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数学オタクは魔法に憧れて  作者: 哲
1章 数学を愛する少年
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第4話 適性が欲しい、カッコセツジツ

再びメイドさんに扉を開けてもらい、大広間へと入室した。ギリギリまで部屋で魔法のことを考えていたので、既にほとんどの人が待っていた。


みんなの顔をみると、初日の不安そうな顔とは打って変わってどこか楽しそうな雰囲気がある。同じ境遇の仲間と喋ることが不安をなくしているんだろう。

俺もどこかに話に行こうと人を見渡すが、なかなか喋れる人が見つからない。


あ、柊さんいるじゃん。でも他の女子と話しているな……割って入るのはきつい。

佐倉も他のクラスのやつと話してるし、ていうかそんな話す仲でもないな。


こういうときにぼっちは辛い。こういうときは自分の世界に入って時間が経つのを待つに限る。幸いにも魔法演算のことがあるし、何も問題はない。

そう、何も……。



ちなみに聞こえてくる会話は、これ夢じゃないよな?みたいな信じきれてない者や、専属のメイドさん可愛い!とか喜んでるやつもいれば、俺の従者の人メイドじゃなくて執事なんだけど!!ふざけんな!!みたいに嘆いてるやつもいる。俺は勝ち組だ、やったね。


そんなことを考えていると、どうみても転移者でない人が大広間に入る。見たところ大きいコートのようなものを着ており、杖を持っているので魔術師って感じの若い男性だ。


「みなさん、お集まりになってありがとうございます。ブルラナ城で医療担当をしているフィリップと申します。今日はみなさんのこの世界での適性を調べさせて頂きます。これから適性を元にそれぞれのクラスに分かれて学ぶことがあるので、みなさん自分の得意なことをしっかりと見極めて下さいね。」


見るからに優しそうな人だ。口調もそうだが、声も透き通るようで、それでいてはっきりと伝えるような工夫をしている感じがする。

というか俺がいる場所結構遠いのにすごくはっきり聞こえるな、百数人全員に伝わるように何か魔法を使っているのかもしれない。


「適性検査にはこちらの魔道具を使います。この箱のような魔道具には一つの面に穴が空いていて、この穴に手を入れると体内に微量に流れる循環魔力、循環霊力を検知します。検知によって得られた情報は私たちの管理情報となり、使用した本人にだけ結果を報告します。それとこれはあくまで適性で魔力、霊力の強さを示すものではないことを注意してください。

あ、みなさんは魔力と霊力って言葉を初めて聞くんですよね。魔力というのは文字通り魔法を使うための素となる力で、9つの属性が存在します。魔法は使うことが難しいので、頭脳に自信がある人は得意かもしれません。

対して霊力は霊術を使うための素となる力で、属性は魔法と同じく9属性ですが、その流派は多岐に渡ります。霊術は使用するにあたって自らの心の強さや勘、運動能力が必要なので、武道派の人が得意かもしれません。しかし霊力は大まかにしか計れないブレの大きい力なので、これから計測した霊力適性が低くても努力次第で強くなれると思います。

それと計測結果の見方ですね、一度僕が計ってみます。」


フィリップさんは自分の手を箱の中に入れる。数秒待つと、フィリップさんは手を出し、代わりに杖を構えた。


「<viewing>」


そうフィリップさんが言うと、大広間の壁際に大きな画面が現れる。

これ魔法だよな?詠唱してる時間がほとんどなかった気がするんですけど。

見えた画面には霊力と魔力の適性の高さをパーセント表示にしたものと、属性ごとの適性を円グラフで示されたものがあった。

これ現代じゃん。


フィリップさんの適性をみたところ、霊力が26%、魔力が87%だった。どうみても魔力の方が得意だなこの人。

属性は火、水、地、風、雷、氷、光、闇、癒の9種類のようで、フィリップさんは癒属性が65%と一番高い。癒属性は回復系の属性なのだろう。医療担当って言ってたし。


「今見えるのは測定結果を魔法で映したものです。みなさんにはこれを紙に写したものを差し上げます。詳しい話は後日行うので、今は自分の得意なことを知る参考にしてください。

それでは早速始めましょうか、名前を呼ばれたら来てください。複数に分かれるのでよく聞いてくださいね。」


そして適性検査が始まった。

といっても他人の情報は分からないし、自分の番をひたすら待つだけだ。


でもちょっと気になるので、自分のクラスの人が呼ばれていたしちょっと話してみるか。


「東さん、結果はどうだったの?」


「あ、宇佐美くん!えっとね、なんか霊力ってのが得意だったみたいだよ!」


東さんは本名が東 明音といって、元の世界ではバド部に入っていた活発系女子だ。勉学は当然ながらバドミントンで全国大会の上位に入るほどの実力を持つ恐ろしい人でもある。

ちなみに東さんとは数学のプリントを見せる程度の関係である。日常的に話すことはまーまーあるけど東さんは誰とでも話すからな、特別な関係ではない。


東さんは自分の結果が映された紙を手渡してくれた。内容を見ると、


霊力 92% 魔力 38%

火 23% 水 6% 地 4% 風 34%

氷 0% 雷 13% 光 0% 闇 14% 癒 0%


と書いてある。

超がつくほど霊力適性が高いな、運動能力などと関わりがあるのは事実なんだろう。属性もバドミントンらしく、風属性に最も適性がある。

この人これからめっちゃ強くなるんやろうなぁ……、羨ましい。


「すごいじゃん、霊力が高いってことは霊術ってのを使うってことか。」


「うん!私ね、昔はゲームがすっごく大好きだったから今すごく楽しみなんだ!強くなれるといいな~。」


「俺も楽しみ!東さんはもうこの世界に慣れちゃったの?」


「そうでもないよ、夢じゃないみたいだし、友達とか家族とかはすごく心配だけど、でも一晩考えて決めたんだ、この世界を楽しく生きて絶対帰るって。だから悩んでなんてられないよ!」


ちゃんと考えたんだな東さん。そういうスパッと決めれる所はすごく尊敬できる。


「そっか、強いな東さん。」


「そんなことないよ、宇佐美くんだってついも通りっていうか、むしろちょっとテンション高いんじゃない?」


「魔法なんてものがありゃテンションあがるって。」


「宇佐美くん魔法とか好きそうだもんね~、中学生の男の子って感じ?」


「俺は高校生だぞー。」


そういうことはスパッと言わなくていいんだよ。



そんなこんなで東さんと別れてしばらく経つと、俺の名前が呼ばれた。


東さんの霊力適性が92%か、それなら俺の魔力適性は95%くらいだな、間違いない。俺の魔法への情熱とこの頭脳は完全に魔力寄りだ。ここを魔法発動という目標の第一歩としようじゃないか。


俺は意気揚々と適性検査に向かった。見てくれる人はさっき説明してくれたフィリップさんだ。

言われた通りに魔道具に手を入れ、魔力適性出てこい!!と念じる。心なしか手に魔力が宿る感じがする、いける!いけるぞ!!


「<viewing>」


渡された紙を見る。


霊力 9% 魔力 78%

火 7% 水 15% 地 9% 風 5%

氷 28% 雷 4% 光 11% 闇 9% 癒 12%


あっるぇ~?なんか微妙じゃね?

確かに魔力適性高いけどさ、思ったより高くないじゃん。てか霊力適性低すぎだろ!

属性適性も中途半端だし……。


「……」


「宇佐美くん、だったね、残念そうだけどこの魔力適性の78%は十分高い数字だよ。属性は全てに適性があるみたいだし、オールラウンドな魔法使いってところだね。」


「はぁ……。」


「そんなため息つかないで!?もし適性がすごく悪くてもユニークスキルってものがあってね。誰もが潜在的に持ってる特殊能力なんだけど、異世界人はこれが強力な人が多いんだ。君は向上心があるようだし、きっとすぐに強力なユニークスキルを覚えられると思うよ!」


ユニークスキル、そんなものがあるのか。物語の主人公だったらここで強力な能力が手に入ったりするんだろうけど、そんな都合いい訳ないもんな……。


出てしまったことは仕方ない、俺の強さは演算能力だからな、ここをひたすら伸ばしていこう。


魔法の才能なんて知らんわ、ちくしょーーー!!!!

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