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数学オタクは魔法に憧れて  作者: 哲
1章 数学を愛する少年
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第1話 メイドさんが俺を冥土に送ろうとする。

目が覚めた。知らない天井だな。

妙に柔らかい、というか机で寝たはずなのに仰向けだ。


何か妙だ。起き上がって見渡してみる。

豪華なベッド、高級そうな家具に、綺麗な装飾、そして、部屋というには広い空間…。


「え?ここ高級ホテル?」


しまった、つい声に出してしまった。

いやここどこだよ!!!!学校で眠ったはずだし……保健室なのか?いや豪華すぎるだろ!!!なんだ、何かのドッキリなのか?ドッキリをされるほどリア充にも愛されキャラにもなった記憶がないんだけどひょっとして嫌がらせなのか?適当なやつ見繕って反応を見ているのか?ならカメラどこだ!絶対さがしてやるわコノヤロウ!!


この間2秒、自身でも希にみるほど頭が回転していた。だが回転していたのは思考だけ、目は全く仕事をしてくれなかったらしい。


「気がつきました?」


「うおおおぅ!?!?誰!?」


めっっっちゃびっくりした……。気づいたら目の前に人が立っていた。その女性は俺を心配そうに見ている。何よりこの人メイド服だ、なぜメイド服なんだ。やっぱりここは高級ホテルなのか?それともまさかアレな店なのか?こりゃ絶対どっかにカメラあるな、全力で探そう。


「私はここでメイドをさせてもらっています。マフィナと申します。私からも質問をよろしいですか?」


「あ、はいなんでひょう?」


マフィナって誰だよ、外人かよ、それとも源氏名的なやつ?アレな店じゃねぇか!!動転しすぎて噛んじまったわ。


「あなたはなぜ、どうやってこの王城に入り込んだのですか?答えによっては相応の処分をさせていただきます。」


そういうと、マフィナさんとやらは太もものあたりに取り付けられた明らかに凶器であろうナイフに手を当てた。あ、これアニメとかゲームとかでよくあるメイドさんだ。


ってそんなこと考えてる場合じゃないなこれ。なんか殺気を感じるんだけど、これドッキリなんだよね!?


ナイフをちらつかさせてきたお陰で思考が冴えてきた。とりあえず質問に答えなければ…、といってもこっちが訳わからないんだが。


「すみません、ここがどこかさえわからないんです、何もしないので殺さないでください。」


俺は体を極力動かさないように完全服従の意思を示した。まだ死にたくない。

するとメイドさんはナイフから手を放し、ほっとしたように息をついた。


「よかった。やはりみなさんは別の世界から来た勇者候補様達なのですね。今は動転していると思いますがゆっくりしてください。今お茶をお持ちします。」


「うん、訳がわからないよ。」


勇者とかどこのRPGだよ。


~~~~~~~~~~



目の前には紅茶が注がれた小さなカップが置かれている。さっきメイドさんが淹れてくれたもので、そのへんの店では絶対にないような高級感がある。そんな紅茶をいつものように淹れるこのメイドさんもただもんじゃない。


俺はその小さなカップをゆっくり手に取り少しだけ飲んだ。紅茶を飲んだことはあまりないけれど、おいしいことだけはわかる。


「落ち着かれましたか?」


「多少は落ち着きました。しかしこの状況は全く理解できないのですが、ここはどこなんですか?」


「ここは王城、といってもその支部のようなもので、正確には青の城という意味でブルラナ城と読んでいます。あなたの名前を聞かせて貰ってもよろしいですか?」


うっかりしていた、名乗られたのに名乗っていなかったとは。まだ落ち着いていないらしい。


「すみません、名乗ることを忘れていました。私は宇佐美 奏、18才の高校三年生です。」


「なるほど、それでは宇佐美様とお呼びしますね。まず、はっきりさせておかないといけないのですが、ここはあなたのいた世界ではありません。全く別の世界です。」








おいおい


そんなこと言われて信じるやつがどこにいるんだよ。

とか言えないので冷静に対応する。


5秒ほど考えて、俺はようやく口に出す。


「確かに見慣れないものばかりですが、ここが私のいた世界ではないという証拠はありますか?」


「ええ、あなたの服、見たところとても繊細で綺麗な生地で作られているのに魔法の気配は全く感じられません。きっとあなたの世界には魔法、という概念がないのでしょう?」


「そうですが、この世界に魔法があるとでも?」


「もちろんです、今からお見せしましょう。」


自信満々のようだが残念だったな、俺は昔からマジックの仕掛けを暴くのは得意だ。ちょっと可哀想な気はするが、ドッキリはこのへんにしてもらおう。



メイドさんは目をつぶり何かに集中している。

ん?なんかメイドさんの周辺に光の粒が見えているような…。いやいやまさか、なにかのエフェクトがかかっているんだろう。最近の科学はすごいからな。


そしてメイドさんが目をつぶって十数秒後のことである。


「<water ball>」


そう唱えると、メイドさんの手の中に水の球体が現れた。


「触って確かめてください。」


「はい。」


大きさは半径10cmくらいだろうか、俺は水の球体にそっと触れてみる。触った瞬間水面が波紋を広げたものの、球を一周してぶつかり合いすぐに平坦になる。

手をかざすようにゆっくり上からぶつけてみるものの、手はそのまま通過して水面から飛び出した。手は濡れているが、水の球体はその形を維持し続けたままだ。


「…まじかよ。」


「まじなんですよ?信じてくれました?」


「う~む、信じる…しかないんでしょうね。」


…だめだ、俺の知識ではこれを説明できない。水の球体が浮くような状態は作れるが、ここまで形状を記憶することは不可能だし水の質量が多すぎる。別の世界なんて言葉を信じるしかないのか…?


まあいいや、今は信じてみようじゃないか。これでドッキリだったら俺の知識不足だ、完全に負けを受け入れよう。


「それはなりよりです。それと重要なことを言わなくてはいけないのですが、あなたはなぜこの世界にいるのかわかっていないのですよね?」


「はい、全くわかりません。」



そうだ、ここが異世界だとして俺はなんのために来たんだ、勇者とかいっていたが魔王を討伐してください~とでも言われるのか?めちゃくちゃ迷惑なんだが、帰れるのだろうか。


「実は私たちも何故あなたたちが転移してきたのか全くわからないのです。

知らないと思いますがこのブルラナ城の廊下や広間で倒れていたところを衛兵が発見したそうです。最初は侵入者だと疑いましたが、服が見慣れないこと、魔力と霊力がほとんど感じられないことからひょっとすると別の世界の人間ではないか、という意見が出たので失礼ながら試させていただきました。どうやら正解だったみたいですね。」


向こうも理由は分からないのか…。それは困ったな、帰れる可能性が格段に減ったぞ。

そして突っ込みどころはいくつもあるのだがそれは置いといて、最も重要なことを質問する。


「あなたたち…って一体何人倒れていたんですか!?」


「大体100人くらいですね。みなさん同じ服を着ていたみたいなので、知っている方達だと思いますよ?」


学校規模で転移されたのか…とはいってもうちの学校は全校生徒415人だ、三年生が転移されたのか?だがそんな正確に三年生だけを転移なんて考え辛いな………………残りの300人も他の場所に転移されたのかもしれない。それがこの世界かは知らないが。


後で調べてわかったのだが、ここブルラナ城のような王城と分かれた城は他に3つあるらしく、それぞれグリナーレ城、レドローザ城、イエムト城というらしい。そしてそれぞれの城で100人程度の異世界人が同じように倒れていたそうだ。全校生徒が転移したってことだな。


「集団で転移されたってことですか…。私たちはこれからどうなるのでしょう。」


「それはわかりかねますが…悪い待遇ではないと思います。一人一人転移された方に私のようなメイドが付くみたいですし、しばらくはここで様子をみるのではないでしょうか。」


「なるほど、ということは私に付くメイドさんはあなた、なんですね。」


「はい!改めてマフィナとも申します。気軽にマフィナと呼んでくださっても結構ですよ?」


「はは、考えておきます。」


「固いですね~、とっても思慮深い方みたいですし。専属のメイドが付いたのですからもっと嬉しがってもいいと思いますよ?」


「ウレシイデスマフィナサン」


「ありがとうございます、宇佐美様。」


この人にコミュ力で勝てる気がしないな。

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