9話 貴方を愛しています
ダンスがつまらなくて飽きた私はバルコニーに出て1人で夜空を見ていました。
イケメンの人と踊ったりザード様とも踊ったんですけど何か違うんですねー。
一緒に踊ってもときめかないといいますかなんといいますか・・・。
不貞腐れていると、ロイスのことを思い浮かびました。
あーロイスと一緒に踊りたいなぁ・・・。
そうだ、一度様子を見にいきましょうか
スフィアのことも心配ですしね。
私は会場後にして休憩所に向かいました。
確か、この廊下の左曲がった先の扉が休憩室でしたよね?
廊下を歩くと1カ所だけ扉が開いていたのでそちらのほうに向かいました。
2人ともいるかなー?
開いていた扉の中を見た私は固まってしまいました。
「え?」
ロイスとスフィアの2人が手をつないでダンスをしてました。
なんでだろうものすごく嫌な気持ちになりました。
ちょうど音楽の一曲が終わって静かになると、
ロイスがこちらに気づいて目が合ってしまいました。
「リリアナ!? いつからそこに・・・」
焦っていたのできっと見られたくなかったのでしょう。
私は一言謝ってその場を去りました。
「ごめんね。スフィアの体調が心配で様子を見に来たんだけど元気そうでよかったわ。
それじゃ私は会場に戻るわね」
「あ、待て!リリアナ!」
ロイスの言葉を無視して逃げるように廊下を走りました。
◯
リリアナのやつに変な誤解をされてしまったようだ・・・俺はすぐに追いかけることにした。
「スフィア様、すいません。すぐに戻ってきます」
「あ、待って!ロイス様!」
引き留めようとしましたがロイス様はリリアナの事を気にして、
急いで部屋から出て行かれました。
やっぱり・・・私は振られてしまいましたわ。
力が抜けるようにソファに座り込むと、
思いがこみ上げて涙が出てしまいました。
「あー振られちゃったなぁ・・・私もロイス様のことが大好きですのに・・・
ロイス様、なんで私じゃないんですか?」
リリアナに負けたのが悔しかったんですが、罪悪感もあって泣いてしまいました。
私は2人の思いを知っていたのにも関わらず、ロイス様と二人っきりでダンスをしましたからね。
最低です。私は本音を出しました。
「でも、いいじゃないリリアナ・・・。
あなたがロイス様と結婚したらいつでもダンスができるんですから」
私はきっとこれが最後のダンスです。
婚約者が決まっている相手とはダンスが禁止されてますので私は泣いてしまいました。
「ごめんね、リリアナ・・・」
その場で声を出して泣いていると、
ザードがいつの間にか来ていて、私に声を掛けて来ました。
「すまない、盗み聞きをするつもりではなかったのだが・・・
スフィアに聞いて欲しい話があるんだ」
「ザードか・・・なによ・・・」
今は貴方の話に付き合ってる暇ではないのよ・・・迷惑だと思っていましたが、
私はザードの言葉を聞いて泣き止みました。
「お前がロイスの事を好きなのは分かっていたのだが・・・自分はスフィアの事を愛してる。
俺じゃ役不足かもしないないが、妃になってくれないか?」
「え?」
私は求婚をされて、驚いてしまいました。
◯
なんでだろう、どうしてこんなに嫌な気持ちになるんだろう。
外に出て建物の入り口の段差があるところに
座っていると、後ろから誰かの足音が聞こえて近づいて来ました。
「こんなところにいたら風邪をひいてしまうぞ」
振り向くとロイスと目が合いましたが、何も答えずに無視をしました。
なんで私のとこに来たのかなあスフィアとずっと踊っていたらいいじゃん・・・不貞腐ってあげました。
愛想をつかれるかと思いましたが、
ロイスが私のそばによって後ろからそっと抱き寄せてきました。
「すまないな、リリアナ。嫌な気持ちをさせて・・・
俺は本当に心のそこから踊りたいと思うのはリリアナだけだ」
ロイスの気持ちは伝わりましたがまだ許せるわけではありませんでした。
「ほんとう?」
「ああ、本当だ」
「それなら私と一曲、ここで踊ってくれる?」
「もちろん。何曲でもお付き合いします」
立ち上がってロイスと向き合い、
手を取ってかすかに聞こえてくる音楽に合わせて踊りました。
あ・・・私は直ぐに気が付きました。
ロイスの手から暖かいぬくもりを感じて、
とても優しい眼差しで私を見てくれます。
他の貴族や王子様ともダンスをしましたがロイスと踊るのが一番楽しいです。
私はこの時気づいてしまいました。そう、私が本当に好きなのは・・・ロイスだけなのね。
他の方と踊ってもこんなに心が弾む事はありませんでしたが、今はとても楽しいです。
誰にも邪魔されない静かな空間で2人で踊り曲が終わると、
ロイスが恥ずかしそうにしていましたが私に思いを伝えてくれました。
「リリアナ、愛しているよ。だから、俺と婚約してくれないか」
私は迷わずに言葉が出ました。
「はい、婚約します」
そう伝えると、ロイスが私の顔にそっと近寄り何も言わずに私の口に唇をつけてキスをしてくれました。
いきなりだったので驚いてしまいましたが、
恥ずかしかったのと同時に凄くうれしかったです。
いい雰囲気になりロイスのことがいとおしくて抱き合っていると、
スフィアとザード様に見られてしまいました。
「まったくこんな入り口の前でイチャイチャするもんではありませんよ。ね? ザード」
「まぁ俺たちも人の言えないし、いいんじゃないか?」
「ザードとスフィア様!?」
「いつからそこにいたの!?」
お二人をよく見てみると、仲良さそうに手をつないでいました。
どういう状況なのか話を聞くと、お二人は私たち同じく婚約をしたみたいです。
え? 二人ってそういう関係だったの?驚きました。
お二人が手を繋いで帰ろうとすると、スフィアに小声で耳打ちをされました。
「リリアナ。ロイス様を幸せにしてあげないと許さないんだからね」
そう言葉を残しお二人は車に乗って帰って行きました。
見送っているとロイスが舞踏会に戻るかと提案をしましたが、私は首を横に振りました。
「ううん、舞踏会はもういいわ。私はロイスと2人でゆっくり過ごしたいわ」
「そうか、なら帰るか」
「うん」
こうして私たちは無事に婚約し、結婚できる歳までこれまで以上にお互いのことを思って日常を過ごし、
誕生日を迎えた翌日にお城にいる皆さんに祝福される中、私達は結婚式をしました。
こうして無事に、乙女ゲームを攻略する事が出来ました。
ふふっ、ゲームで言うところのハッピーエンドね。
次回で最終回になります!
土曜日に投稿しますのでお楽しみに!!




