああお前だ。今私と目が合ったからな」
「ずいぶんと理不尽だな」
「いいから早く号令しろよ」
「はいはい。きりーつ」
――あなた方は、私の召喚に応じますか?
「「「はーい……?」」」
「ん?今誰か言ったか?」
「いや、言ってないと思うんだけど、なんか声がしたような」
「ねえ空くん。足下のこれって何?」
「足下?」
何かあったっけ?と思いながらも下を見てみると...
床一面に魔方陣が描かれていた。
いやなんでやねん。なんで急に魔法陣出てくるん?もうびっくりしすぎて関西弁出ちゃったじゃん。
あ、なんか光り始めた。これ召喚されるやつだ。なんか目覚めたら目の前に王様とかいるやつだ。とかそんなことを考えているうちにどんどん光が強くなっていく。あぁ召喚されるわこれ。てか召喚されたらしばらく風花に会えないじゃん!俺悲しくて死ぬよ?お兄ちゃん死んじゃうよ?こんなことになるならもっと風花と話しておけばよかった。
そんなこんなで俺たちは、異世界と思われる場所へ召喚されていくのであった。