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3

 マルガリータの紡いだ言葉は、間違いなく人を傷つける言葉だった。


 けれど、傍にいる着飾った女性達はクスクス笑いを止めることはしない。それどころか、更に笑みを深くする。


 ロッタは、ずっと手に持っているホウキを地面に叩きつけたい衝動に駆られた。


 ふざけるなと言ってやりたかった。

 だれが、そんな馬鹿げたことなんかするかと、叫びたかった。


 けれど、相手は王妃だ。

 彼女は当然ながら絶対的な権力を持っている。そんなことをすれば、良くて投獄。いや、かなり高い確率で首が飛ぶ。


 たった17年しか生きていない人生を終わらせるには、あまりにくだらない理由だ。だからロッタはじっと耐えた。


 でも、そんなロッタに追い打ちをかけるように、取り巻き女性の一人がロッタに近づいた。

 

「この際ですから教えて差し上げますが、側室というのは、血筋も家柄も申し分ない令嬢がなるものなんです。もちろん、ある程度、信頼のある人間からの推薦は必須ですけどね。あなた風情が、側室という言葉を使うだけでも不敬罪にあたるのよ。それを───」

「やめてあげて、ミーシャ。ロッタは無知なだけで、悪気はなかったのよ」


 間に割って入ったマルガリータの言葉は、ぶっちゃけミーシャよりも酷いものだった。


 けれど、マルガリータは、そんなことに気付きもしない。


「ロッタ、今の事は忘れてあげる。でも、間違っても陛下に向けて側室になりたいなどとは言っては駄目よ。あのお方はお優しい人ですけれど、分別を弁えない人間に対してはとても厳しいですからね」


 出来の悪い妹に向けるような口調でロッタを嗜めたマルガリータは、今度はここには居ない人間に心から同情するような表情を作った。


 そしてっほっそりとした白魚の手を己の頬に当てて、再び口を開く。


「それに、こんなことは口に出したくないけれど……陛下だってあなたのような下賤な女を抱くなんて本当はお嫌でしかないんですから」


 溜息まじりにマルガリータが言い終えた瞬間、取り巻き一同は「その通りでございます」と言いたげに、深く頷いた。


 ロッタの顔が、みるみるうちに赤みを帯びていく。


 ─── そもそも、あんたが子供を産めないのが最大の原因じゃないか!!


 そんなことをロッタはあらん限りの声量で叫んだ。……ただし、心の中で。


 たまたま目と髪の色が同じというだけで、一方的に無理難題を突き付けられた挙句、これ以上ないほど侮辱を受けてしまった。


 ロッタは、喉からせり上がってくる『黙れっ、石女王妃!!』という言葉を呑み込むために、手にしているホウキを更に強く握る。


 一拍遅れて、ホウキがミシミシと嫌な音を立てた。

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