しりとり
リビングに行くと、ダイニングテーブルに豚キムチ丼が2人分向き合うように並んでいた。
「簡単ものにしたけど、キムチ大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。わざわざありがと」
「で?泊まれそう?」
僕は首を縦に振った。
結愛は目を見開き、本当かどうかを僕の手を握りながら再度確認する。
いつもは引っ張ってくれるような性格なのに、たまに見せる子どもみたいなところが愛らしくてたまらない。
などと本人に良いでもしたら、怒られた後こんな表情はずっと見せてくれないだろう。
椅子に座り、大きな期待をもって豚キムチ丼を口へ運んだ。
辛味の中に酸味もあり、豚肉が程よい油でお米にあう。
「美味しい」
「良かった、じゃいただきます」
結愛は僕の反応を見て、ご飯を食べた。
ご飯を食べ終わって、食器を洗う手伝いをしていたらとなりで突然怒り出した。
「本当なんだったのかな?あのトラック」
「まだ気にしているの?」
「当たり前じゃん、水たまりと私たち絶対見えてたでしょ。それなのにスピード落とさないとか……」
僕は反応に困り苦笑いを浮かべる。
「……そのおかげで希が泊まってくれるんだけど…………」
結愛は何かを言ったような気がしたが、水道の音で聞こえなかった。
独り言と思って聞き返す事はしなかった。
皿洗いを終え、一つのゲームで盛り上がっていた。
それは、『しりとりカード』というカードゲームだ。
あ~を、が一文字ずつ書かれたカードがあり、手札を5枚持って場に置かれているカードから始まり、手持ちのどれか一枚を使って三文字の言葉をつくる。
濁点や半濁点は勝手に付けたり取ったりしてもいい。
それを繰り返す、早い者勝ちの三文字しりとりだ。
「さ、さ……ザラメ!」
結愛が、『め』のカードを出した。
そこから1分の隙も無く終わっていく。
「メダカ!カラス!ずんだ!太鼓!」
「早ッ」
「一つ出せればね、1枚出す前に手持ちのカードで3文字のしりとりを作っちゃうんだよ、そしたら一枚さえ出せれば勝ち確」
「ぐぐぐ……もう一回しよ?」
「何回でもいいよ」
いつの間にか一時間以上経っていた。
お互いに負けず嫌いなところがあるせいでなかなか終わらなかった。
そのせいでお互いが疲れ果てていた。
「希ちょっとしつこ過ぎ……マジで疲れた……」
「僕が勝ったら結愛がもう一回って言ったんじゃないか」
「希だってそうでしょ、バーカ」
「馬鹿とか言うなって、お互い様だよ」
「それって私も馬鹿ってこと?女性に向かって失礼きまわりないね」
「はいはい……」
「何その、めんどくさ……みたいな反応、そうですよ私は面倒くさいですよ」
「思ってなかったけど、今思った、、めんどくさい」
「痛い痛い!˝く˝る˝し˝いぃ」
突然、三角締めをされた。
首に結愛の生足がくっついて息が詰まる思いだった。というか、実際に息が詰まって死にかけだった。
結愛に殺されるなら本望だ。などと言うわけも無くそれから少しだけ結愛から物理的に距離を取った。
「希、機嫌直してよ~」
「別に怒ってるわけじゃないんだけど……ただ怖い」
本当に首がしまったからただ怖かった。
「もうしないから、……多分」
元をただせば僕が悪いし、その『多分』を信じて、恐怖心を抑えた。




