ep.17
「薫マジで辞めんのかな。」
「……わかんないけど。」
「………。」
薫の思いもよらない発言に、ハルキ、公平、咲の三人は部室の中で暗い雰囲気をかもしだしながらうなだれていた。
薫はあの後、やはり居ずらくなったのか帰宅してしまった。その方が事態をまだ飲み込めてないハルキ達にとって良かったのかもしれない。
「なぁ、咲は知ってたのか。」
薫の事にいち早く反応した咲なら、何故薫があんな事を言ったのか分かると思いハルキは言った。
「…お父さんが来たって聞いて、まさかと思ったけど本当に最悪な状況になるなんて。」
・・・・・・
20分前。
「な、なんで?そんな急に。」
驚きのあまり固まっていた公平がやっとまだあんぐりあいた口できいた。
「……。」
なかなか続きが言えない薫に、蔵田が説明する
「やはり俺が言おう。さっき薫のお父さんが来て、薫を留学させたいと申し出てきたんだ。」
「留学?どこへ。」
「オーストリアだ。」
「オーストリア?なんでそんなとこへ。」
あまりの事の衝撃で、二人は思考回路が停止したようになっていた。
「ピアノのためだ。オーストリアは知ってのとおり音楽の本場だ。そこで薫を一流のピアニストにするために連れていかれるそうだ。まぁ、学校としてもすぐ留学にとはいかないから今日は一応その留学の理由などを聞いてたんだ。」
「一流の」
「ピアニスト…。」・・・
「留学か〜。」
「っつっても、事実上ピアノ専門に勉強すんだから自主退学だよな。」
「自主退学!?」
ハルキは退学という2文字に思わず反応してしまう。「おかしい。」
黙っていた咲が呟いた。
「え、何が?」
公平が尋ねた。
「いや、今まで留学の話はあったけど薫君はずっとそれを拒否してきたのよ。高校だけは日本で通いたいって。だからそんな数ヶ月でやっぱり留学だなんて。どうして急に考えが変わったのかなって。」
「そうだったんだ。」
不安と謎だけが、そこにはあった。
「まぁ、とにかくあれだ。今日はもう帰るか。明日それも含めて薫と話せばいいんじゃねぇか。」
「それもそうだな。」
そういって帰ったものの、みんなその夜は眠れなかった。
そして、次の日から薫は学校を休んでいた。




