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数学オタクは魔法に憧れて  作者: 哲
1章 数学を愛する少年
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第8話 最初の約束

ついさっき寝ていたと思ったらいつのまにか昼だった。


な……何をいってるかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった……


とまあ冗談は置いておいて、

今日の午前中は始めての授業だったのだが、事前にマフィナさんに聞いたことばかりでたいして面白くもなかった。


暇すぎたのでずっと体内の魔力で遊んでいたくらいだ。

手で輪を作ることで回路みたいなのを作って魔力を流したり、超高速で体内の魔力を循環させたりと色々やった。

後者はやってて気分が悪くなったが。


勿論完全に授業を聞いてなかったのではなく、知らないことはちゃんとチェックした。こういうところは抜かりはない。


興味深かったことといえば、世界で最初に現れた人族はエルダーエルフというエルフの一種で、魔法という概念を作ったとかいう超天才な種族がいたことくらいだろうか。


しかし今はもう絶滅しているらしい。生きてるなら是非会いたかったね。


そして俺は昼食をすぐに食べ終え、マフィナさんに妹のことを相談することにした。今日は午前までの授業で、これからは異世界に来て始めて自由時間だ。早速妹捜索の旅に出るとしよう、三日もあるし見つかることを願おう。


「宇佐美様って妹さんがいたんですか!?ええっと、わかりました。連絡をとってみます。宇佐美様は城内から出ないで下さいね?」


朝言ってればよかったなそういえば。




マフィナさんが連絡を取りにいってくれて三時間くらいか、妹がグリナーレ城にいることがあっさり分かった。

どうやら明日ならグリナーレ城に向かえるみたいなので、朝一で行ってみよう。正直会うのはまだ時間がかかると思っていたが嬉しい誤算だ。


さて、残った時間は何をしようか。


「宇佐美様、明日グリナーレ城に行かれるのなら冒険者ギルドに行きませんか?グリナーレ城に行くには転移門に行かなければいけないのですが、身分を証明できるものがないと転移門が使えないんです。」


「なるほど身分証明ですか、冒険者ギルドでしか取れないんですか?」


「一番早いのが冒険者ギルドなんです。加入条件が一番緩いので。」


勇者候補なら身分証明くらいどうにかしろよといいたいが、異世界に来たの二日前だし仕方ないか。急だったもんね。


そしてもしやとは思っていたがやっぱりギルドあったんだ。この世界の雰囲気的にありそうな感じはしたんだ、ダンジョンとかあるみたいだし。

マフィナさんによると冒険者ギルドは自由なギルドで、ノルマも何もないし脱退も簡単に出来るらしい。街の周辺やダンジョンで得た魔物の皮なんかを買い取って必要な場所に売っているんだそうだ。


特に入って損はなさそうだな、強いて言えば個人情報が登録されてしまうくらいだが、そもそも個人情報なんてほとんどないから問題ないだろう。どうせ国には知られてるし。



俺はマフィナさんと共にブルラナ城を出て、始めて城下町にやってきた。

みんな髪の色が全然違うことにびっくりする。慣れるまで目がチカチカするだろうが仕方ない。


たまに犬耳や猫耳っぽいものが頭に生えている人もいる。

あれが獣人ってやつだな、女の子だったら可愛いけど男の猫耳なんて見たくねぇよ。


歩いて15分くらいか、どうやら冒険者ギルドについたみたいだ。流石に建物がでかいな、都会の駅みたいだ。



俺はマフィナさんの後ろに着いていくようにして冒険者ギルドに入っていった。だって恐いんだもの、俺雑魚だし。


「すみません、新規冒険者登録をお願いしたいのですが。」


マフィナさんが話かけたのは、青髪で可愛い系の受付嬢だ。受付だからなのかカウンターにいる人は美男か美少女しかいない。やはり顔は大事ですよね……。


「はい、それではこちらの紙に必要事項をご記入ください!」


そういって渡されたのは一枚の小さな紙だ。日本語で名前や得意属性などを書く欄があるが、逆に言えばそれくらいしかない。本当に簡単に入れるみたいだ。


特に書くことは迷わなかったが、印の字って何すればいいんだろう、印鑑なんて持ってないんですけど。


「ああ、印のところは血印でお願いします。一滴あれば充分です。」


まじっすか、そんな軽々と自傷を強制されるとは恐ろしい世界だ。


必要なものは仕方ないので、マフィナさんに教えてもらいながら指先を傷つけ…


ようとしたけどびびっちゃったので結局マフィナさんに傷つけて貰った。


だっさいな俺……、ぶっちゃけ日本人なら仕方ないと思うんです。


「これで完了ですよ宇佐美様。発行まで少し時間が掛かるので冒険者ギルドを見て廻りましょうか。」


何も言わないマフィナさん、やさしい。


見渡すとボードがいくつも壁に取り付けられており、所狭しと依頼の紙が貼られている。中にはパーティー募集用のボードなんかもある。一回限りのパーティーを組むことも少なくないのだろう。


奥の方には酒場やカフェのような食事処もあれば店のような場所もある。簡単な外出用の道具はここで買えるみたいだ。


そして今は夕方だからなのか人も多い。鎧や服が汚れている人を多く見かけるのでどこかに行った帰りなのだろう。

意外にも冒険者っぽいような太マッチョなおっさんはあまり見かけない。いやおっさんは多いのだが体格は俺の想像よりも随分と細い気がする。

筋肉と力の強さは比例しないのかもしれないな。



10分ほど歩いて受付に戻ると身分証明のカードが渡された。早い。


「こちらが冒険者カードになります。新規ということですが冒険者ギルドの説明を致しましょうか?」


「お願いします。」


「冒険者ギルドは基本的には依頼人と冒険者の仲介役として依頼の斡旋をしたり得た物品を管理する目的で設立されたギルドとなっております。

依頼人が依頼書をボードに貼っています。冒険者の方々は自分達に合った依頼を探して受注し、達成した際に依頼人から報酬を貰う仕組みとなっています。


依頼書には冒険者の方々に難易度の目安となる階層が付けられています。

安全のため今受け取ったカードに書かれている階層以下の依頼のみ受けることしかできませんがご了承下さい。」


俺の手元のカードには『1階層』と書かれている。これが最低のランクなのだろう。

ってことは強くなると数字が大きくなっていくのかな?

そんなところだろう。


「……これで説明は終わりです。最初にクエストを受けるときは絶対にパーティーを組んで下さいね、それで死んだ冒険者の方が多くいるので。」


「親切にありがとうございます。」


めっちゃ心配された。どう見ても初心者なんだろうな俺の姿は。



無事に冒険者カードを手にいれた俺はマフィナさんに誘われて夕食を食べに行った。人が多くてうるさいのでギルド内ではなく外の食事店だ。


「ここの料理美味しいんですよ!宇佐美様はもう舌が慣れちゃったかもしれませんけど。」


「う~ん、確かにお城での食事も美味しいけどここもいいですね。大勢の人向けに作ってあるっていう感じがして。」


「ですよね!気に入ってくれたのなら良かったです。」


「はい、でもなんだか悪い気がしますね、こんなに色々やってもらっちゃうと。」


俺は何の魅力もないただの異世界人なのに。

ポテンシャルをかってるのかな、マフィナさんは打算的なのかもしれない


「いえいえ、それがメイドの勤めです。何も気にしなくていいんですよ?」


そうは言うけどなぁ~


「うーん、何か俺にお礼できることはありません?」


「そんな滅相もありません!!ご主人様を幸せにすることが私達メイドの使命ですから。」


メイドってそんな使命があったのか、知らなかった。


「ん~じゃあ、ご褒美っていう名目ならどうです?今の俺には無理なことでもいいんで言うだけでも言ってみてください~」


「本当に気を使わなくて良いのですけれど……、それでは一つ、お願いを聞いて貰っていいですか?」


「なんですか?」


「実は私、まだメイドの経験が浅いんです。なので宇佐美様にこれからご迷惑をかけることがあるかもしれません。

あと……宇佐美様が思っているほど私は良い人ではありません。あくまでメイドだから宇佐美様に優しくしているって点もあるし、人に言えない秘密だってたくさん持ってます。


それでも、私をどうか、嫌わないでいてくれませんか?こんなこと仕える人に言うのは間違ってると思いますけど……。」



マフィナさん……意外に繊細なんだな。

そんなことを思っていたなんて知らなかった。てっきりなんでもこなす完璧超人だと思っていた。

すごく親近感が湧いた気がする。


「マフィナさんがとっても優しい人であることはよく知ってます。それが本心からの感情なら嫌いになんてなりませんよ、なんなら約束しましょう。」


「ありがとうございます。約束ですからね!指切りげんまんしましょう!」


そう言うとマフィナさんは小指を立てて俺の前にだす。こんなお茶目な人だったっけか?






「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます、指切った!」」






そう言ったマフィナさんはすごく嬉しそうで、眩しいくらいに笑顔だった。

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