エピローグ
僕は今、レストランでバイトをしている。
一つひとつ動作が難しい。
お辞儀も店長に仕込まれた。
でもここのバイトはとても楽しい。ただ店長が厳しすぎる。
ブラックと言うわけでは無いが、ただ真面目と言うべきなのか、とりあえず厳しい。
でもそのおかげで、入社試験は内定をもらい今年の4月からは社会人になれる。
店長には感謝してもしきれないくらいに感謝している。
「三番注文お願いしまーす」
その声に僕は答える。
「注文行きます!」
後ろから、お願いします。と伝えられる。
注文を取りに行くと、つり目のサイドテールの女性が座っていた。可愛らしい中にクールさがあった。
白いワンピースに、ジーンズ生地のジャケットを羽織って麦わら帽子をかぶっている、春らしいファッションはほれぼれするほど似合っていた。
「注文お伺いします」
「チキンドリアをお願いします」
「チキンドリア一つですね。ご注文は以上でよろしかったでしょうか」
彼女は頷いた。
僕は厨房に伝えに行こうとした時、先ほどの女性に声を掛けられた。
「すいません。どこかでお会いしたことありますか?」
僕も初対面という感覚は無かったが、顔は初めて見るしこんなタイプの女性はすれ違うだけで覚える自信があった。
「申し訳ございません。恐らく初対面かと」
すると彼女は耳をほんのり紅色に染めて、
「ごめんなさい」
と謝った。
失礼します。と伝えて僕は厨房へ戻った。
チキンドリアが完成し、3番テーブルに運びに行く。
「お待たせいたしました。こちらチキンドリア……――」
水の入ったコップが僕の手にあたってしまい、彼女の服を濡らしてしまった。
「あ、も、申し訳ございません!」
彼女の方を見るとポケットから、白い生地に隅の方に赤色と白色のポピーの刺繍があるハンカチを取り出し、濡れた部分を拭いていた。
僕はそのハンカチに見覚えがあった。
「あの、タオルをいただいてもいいですか」
何かを思い出せそうな時、彼女の声が聞こえた。
改めて彼女の方を見ると、白いワンピースは濡れて水色の下着が透けていた。
これは本当に危ないと感じて、僕は彼女にバイトに向かう時に来ていた服を渡してトイレで着替えさせた。
「このたびは本当に申し訳ございませんでした。お詫びにこちらのチキンドリアは無料とさせていただきます。どうぞごゆっくり」
店長から感じる鋭い視線を真横から受けながら僕も頭を下げる。
「わざわざありがとうございます」
店長は厨房へ戻って行った。
僕も戻ろうとしたら、また彼女に止められた。
「このハンカチに見覚えありましたよね。何か知っていたり、思い出したら教えてください。知らないうちに持っていて……でもなんだか捨てられないものなんです」
彼女は紙に電話番号を書いて、僕のバイトの制服のポケットの中に入れた。
そして、僕たちはまた恋を始めた。
~終~




