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王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐  作者: 当麻月菜
えっ、嘘?! そっちなのかぁ
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7

 そもそも、ロッタは粉薬を使って国王陛下を不能にしようとしていた。


 そして、使い物にならなくなったそれを目にして大袈裟に驚き狼狽え、国王陛下にとある提案をしようとした。


 まさにそれこそが”王妃に一泡吹かせる”為のもの。


 つまり、だ。


 国王陛下が現在進行形で不能であれば問題ないのだ。



「…… まず陛下、わたくし驚きのあまり失礼な態度を取っておりました。お詫び申し上げます」

「いや。それより秘策とは?」


 ソファに座り直してくれた国王陛下は、半信半疑といった感じで本題を早く聞きたい様子だった。


 ロッタは、わざともったいぶって咳ばらいをする。 

 そして、ちょっとだけもじもじとする。


 この仕草もアサギの計画の一部。さらっと伝えるより、焦らした方が効果が高い……そうだ。


 あと計画を続行する為には、少々確認しなければならないことがある。


「その前に陛下、少々確認したいのですが、よろしいでしょうか?」

「構わない。だが手短に頼む」

「かしこまりました。では、陛下が男性としての機能が冬眠しているというのは、側室の皆さまはご存知ないということで?」

「そうだ。マルガリータから差し出された女性達はこれまでは事前に顔合わせがあった。そこで、容姿が好みではないとか、仕草が気に入らないとか、方角が悪いとか、適当な理由を付けて拒み続けてきた」


 方角ってなんじゃ?


 と、ロッタは思ったが別段どうでも良いことだったので、言葉を続ける。


「さようですか。王妃を想っての行動すばらしいと思います。ですが、陛下……」

「なんだい?」

「このままでは陛下が隠し続けている男性機能の件、気付かれるのは時間の問題です」

「そうだ。だから、私は焦っている。君の秘策を知りたい」


 急かす国王陛下は、もう疑いの目をロッタに向けていない。


 語るなら、今だ。


 ロッタは自分自身にGOサインを出した。


「では、これから話すことは他言無用でお願いできますでしょうか?」

「もちろんだ」

「王妃にも……と、お約束」

「する。誰にも話すことはしない。だから、早く」


 苛立ち始めた陛下は、貧乏ゆすりを始めている。巨額の富があるというのに。


 対して没落令嬢であるロッタは、姿勢を正し悠然とした笑みを浮かべ口を開いた。


「まず、夜伽とは互いの愛情を確認しあえる大切な時間でございます。ですから、愛情の無い女性を抱くことは男性として苦痛を伴うものでしょう」

「まさにその通りだ」

「そして……王妃に拒まれた場合も……同じく」

「なぜ君は手に取るように私の気持ちがわかるのだ?」


 いや、知らん。


 ロッタは心の中で即答した。


 予期せぬトラブルのため多少はアレンジを加えたが、これはほとんどアサギが決めた台詞だ。ロッタはただ暗記して復唱しているだけ。


 でも、それを馬鹿正直に口に出すほど、ロッタは愚かではなかった。

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