赤面彼女
朝起きると、結愛に抱き着かれたままだった。
起こすわけにもいかず、身動きが取れずにいた。
気持ちよさそうな寝顔を見ていると、昨日の晩の事が頭をよぎる。結愛が起きた時なんて声を掛けるべきなのだろうか。だらしなく泣いた結果眠って、合わせる顔が見つからない。
そんな僕の悩みを消すように声が聞こえる。
「希、おはよ」
眠たそうに笑っていた。
近くでまじまじと見ると恥ずかしい。
「顔赤いけど……熱、じゃなくて緊張してる?」
寝起きでも素速く見抜かれてより恥ずかしい。
なぜ、結愛は赤面させずにいられるのか。恥ずかしくないのか。とても不思議だった。
結愛は大きなあくびをしながら起き上がり、カーテンを開ける。
外はまだ暗い。
外に向かって大きく背伸びをしている。
「ご飯作ってくるからもうちょっとベッドで私を感じてていいよ」
と、小悪魔的な笑みを浮かべて外に出て行った。
「……私から言っときながら緊張する~。あと少しで顔を赤くするところだった……」
洗面台で歯を磨く自分の顔を見た時、耳はほんのりと赤く染まっていた。
「何であんな恥ずかしい事をサラッといえるんだよ」
僕はそんなことを言いながら、しっかりと掛布団を肩まで掛けていた。
それは寒いからであって、決して結愛を感じたいがためではない。
ま、そういう男っぽいというか、引っ張ってくれるというか、そういう所に惚れたんだけど……。
ベッドの中に潜ろうとした時にドアから、ガチャと音が鳴った。
「出来たよ……本当にベッドの中にいたんだ。」
「ちがッ――これはただ寒いから、――寒いからぁああ!」
「ぷ――」
結愛は顔を隠しながら笑っている。
誤解が解けたのか……?
「冗談よ、やっぱ面白いわ」
「最低か!」
一通りのやり取りを終えて、歯磨きをしに洗面台に向かう。
来客用で使い捨ての歯ブラシがあるなんて準備万端としか言いようがない。
ところでこんなものどこで売っているのだろうか……。
そんな疑問を浮かべながらリビングへと向かった。
「ゴメンね、今家に何もなくてクロワッサンをオーブントースターで焼いただけ、だけど、よかったら食べて」
「ありがとう」
椅子に座って結愛の方を見る。
「本当は腕を振るいたいんだけど、食材が無いからさ……どうかした?」
「いや、僕は幸せ者だなって」
「あっそ……」
「素っ気ないな~」
結愛は冷蔵庫の中をずっと見て動かなかった。
何を探しているのか気になって、椅子から立ち上がる。
結愛のところに行こうとした時、彼女が赤面している事に気が付いた。
案の定、僕が近づいている事に気づいていないらしく、気づかれる前に席に戻った。
久々に、本気で照れている結愛を見る事が出来た。それだけで満足だった。
少しして、結愛もこっちへ来た。
結愛が座ったところで、手を合わせて挨拶をする。
クロワッサンをオーブントースターで焼いただけと言っていたが、ハムとレタスが挟んでいてひと手間は加わっていた。
朝食には丁度良いボリュームだ。
すぐに食事を終わらせ、食器を片付ける。
「ねぇ、今から出かけない?」
「良いけど、どこに行くの」
どこかまでは考えていなかったらしく、少し悩んでいた。
「そうね、ショッピングデート行きましょ」
「そういえば、服どうしよう……」
「それはもう大丈夫よ、洗って乾燥機に入れておいたから、もう着られる状態じゃないかな」
結愛は、リビングを出て、僕の服を運んできた。
「ありがと、じゃ着替えてくる」
僕は結愛から服を受け取り、
洗面台で着替えを始める。
服を着る時に、結愛と似た匂いがした。
柔軟剤なのだろうけど、変な妄想をしてしまう。
自分の両頬を二度叩き、リビングへ戻った。
荷物をまとめて結愛の家を出た。




