お互いさま
話し合いの末、僕が先にお風呂に入ることになった。
結愛は、
「私の家なんだから客を先に入れるのがどおりよ」
の一点張りだった。
口論をしているうちに風邪を引くと思ったから、シャワーを浴びてすぐに出る事にする。
温かいシャワーを頭から被っていると、お風呂のドアが開いたような音がした。
いくらいたずら好きな結愛でもそこまではしないはずだから、結愛の家族の誰かかと思った。
シャワーを止め、音のした方を見た。
「ゆ、結愛――――!」
僕は近くにあったタオルを急いで腰に巻く。
湯気で最初は分からなかったが、結愛は水着姿だった。
慌てている僕には目もくれず、浴槽の中を覗いている。
「お湯張ってないじゃない。シャワーだけで済ませようとか思ってたの?」
「そうだよ。ってすぐに出て行ってもらっていいですか」
「いいじゃない。私たち恋人関係なんだし」
「お願いだから出て行って。僕が恥ずかしいから」
「大丈夫よ、気にしないし」
取っ組み合いになり、僕が後ろに足を滑らせてしまった。
目に何が乗っかって前が見えなかった。
目にかかったものを取ると、天井と……結愛の半裸……?
小さいながらも女性らしいふくらみのある胸。
真っ赤に染めている顔。
……ん?んん!
状況を全て把握した。
立ち上がってその場から逃げようとしても体が起き上がらない。
結愛が僕に乗っかっていた。
僕もいろいろとかなりやばい状態になってきていて、すぐにでも逃げ出したい。
よし、ビンタされる覚悟はできた。
「えっと……結愛さん?早く退けていただけるとありがたいんですが……」
突然、結愛自身の両頬を叩いた、
「……そうね」
結愛は立ち上がったと思うと、浴槽に座って蛇口をひねった。
「叩かれないんだ……」
ほっとして口に出てしまった。
「まぁね、私が悪いんだし。それに……お互いさまでしょ」
ふと、結愛は半裸のまま立ち上がり、上半身の水着を拾ってその場で身に着けた。
恥ずかしがってはいるが、女性らしい恥ずかしがり方かと言われればなんとも言えない。
お互いさま……か。
確かに僕が先に出る事も手だったかもしれない。
でも、結愛が先に入っていいと言ったんだから、やっぱり結愛が出ていくべきじゃないのだろうか。
考えたところで意味も無く、一種の神様がくれたご褒美だと思う事にした。
改めて、シャワーを浴びようと風呂イスに座ろうと目を向けると、風呂イスに見覚えのあるタオルが落ちていた。
そのまま、恐る恐る自分の下半身に目を向けた。
「お互いさまってそういう事かぁあああ」




