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数学オタクは魔法に憧れて  作者: 哲
1章 数学を愛する少年
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第7話 今の自分にできること

早速マフィナさんに報告してみた。


「マフィナさん、なんとなく流れが分かるようになりましたよ?」


「ええっ、早くないですか!?

地元で天才と謳われた私でさえ一週間かかったのに……。」


なぜかマフィナさんが落ち込んでいる。


だいぶ終わるの早かったみたいだけど異世界補正とかそんなんだと思う。

少なくともこの世界の人と異世界人じゃ物事の感覚が違うだろうし、神様が都合よくしたのかもしれない。



ん? なんで俺は神様が存在する前提で話をしているんだろうか。


この世界があまりにも元の世界と似ているからかな、この世界の製作者がいるんじゃないかとどこかで思っているのだろう。


「宇佐美様は絶対魔法の才能持ってますよ!

それでは次のステップにいきますか?」


「はい、一秒でも早く覚えたいので。」


今日中にでも覚えてやろうという気概なのだ。これくらいで疲れるはずもない。


「流石です。

次は魔力のコントロールです。魔法を発動させるためには詠唱が必要、と昨日言いましたよね。この詠唱を行うために、魔力を流すべき場所に流さなければいけません。

その場所、というのを見つけなければいかないのですが、そう簡単に見つかるものではありません。

こればかりは慣れなければいけないので、習慣的に自身の魔力を感じて、自身の魔力でできることを探してください。

今日中に終わることではないので、決して無理しないで下さいね?

宇佐美様はしたいことをするためには自分の体を省みない所があるような気がします。」


全くもってその通りだ。中学のことは魔法の理論を考えるために3日徹夜したっけか。

今となっては懐かしい思い出だ。

思い返してみても有意義な時間だったな。


「わかりました。ゆっくり考えてみます。」


そう言って俺はベットに転がった。そろそろ頭の整理をしなくちゃパンクしそうだ。





「ふぅ……、もう少し私に歩みよってくれてもいいと思うのですが、なかなか難しいお方です。

こちらからアプローチが必要みたいですね。」





~~~~~~~~~~~~




さて、今の状況について整理しよう。


まだこの世界に来てから二日経っておらず、誰がこの世界に来ているのかも把握していないし、この世界の仕組みや情勢も分からない、ほとんど何も知らない状態だ。


図書館とかあるのなら是非篭って色々と調べたいな、思わぬ収穫があるに違いない。



魔法に関してもやってみたいことがあるし、やりたいことはたくさんあるが、その前に一つ重要な気がかりがある。


実は俺には同じ高校に通う妹がいるのだ。

城の案内をしてもらっている間にずっと探していたのだが何度見てもいなかった。

将軍さんの話からすると大体の学生はこの世界に転移されていてそうだし、おそらく別の場所で俺達と同じように暮らしていると思うのだが、やはり心配だ。


妹は病人なのだ。

突然具合が悪くなり倒れてしまうような病気で、毎日親に送り迎えをして貰って学校に行っていた。

学校で知っている人も多いし、きっとここへ転移した後も誰かに助けてもらっているのだとは思うが、兄としてまずは会いに行きたい。


こんな人付き合いが苦手で偏屈な兄なのだ。

せめて陰からでも見守りたい。


なので、一先ずは妹を見つけることが最優先だ。どうにかしてここ以外に異世界人を囲っている所と連絡を取りたいところだな。


俺の数少ない友達もどこかにいるだろうが、まあ心配はいらないだろう。

俺と友達になるようなやつが柔な訳がない、元気でやっていると思う。

一応顔くらいは見たいが。


話によると明後日と明々後日は休みらしく、従者付きなら外出もできるらしい。

さらにある程度のお金は支給されるらしいので、この機会にやりたいことをやっておこうと思う。


やるべきことはこのくらいか?

妹の安否に魔法の習得に図書館の捜索、あと友達の動向、余裕があればマフィナさんに何かお礼をしたいがまだ余裕がないな、申し訳ない。



後は……そうそう、この世界について疑問に思うことがいくつかある。


一つ目、なぜ俺達異世界人とこの世界の人達で言葉や文字が通じるのか。

しかも日本語だ。地球の公用語である英語ですらない。これは偶然とは言い難いだろう。

つまり意図的に何者かが日本に焦点を絞り、俺達をこの世界へ転移させたことになる。

それでもこの世界で日本語が使われている理由にはならないな。地球とこの世界には強い繋がりがあるんだろう。


二つ目、文化の発展が地球と似すぎている。

魔法や霊術なんてものがあるし、完全ではないにしても流石におかしい。

千年前にも同じく異世界人がやってきたらしく、このときに地球での知識がこの世界に広まった可能性はある。

だがこの世界の人が話している日本語は千年前のものではない。そもそも適性検査に出てきた円グラフなんて千年前にないはずだろ。

よって千年前にやってきたとかいう異世界人は、俺達の世界での千年前の人ではない。

時間がずれているのか、それとも時間の進み方が違うのかもしれない。


三つ目、なぜ城の中へ転移されたのか。

聞いた話によると、今俺のいる青城の他にも、赤城、緑城、黄城があるらしく、それぞれ100人程度の異世界人が転移されたらしい。何か異世界人がその城に転移されるような仕組みがあるはずだ。

例えばどこかの神様が場所を指定したとかならいいのだが、もしかすると神様以外の何者かによって意図的に転移されたのかもしれない。


城にいる全員が俺達に嘘を付いている可能性もあるのだ。元々災厄とやらのために駒として国に召喚された、とかな。


あまりこの世界を信用しすぎるのもよくないかもな。


ぱっと思い付くのはこれくらいか。俺の常識が通用しない世界なのだ、慎重に動くことにしよう。


マフィナさんはすごく優しいし正直信用したいのだが、警戒心を解くのはもう少し後だ。


今は自分のできることを増やしていくことにする。

とりあえずマフィナさんに教えてもらった通り、魔力のコントロールを日常的にやっておこう。


そして体内の魔力を動かして試していくうちに、次第に俺の目蓋は閉じていった。

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