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 王妃の一方的な夜伽通告は、ロッタ本人の了解を得ぬまま決定事項となり、それは王宮メイドを取りまとめる女官長の元にも通達が届いた。


 そしてお世辞にも”娘さん”と呼べない年齢の女官長は、夜伽を務めるまでの間、ロッタに休暇を与えた。


 日頃の労いから来るものではない。

 使い捨てにされるロッタを哀れに思って、せめてもの慰めを与えたわけでもない。


 ロッタが勤務中に怪我でも負ったら、その責任追及が己に来るから。


 そう。これは、我が身可愛さから与えた休暇であった。





***





「……暇だ」


 ロッタは王宮の裏庭で一人、空き箱に腰掛けて空を見上げていた。


 8日後に迫った夜伽という大イベントから目を逸らすために仕事に没頭したいというのに、それすら取り上げられてしまったら、もう流れる雲を見ながら悟りを開くことしかできない。


 え?何もここでなく、自室にこもってやれば良いんじゃね?─── などとは言わないで欲しい。


 ロッタとて、できることならそうしている。


 でも自室で過ごしていれば、下世話なネタが大好きなメイド達が入れ替わり立ち替わり部屋に押し寄せてくるのだ。


「いつヤルの?」

「自分からヤルって申し出たの?」

「イタす手順って教わったの!?」

「ちょっ、終わったら絶対に教えてね!!」


 などと一方的な質問をぶつけ、そして、勝手に約束を取り付けて帰っていく。

 誰も親身になってロッタの気持ちに寄り添ってくれる人はいない。


 つい数日前まで”皆んないい人で、ここで働けて良かったなぁ”などと思った自分の気持を今すぐ返して欲しい。


「……ったく、人の気も知らないで」


 ランランと目を輝かせて根掘り葉掘り聞いてくるメイドの面々を思い出し、ロッタは地面に落ちている小石を蹴りながらぼやいた。  


 それにしても本当に、本当に、大変なことになってしまった。


 ここだけの話、マルガリータが去ったあと、ロッタは”まぁ、でも、あれだけ馬鹿にしたんだからナシの方向になるだろう”と、どこか楽観的な気持ちでいた。


 自分を卑下するのも嫌だけれど、所詮はメイド。国王陛下だって、抱く女を選ぶ権利はある。


「案外、尻に敷かれているのかもね」


 不敬罪確定のセリフを吐いたけれど、誰とは言っていないのでセーフである。


 でも、自分が人身御供よろしく好きでもない男に抱かれるのは、どうしたってアウトだ。

 でもでも、王妃の命令は絶対だ。そしてもう、これは決定事項。覆すことは神様だって無理である。


「……死のっかな……私」


 断ったところで即、極刑。そして逃げても、極刑。


 ならば、せめてもの抵抗で自ら命を断ってみようか。そうまでして拒む理由の中に、操を立てたい相手がいるからというのが含まれていないのが悲しいところだけれど。


 そんなふうに自暴自棄になっているロッタは、背後から忍び寄る影に気づくことができなかった。

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