あ、チート能力いらないです
私はあの日……あの時死んだ。
背中に走る鈍い痛みと共にあの世界から消えた。
なのに……なぜこんなまっしろな空間にいるのだろうか。
天国にしては意識がはっきりとしているし、心臓もちゃんと波打っている。
「やあ、君が真白 狐月だね！」
「?!」
なんの前置きもなく、スっと登場したのは巨乳の顔面偏差値高杉さんだった。
「いやー照れるなあ！」
美人が照れるとこうも可愛いらしい。
私とは大違いである。
「いやいや君も充分可愛いからね？」
「美人に言われるとイラッときますね。……というか、さっきから心の声読むのやめてもらっていいですか？」
なぜ心の声を読めるのかはなんとなく想像はつく。
どうせこいつは神やらなんやらなんだろう。
私が見た漫画もそうだった。
すると、巨乳の顔面偏差値高杉さんは驚いたような顔をしたが、すぐに元の笑みを浮かべた。
「久しぶりに面白そうな人間に会えたよ。それでここからが本題なんだけど」
急に本題と言われても。
唐突すぎやしないか？ 出てくるのも唐突だったし、もしかして会話できない系の神様か？
そんな哀れみの表情を向けると、少し傷ついたのか俯いてしまった。
「あー……あの」
「やっぱり君にしてよかった！」
「……は？」
傷つきのきの字もなく、キラキラの笑顔で私にこう告げた。
「君、真白 狐月には異世界へと転生してもらいます!!」
「……は？」
この神様、会話できないどころか頭もおかしい感じだ。
そう確信した瞬間、私の足元に光が集まり始めた。
流れ的に転生させる光だろう。
「私、まだ行くなんて言ってないんですけど」
「君が今から行く世界は、大混乱が起こってるんだよね」
こいつ、私の言葉無視して話し始めやがった。
というか、今なんて言った？
「大混乱が起こってるって言った？」
「うん」
そんなところに一般人送ってんじゃないよ。
私みたいな人間はサクッと殺られるじゃんか。
「あんたがやれば？」
「私、女神の仕事あるから無理ー」
「はあ？」
「んじゃ、行ってらっしゃーい」
もういろいろとめんどくさくなってきたのか、無理やり私を押して光の集まった方へやる。
「おまっ、ふざけんなよおおおお!!」
なんの抵抗も出来ぬまま、意志とは裏腹に意識は遠のいていく。
最後に一発殴りたい……。
そう思って手を伸ばすが。
「あ、詳しく説明するの忘れてたけど……まあ、いっか！」
拝啓──お父様、お母様。
私はどうやらクソ女神のせいで無理やり転生させられるようです。
それも超危険な世界に。
全くと言っていいほど説明も無く、生きていけるか心配です。
──どうか、暖かな目で見守ってくださいますようお願い申し上げます。
