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ep19

結局薫はハルキ達に納得させられる言葉を見つけられず、ろくに学校に行けないままついに別れの日が訪れてしまった。

学校への道のり。薫は自分の足が鉛のように重く感じ気分は重々しかった。しかし、学校は気持ちとは裏腹に訪れた。

「あ〜、消えたい。」

憂鬱を引き連れて薫は昇降口を入った。

・・・・

「…というわけで我が高校のあの有名なピアニスト椎名隆道さんの息子、椎名薫君が留学…」

薫が留学するということで学校が開いた集会でも、薫の心はそんなことよりハルキ達のことで頭がいっぱいだった。

「こんな集会…みんなの前で出られないよ。」

泣きそうなくらい追い詰められていた薫。

「…では椎名君から一言。」「さぁ、椎名君」

「…はい。」

先生から呼ばれステージに迎う薫。もう何もかも投げ出したい気分だ。

「えーっと、今日は僕の為にこのような会を開いていただいてありがとうございます。」

複雑な気持ちを押し殺し、作り笑いでお決まりの文句をならべる。

「僕は短い間でしたけど、この学校でみんなと過ごせてよかったで…。」

そんなスピーチの途中、急に頭の上から何やら聞こえてきた。

「なんだ、なんだ?」

「何か聞こえてくる。」

「音楽だ。」

生徒達が騒つく。

「私語はつつしめ!静かに。」

先生は慌てる。

「これは。」

薫は生徒の中にハルキ、公平、咲が居ないのに気が付いた。

「まさか!」

薫は思わず蔵田の方をみた。すると蔵田は薫の方を向き黙って頷き、"行ってこい"というジェスチャーをした。

そして薫は頷き返すと、ステージを降り体育館を出て行った。

「待ちなさい、椎名君。」

もう教頭の声は薫には聞こえない。

廊下を走り抜け、いつもなら普通に昇るだけでも息が切れる階段を4階まで一気にかけ昇る。そして屋上への扉にたどり着き、ドアノブに手をかけた。その時、一瞬躊躇したが意を決して一気にひねり扉を開けた。

そこには、演奏している三人がいた。

「みんな…」



数日前

「どうしたらいいんだ。」

ハルキも同じく悩んでいた。恐らく薫が行ってしまうまでもう時間はないだろう。

「薫を引き止めたい。でも薫は本気でプロピアニストを目指してるんだ。その意志を大事にしたいし…」

何より薫が一番辛い立場に立たされ苦しんでいるとわかっていた。優しい薫のことだから、きっとハルキらを裏切ることになると思うかもしれないと。

「…どうしたら。」

ハルキが誰も居ない部室で頭を抱え悩んでいると。

「なんだまだいたのか。」

ドアを開け蔵田が入ってきた。

「先生。」

「…どうせ薫のことでだろ。」

やれやれという顔でハルキの隣に座る。

「先生、僕どうしたら。」蔵田は一息つき口を開いた。

「どうしたらっつっても正直オレにも分からない。だが何が正しいかとか何が間違ってるかなんて誰にも分からない。ただこれだけは言ってやれる。」

そういうとハルキに顔を向け一言

「後悔だけはするな。」

そういうとニッコリ微笑み「しかも、"僕"じゃなくて"僕達"だろ。」

その瞬間また扉が開き公平と咲が現れた。

「な?」

「みんな。」

公平が笑顔で

「お前水くせぇぞ。」

といいながらハルキの頭をぐしゃぐしゃに掻き乱した。

「ハルキだけの問題じゃないんだから。」

と腕組みしながら咲が言った

「そうだよな。」

「そうそう調子のって、なんかカッコいいこと言っちゃってる人いるし。」

公平が細い目をして蔵田をみた。

「茶化すな!あー、ヤバイ。顔熱くなってきた。」

蔵田は顔を真っ赤にして。

「とにかく、後は三人でよく話し合え!じゃあ!」

バタンッ、と勢いよくドアを閉め足早に去っていった。ハルキは心の重荷が軽くなったような気がした。

「でどうしようか。」

咲が切り出した。

「僕は正直薫が行くのは淋しいけど、アイツの夢だし。送り出してあげたい。」ハルキが2人をみる。

「オレも同じ気持ちだ。」

公平は笑顔で返す。

「あたしは…」

咲は俯き、一息間にいれ、「あたしも送り出してあげたい。」

と訴えるように言った。

「やっぱりみんな同じ気持ちだったな。よかった。」ハルキは安心したように頷いた。

「でもどうやって送り出だすんだ?」

公平が尋ねた。

「問題はそれなんだ。」

腕を組みうーん、と唸る二人。そこに咲が

「あたし軽音部なんだから、やる事といったら…一つだけでしょ。」

『あ、なるほど。』

2人はポンと手を叩いた。「そうと決まれば?」

「だな。」

それからずっと部室から、音が流れ続けた。



「みんな…。」

薫は演奏している姿を見て言葉がでず、たまらず涙が溢れでてくる。

「僕てっきりみんな裏切られたって思ってるんじゃないかって。それでそれで。」

自分自身を責め続けていた薫だったが、3人の音楽から伝わってきたのは

薫、別れるのは寂しいけどいつも俺達は応援しているよ。

というメッセージだった。「みんな…ありがとう。…本当にありがとう。」

友を送り出す歌はいつまでも青空に鳴り響いた。




「薫もう出発したかな。」

あの屋上で3人は空を見上げていた。

「もうすぐじゃない?」

「それにしても教頭しつこかったなぁ。」

あの後3人は教頭からこっぴどく1時間以上叱られた。

「まぁ、承知で無断でやっちゃったし。」

ハルキは苦笑い。

「まぁ、それもそうだけど…あ、飛行機。」

公平が空を行く飛行機を指差した。

「あれに薫君乗ってるのかな。」

「多分ね。」

3人はずっと真夏の青空を眺めていた。

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