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一月の手紙  作者: 紗厘
第3章 ~独り~
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災難がまた一つ

 僕たちの中に冷たくどす黒い何かが入ってきた。


「――なん……で……」


 結愛の目には涙がためられていた。

 いっそのこと、言ってしまった方が楽なんじゃないか。

 こうなったら伝えるしかなかった。


「僕は……―今月で――」


 僕の声は結愛の声に遮られた。


「そっか……希も結局他の男と同じなんだね」


「他の男って……」


「結局は遊び道具だったんでしょ、恋人が一度でも欲しかっただけなんでしょ。最後は捨てるつもりだったんでしょ!」


「俺はぞんな――!」


「もういいよ!」


 今までで一番大きな声に威圧されて黙ってしまった。


 一つの袋を地面に投げ捨てて結愛は走って行った。

 その袋からは白色のワンピースがはみ出していた。


 一人で一つの袋を抱えて病院へ戻った。


「あ、浅木くん。おかえりなさい。楽しかった?」


「楽しかったですよ」


「そっか、今日は遅いからササッと寝ちゃってね」


「分かりました」


 部屋に戻った僕は、帰り道に買った透明の袋に白色のワンピースにジーンズのジャケット、麦わら帽子を入れて、紐で帽子が型崩れしないように慎重に結んだ。


「日記風の手紙を書こう。結愛の家に泊まった一日だけでもノート一冊分かけそうだよ……」


     ∵


 ……最後の判断は間違ったのかもしれない。


 でもこれでいいか。

 僕が死んでも結愛(ゆあ)は悲しまなくて済むんだから。

 このままでいいのかもしれない。


 でも、結愛への誕生日プレゼントは渡したいから母さんにでも渡しておこう。


 でも最後は


     ∵


 書いている手紙が濡れた。


 また一つ、一つと増える。

 濡れるたびに字がにじみ消えていく。


「僕は悲しくなんかないぞ、結愛が悲しまなくて済むならこれでいいじゃないか」


 僕は何度も口に出して言った。何度も自分に言い聞かせて、また同じ手紙を書いては濡らして、かいては濡らしてを繰り返していた。


 ベッドの中に潜ると、着ている服からは結愛の匂いがする。


 今日は結愛の腕の中でも何もなく、独りでベッドの中夜中まで泣いていた。


 朝起きて、顔を洗うために動く。

 ついでに服も着替えて、歯も磨く。


窓のカーテンを開けると、急に力が入らなくなった。

 

 ……あれ?これやばいかも……。


浅木(あさぎ)くん。朝ごはん持ってきましたよ……、どうしたの?浅木くん?浅木くん!――先生を呼んでくるから待っていなさいね」


 僕の意識はそこで途切れた。

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