表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/36

4

「……夜伽?」

「うん」

「……陛下と?」

「うん」

「……8日後に?」

「うん」


 うわ言のように呟くアサギに、ロッタは律義に返事をする。


 それからしばらくアサギは腕を組んで瞠目した。なにやら考え込んでいるようだ。


「ロッタ、まさか君はそれを受け入れるの?」


 随分待たされたと思ったら、ド直球な質問をされ、ロッタはたじろいでしまった。


「……え、あ……う」


 幼馴染であるアサギには、嘘は付きたくない。


 そんな気持ちから【ん】まで言い切ろうと思ったけれど、それは口に出すことができなかった。


 アサギが今までに見たことがないほど怖い顔で睨んでいたからだ。


「そもそも誰がそんなこと言い出したんだ?」


 肩を震わせ縮こまってしまったロッタに気付いたアサギは、努めて穏やかに問い直した。


「……王妃が」

「ああ」

「……私の髪と目が」

「ああ」

「……同じ色だからって」

「ああ」

「……だから陛下だって私なんか抱きたくないけどやれって」

「あ゛あ゛?」


 怯えながら答えてくれるロッタを怖がらせないように、アサギは辛抱強く頷いていたけれど、最後はドスの利いた声を出してしまった。


 ロッタはすぐさま距離を取る。


 二人の間には、互いが腕を伸ばしてもまだ馬2頭は入る余裕ができてしまった。


「私だってやりたくないよ。でも、断ったら断罪だよ?逃げても断罪だよ?お父さんもお母さんも弟も、私の行動次第で死んじゃうかもしれないんだもん。やらなきゃいけないよ。──……嫌だけどさ」


 風に乗ってロッタの愚痴がアサギの元まで届いた。


 ロッタは不貞腐れた表情で、地面の小石を蹴っている。


 ─── コツン。


 ロッタの蹴った石がアサギの足に当たった。


「あのさぁ、陛下と夜伽をするってことはロッタは側室になるってことだよね」


 アサギはゆっくりとロッタに近づきながらそう言った。


 すかさずロッタは、違うと身体全部を使って否定する。


「ううん、まさかっ。私、側室にはならないよっ」

「は?どういうこと?」

「王妃が言ったの。”メイドが側室なんて身分不相応も甚だしい。弁えなさい”って。だから、私───」


 再びロッタは、最後まで言うことができなかった。


 今度はアサギが、ぞっとするほど冷たいオーラを出していたから。しかも彼はすぐ傍に来ていた。


 どこが彼の逆鱗に触れたのかまったくわからないロッタは、恐怖のあまり、脱兎のごとく逃げ出そうとした。


 でも、アサギは素早い動きでロッタの肩を掴むと、小さな耳に唇を寄せた。


「なぁ、マジな話だけど、王妃のこと殺していい?」

「……いや、普通に駄目でしょ」

 

 あまりの怖さのせいで素に戻ったロッタは、淡々とした口調でふるふると首を横に振った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ