真実を知る日
次の日、学校に着くと予想もしなかった出来事が起きていた。
「マジ何なのお前、浅木に話しかけるとか……。どんだけ偽善者ぶってんの」
教室に入ろうと、ドアに手を掛けた時に僕の名字が聞こえ思わず動きを止めた。
ドアに掛けていた手をおろし、耳を澄ませた。
「イメージ変わったわ。クズだったんだな」
女子だけでなく男子の声も聞こえていた。
一体誰に言っているのだろうか。
僕には全く分からなかった。
「あなたたちは人をいじめて楽しいの?」
誰かを罵倒している声を遮るように、一人の女子が声を荒げていた。
「だーかーらー。それが偽善者ぶってんだろっつってんだよ」
ドア越しでも威圧感が伝わってくる。
気になってしまい、窓の方から覗くことにした。
誰かがクラスの全員に囲まれていた。
今、教室に入ったら僕は何もされないだろうか。
殴られることも、呼び出されることもなく、僕だけ静かな空間に居られるだろうか。
だったらいい日になるかな……。
そんな自分の事しか考えずに教室のドアをくぐった。
数人はこっちに気づくが、ちらっと見て終わりだ。
内心ガッツポーズをしながら自分の席に座る。
と、言っても気になってしまう。
横目でちらっと見ると、たかっている人の隙間から見覚えのある顔が見えた。
何であの赤沢結愛が男女関係なくいじめられているんだ?
だって、赤沢は俺をはめようとしていたはずだ……――。
そこで俺は自分の犯したミスに気が付いた。
赤沢が俺をはめようとしていたか否かは、僕が勝手な想像で決めつけていたにすぎなかったんだ。
赤沢は、ただ僕が男子からの呼び出しに行かないように気遣ったんだ。
この考えも勝手な想像で本当は違うかもしれない。
でも、この光景も作戦の一つで俺が何か言わせて今まで以上にいじめる理由を作らせようとしているのかもしれない。
考えすぎかもしれないが、絶対に考えられなかった。
だって、今の赤沢の目は俺が初めていじめられたときと同じ目だから。
急に始まって、今ままで話していた奴らもどこかに行って、絶望を抱き、誰にもすがれなくなって、独りの恐怖に怯えて悲しい。
初めて絶対的な孤独を感じている目。
もう見たくないから自分を殺して慣れてきたのに、なんでこんなところで見なくちゃいけないんだよ――。
「お前ら何してんだよ!」
誰かがいじめられようがどうでもいい。
ただ、もうあの目を見たくないんだ。
「いじめてどうしたいんだよ!」
一人の女子生徒が僕の方に向かってきた。
「キモイお前に媚売ってるもっとキモイ虫がいたからさ、害虫と言っても殺しちゃいけないけど追い払わないとこっちに害が来るから、仕方ないよね~」
「何でそんな言い方……」
「いや、事実だから仕方ないよね。てかそもそもあの虫が追い払われてんのってお前のせいなんじゃないの?」
僕のせいだ。そんなことは分かっている。
赤沢がグルじゃなかったにしろ、僕へのいじめが悪化することに変わりはないみたいだ。
せめて、巻き込んでしまった事への罪滅ぼしになればいいな……。
「あぁ、僕のせいだ」
僕の言葉に赤沢と目が合った。
何かを言おうとしていたが、入る隙など与えず話を続けた。
「僕が彼女を誘った。はじめは断ってたけど最終的には嫌々付き合ってもらったんだ」
「うっわ。マジでお前キモ過ぎな」
どんな言葉でどれだけ罵倒されたって偽りの物語が、口からすらすらと流れる。
最終的にはクラスの全員がドン引きして、俺をいじめる事は無く、ただいない存在のように扱われた。
赤沢も同様のようだ。
熱が入ってしまい、ところどころ記憶が無い事が怖い。
ヒートアップしないように気を付けていたつもりだったが、駄目だったみたいだ。
学校が終わったら謝ろう。
今日の学校はずっと、このことで頭がいっぱいになっていた。




