表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/36

8

 ─── アサギと契約を交わした3日後。


 ロッタは先日と同じように王宮の裏庭にいた。もちろんアサギも一緒に。


「まず、一人になったらコレを自分の身体に振りかけろ」

「はい!」

「心配なら、こっちもぶっかけろ。効き目はかなり強力だ」

「ぅいっす」

「で、念の為これも持って行け。飲み物に入れるんだ」

「あいっ。……でも、飲み物なんかあるかなぁ」

「なきゃ、なんとかして用意してもらえ。緊張しすぎて喉が渇いたとか。自分一人だけ、飲食するのは気が引けるからご一緒してくださいとか、適当な理由を使え」

「う、うん」


 本日も樽の上に腰かけるロッタの膝の上には、2つの粉薬の包みと一つの小瓶がある。


 それは本当に小さくて、ひとまとめにしてもロッタの片手に余るほどの大きさだった。


 粉薬は振りかけるだけで、男性の性欲を抑える効用がある。小瓶の中身も、粉薬と同じ。


 まぁ簡単に言えば、強制的に男性を不能にできる、女性にとったら最高の防犯アイテムだ。男性に取ったらどんな毒薬より恐ろしいものかもしれないが。


 そしてこんな劇薬をたった3日で手に入れることができるアサギは、どんな伝手があるのか気になるところ。


 でも今は、それを問い詰めることより他にやることがある。


「あと、これは暗記しろ。青い文字で書いてあるところは絶対に間違えるな」

「え゛、これ全部?」

「当たり前だ」

「う、うんっ。わかった。任せて!」


 アサギはロッタの前に立って、5日後に迫った夜伽において一泡吹かせる段取りを書いたレポート用紙を手渡した。


 それは一枚だったけれど、びっちりアサギの手書の文字で埋められている。小さく折りたたんで、部屋でも隠すことができるようにとの配慮なのだろう。


 ロッタはアサギの気遣いに感謝しつつ、さっそく文字を目で追った。


 ちなみにこのレポート用紙には、なかなか卑猥なことが書かれている。


 妙齢の女性なら間違いなく赤面するし、そうじゃなくても人前で読むことに抵抗がある内容だった。 


 でもロッタは真剣な表情で黙読している。一語一句脳に刻み込もうとする意気込みが痛い程、伝わってくる。


 そんなロッタを見守るアサギは、微妙な顔をしている。


「ロッタ……なんかあったか?」

「あった」


 即答したロッタだけれど、詳細は語らない。でも、レポート用紙を握る手は、怒りに震えていた。





 ─── 実は昨日、ロッタの身に大変屈辱的な事件が起こったのだ。

 

 休暇を与えられてもやることがないロッタは、メイド達の追及にうんざりして、王宮の端っこの、もっと端っこにある馬小屋に身を隠そうと思った。


 けれど、ここで神様はロッタに意地悪をした。


 王妃マルガリータとその取り巻き一同と鉢合わせをしてしまったのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ