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ティーガも行ってしまったし、あまりヒロインに関わりたくないので、ヒロインが逃げていってしまったティーガの後ろ姿を見ている間にクルリっと向きを変える。

帰ろうと足を一歩踏み出したところに、


「待ちなさいよ」


ヒロインから待ったの声がかかる。

聞こえなかったふりをして、もう一歩足を踏み出す。


「待ちなさいてっば!悪役令嬢!!」


「悪役令嬢ではありません」


「はぁ」とため息をつきながら、ゆっくりと振り替える。そこには、目をつり上げたおおよそヒロインには似合わない形相のアンナがいた。


「貴女の方が悪役のような表情をしてましてよ」


「貴女に言われたくないわ」


あまりなヒロインの態度についお小言を言ってしまった。だって、貴族令嬢としての言葉遣いもマナーもなっていないんですもの。

せめて、他人の前くらいはちゃんとにして欲しいと思う。特に、王太子妃を狙っているのならば、人前で猫をかぶれるくらいの令嬢になって欲しいものだわ。

深いため息が思わずこぼれ出てしまう。


「それより、なんで貴女はティーガになつかれているのよ!さては、餌で釣ったの!?」


ゲームの中ではミニゲームで猫に餌をやるミニゲームがある。これがまた難しい。猫の表情をみてどの餌を欲しがっているか汲み取らなければならないのだ。

だが、ティーガとはこの世界に転生してから、はじめて会った。だから、なつかれている理由はわからない。でも、猫は人を見るときいたことがある。


「ティーガ様とは初めてお会いしました。猫という生き物は、不思議な生き物ですわ。人の考えていることや、言っていることが分かるのかもしれませんね。アレキサンドライト様に近づきたいという思いではなく、ティーガ様と仲良くなりたいと思いながら接していれば、なついてくれるかもしれませんよ?」


ティーガ様の凛々しいお顔を思い出して、にっこりと微笑む。大好きな猫の顔を思い浮かべないとアンナの前じゃ笑えない。


「貴女は猫が嫌いなんじゃなかったの?」


ゲームの中ではね。


「あら、私が猫が嫌いというのはどこからの情報かしら?残念ながら私は猫が大好きよ」


「ダメよ!それじゃ!!貴女は猫が嫌いじゃなきゃいけないのよ!!」


「どうしてかしら?」


「そんなの決まってるじゃない!私がアレク様に好かれるためには、貴女が猫を嫌いで、猫に悪口を言ってもらわなきゃならないのよ!」


あくまでここはゲームの中だと思っているのね。ゲームとは違うということを認識させなければならないのかしら?

このままアンナに好き勝手に動かれると、あることないこと言って私を陥れてくるかもしれないわね。

面倒だわ。


「貴女が何を言っているのか私には理解できません。アレキサンドライト様に好かれたいのでしたら、ご自分で努力をしてアレキサンドライト様に相応しい女性におなりなさい。私を当てにするのは間違っています」


「そんなことないわ!私、努力なんて嫌いよ。だから貴女がシナリオ通りにすればいいのよ!なんでシナリオ通りじゃないのよ」


「シナリオですか?シナリオと言われても・・・」


会話が噛み合わない。というか、こんなにストレートに悪役令嬢である私に言ってもいいと思っているのかしら。

アンナ様の相手は疲れる。


「私、用事がありますので失礼いたします」


ここはさっさと逃げるが勝ちよ。


「待ちなさいよっ!」


でも、私は逃げ切ることができなかった。

だって、淑女は走れないもの。

早歩きくらいじゃ、すぐにアンナに追い付かれてしまった。


「キャッ」


アンナに思いっきり腕を引っ張られてバランスを崩してしまう。嫌っ!地面が近い!


ギュッと目を瞑り、来る衝撃に身を備える。


だけれども、いつまでたっても衝撃は来なかった。代わりに暖かい何かに包まれている。


「えっ?」


「ちょっと!なんで!?」


私の驚いた声と、ヒロインの悲鳴が聞こえる。


「大丈夫?レコンティーニ嬢」


「・・・アレキサンドライト殿下」


私が地面にダイブしなかったのは、アレキサンドライト様に抱き締められていたからでした。


沢山のブクマありがとうございます。

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