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敵は一人も生かしておかない


「実験?」


 薄目を開けて尋ねるので、僕は頷いた。


「そう、実験。使徒化してないとは思うけど、念のために」

「そうか……それもそうね」


 ふいに気になったようで、ルナもいそいそと起き上がった、

 カップの深そうな純白ブラジャーを晒したままなので指摘すると、さらに赤くなって、胸を手で隠す。


「き、着替えるから、少し待って……というか、少し向こう向いててくれる?」

「仰せのままに」


 言われた通りに僕はそっぽを向いたが……ちらちらと覗き見したところでは、替えのセーラー服はもちろん、下着まで両手で抱えて、風呂場の方へ消えた。


 全部取り替えるらしい……まあ、気持ちはわからないでもない。





 しばらく――というにはかなりの時間が過ぎて、ようやくルナは戻った。

 部屋の明かりを元の明度に戻した時に観察すると、既に吸血前のように落ち着いた表情だった。僕をいたわる余裕さえあったほどだ。


「噛んだところの傷、大丈夫?」

「平気、平気。ルナが舐めてくれたから、もう傷跡も消えた」

「そ、そう。……じゃあ、試してみますか」


 ソファーに座ったままの僕の隣に、ルナが腰掛けた。


「命令するから、逆らってみてね」

「了解」

「じゃあ、行くわよ」


 少し考え、ルナはどういうわけか深呼吸した。

 それから、思い切ったように告げた。


「わ、わたしの額にキスして!」


 僕は即座に立ち上がり、ルナの両肩に手を置いた。


「ええっ!?」


 言われた通りにキスするのかと、ルナが驚いた表情を見せる。

 僕は笑顔で、ルナに顔を寄せ、ばっちり唇にキスしてしばらく抱き締めた。


「ふあっ」


 喉の奥でルナが妙な声を上げ、一瞬だけ切れ長の目を見開く。

 しかし、構わずにキスしたまま動かずにいると、やがて自分も赤い顔で目を閉じて情感たっぷりに応じてくれた。


 ――多分、長くても一分そこそこだったろう。


 ようやく満足した僕は、そっと顔を引き離し、「うわー、僕のファーストキスがっ」などとおどけて見せる。まあ、照れ隠しの面もある、うん。

 もちろん、すかさず言い返されたけど。


「それは、こちらのセリフだけど!」




「……嫌だった?」


 僕が真剣な表情を作って訊くと、また拗ねたように頬を膨らませる。


「その質問はズルいと思うわ。あと、わたしの命令に対する反応も」

「ははは……いや、ただ反抗するだけじゃ、芸が無いかなぁと。あと、そろそろルナと、ちゃんとキスしたかったし」

「馬鹿ね、お望みなら、毎日してあげたのに」


 冷静さを取り戻したルナが、悪戯っぽく言ってくれた。


「まあ、そんな毎日が来るように、そろそろ顔合わせに行くかい?」

「いいわ」


 軽やかに立ち上がったルナが、僕の腕を取る。


「わたし達の臣下に会いに行きましょうか。もちろん、次は連中を見つけて決着を着けるのよね?」

「当然! ルナの敵は一人も生かしておかない」 


 我ながらきっぱりと言い切る。あと、あのインチキ神父がまた出たら、あいつも。


「それに、既に全員に探索を命じてるんだ。ひょっとしたら、もう連中のアジトを見つけてくれているかもしれないよ」


 僕は前向きな予想を語り、ルナと一緒に部屋を出た。


 決意表明の割に、外は穏やかな午後だったけど……これぞまさしく、嵐の前の静けさだったかもしれない。


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